「祈り〜阿修羅の娘」Prayer ~ Asura
こちらから⇒【Hidden Art】「祈り〜阿修羅の娘」の制作コンセプトがご覧いただけます。
構想とスケッチ
11月7日

本日、先日のクロッキー会で新作のアイディアのきっかけを作って下さったモデルさんに、うちのアトリエまでお越し頂き、スケッチと写真を撮らせて頂きました。

先日のクロッキー会では、モデルさんのご提案で
「千手観音のムービングポーズをやりたいと思います」って事で、こんなクロッキーを描きました。
描き終わっての帰り道、直ぐにこんなイメージで阿修羅に変身する隠し絵画を閃きまして、デッサン会場に引き返し、モデルさんにあらためて個人的にモデルを努めて欲しい旨を伝えました。

翌日のアイディアスケッチ1枚目
明るい状態では女性が祈ってるポーズで、

暗くすると阿修羅に変身します。
このアイディアスケッチを添付し、メールにて、この様な作品の取材をしたいので、近日中でモデルに来てもらえる日をお返事下さいと送信し、早速本日来て頂きました。

あらためてポーズを取ってもらったら、とても手の長い方でした。
(上に上げた手が画面からはみ出てしまいました 笑)
「多くの人々を救える様に」と仏像の多くは手が長く表現されてます。
デフォルメ(誇張表現)しなくてもこのモデルさんは仏画のモデルにピッタリでした。
また、アイディアスケッチ段階では、体幹を真っ直ぐに考えてましたが、軽くうねりを入れた方が、より女性の曲線美が強調されるので、色々な姿勢を試してもらい、このくらいの軽いうねりを入れた体幹とすることに決めました。
この段階は、まだスケッチ段階ですので、また数日掛けて写真も参考にしながら下図を描いていくつもりです。
11月8日
絵絹張り

谷中得応軒にて新作用の絵絹を購入してきました。
2丁樋重目の厚さ
1尺5寸巾(約45cm)を4尺(120cm)分切り売りして貰いました。
P10号の大きさのパネルがすっぽりはまる木枠2つに、それぞれ60cmの長さに切り分けます。

絵絹ロールの端には金糸が織られてるんですね。
今回初めて見ました。
もちろん金糸の内側から4尺測って切ってくれてますから長さは足りてます。

はみ出た分を切り、金糸が織り込まれた端は木枠への糊付け部分になります。

いつもの「煮糊アク止め安全糊」をバットに出し、お湯で塗りやすい薄さに少しだけ薄めます。

木枠に捨て糊を2度ほど塗ります。
この木枠は繰り返し何度か使用してますので、捨て糊の回数は2回ほどで大丈夫です。
初めて使う木枠の場合は、捨て糊は4、5回したほうが良いと思います。
ちなみにこちらの木枠の左側が角材2本なのは、元々外側の枠がF10号用だった物を、内側にもう一本角材を入れてP10号用に改造したからです。

捨て糊を木目に染み込ませ、乾かし固めてから、本張りの為の糊を塗ります。

張り終わって乾かしてるところです。
乾ききらないうちに剥がれないよう、四隅には画鋲を刺してます。
完全に乾いたら後日ドーサ(滲み止めの為の膠液)を引くと、主に絹の縦糸が縮まり、ぴーんと張ります。
なので、絹本を貼る時は、わざと横皺が出来る様に、
縦方向は緩く、横方向に引張りながら張るのがコツです。
11月10日
水張り

早朝、下図制作用に新鳥の子紙を切り分けました。


今日は、水張りを完了させてから出掛けました。
11月11日

先ず、絹本制作用の膠を作ります。
前作までは丸める予定のない和紙への着色でした。
膠鍋の中に半分くらいその膠が残ってました。
今回から丸める掛軸用に、柔軟性重視の膠にしたいと思いますので、固形状態でもグミの様に柔らかい
「軟靭膠素」を足してブレンドします。
軟靭膠素だけだと接着力が弱いので、通常使用の膠とブレンドするわけです。

湯煎にて、前回までの膠と軟靭膠素とを一緒に溶かしブレンドします。
軟靭膠素は前日から水に浸しておかなくても溶けやすい膠です。

ドーサを引く前に、絹本と木枠との糊付け部分の上にマスキングテープを貼って、ドーサ液の水分で糊が剥がれないように防ぎます。

ドーサを1回引いて乾いたところです。
ドーサを吸って乾くときに、縦糸が大きく縮み、皺が伸びぴーんと張られます。
下描き

昨日水張りしておいた新鳥の子紙に、隠し絵画の
阿修羅の方から下描きを始めました。
スケッチはもちろん、沢山撮らせて頂いた写真から合成し、破綻なくまとめるのが難しいです。
慌てずじっくり取り組みます。
11月12日

薄墨にて骨描きしていきます。

一通り骨描きをしたところ。

鉛筆の線をなぞるのではなく、修整しながら骨描きしていきます。
左右の顔は完璧な対称でなくても良いのですが、補助線を引いて、ほぼ対称に修整しました。

太ももに近過ぎたこちらの手の位置も少し離しました。
腕輪やネックレスは興福寺の阿修羅像を参考に描いてます。
興福寺の阿修羅の手は細く、腕輪のくい込みも観察出来ませんが、女体の柔らかさを感じさせるため、緊縛画制作で身につけた、少しくい込ませる表現にも利用させて頂きます。

隈取りをして、更に輪郭線も、濃い墨を一部重ね、強弱の抑揚をつけました。
蓄光顔料で裏彩色する為の下図ですので、粒子の粗い蓄光顔料でここまで繊細な描写が再現出来るかは分かりませんが、描き始めると下図という事を忘れ、本画並みのクオリティを求めてしまいますね(笑)。

本日の最終段階のアップです。
モデルさんの写真と、興福寺の阿修羅の顔、両方を参考にしながら顔の陰影をつけていきました。
目は遠くを見てるように黒目の位置を左右に離して描きました。
11月13日

コンパス、定規、ロットリングを使って、円光と画面の外枠を描きました。
毛筆やフリーハンドに囚われる必要は無いと、僕は考えてます。

木枠はP10号のパネルがハマる大きさですが、絹本を木枠に張って制作するときは、パネルより一回り小さいサイズで描くのが良いと思います。
ドーサを引く前は、わざと横皺が出来るように糊付けしてました。
ドーサを引いて乾くと、画面はぴーんと張ってフラットになりますが、ドーサを引いた瞬間は皺がありますので、ドーサが完全に乾くまでの短い時間に、木枠近くは皺の谷間に水溜りができて、ドーサ染みが残ります。
パネルの大きさ目一杯に描くと、背景にムラが出来て格好悪いと思います。
裏彩色をする場合も、木枠の側ギリギリまで綺麗に塗るのは難しくなりますし。
色移り防止

今回、下図から絹本への色移りを防ぐ新兵器として
ホームセンターにてPPクラフトフイルムなるものを購入してきました。

フイルムをP10号の大きさに切ります。

下図の表面にフイルムを被せ、マスキングテープで固定します。
下図の墨が溶けて絵絹に色移りしてしまうと隠し絵画が明るい状態でも薄っすら見えてしまうので、下図と絵絹の間に透明なフイルムを挟む事を思いついた訳でした。

木枠の裏側から下図を描いたパネルを
パイルダーオン😆

絵絹の表側から、下図が透けて見えます。
下図トレース

人体の輪郭線は、墨だと黒過ぎなので、先ずは棒絵具の代赭と洋紅とのブレンドで赤茶色を溶き、

試し描きしながら、少しずつ墨を混ぜて茶色を作ります。

顔だけトレースします。
ちなみに表の顔は瞼を閉じて祈ってる状態ですので、下瞼だけを墨で描きます。
また、阿修羅に変身してから眉間に僅かに皺が現れますが、祈ってる状態の時は眉にそれを出さないように描きました。

足も、着衣の下に覗いた足首から下だけを描きました。

阿修羅からトレースしたのはこれだけです。

次にモデルさんの着衣の写真を、顔と足の位置でピッタリ重なるように位置調整して裏からはめ込みます。

祈る腕と手を描きます。

祈る手の形は、阿修羅に変身した後も、薄っすらと透けて見えるはずです。
興福寺の阿修羅も一対の手は祈りのポーズを取ってますし、変身後も祈りのポーズが透けて見えるのは良い表現だと我ながら思ってます。
着衣のワンピースは、薄いHの鉛筆で写真から輪郭線をトレースし、

隠し絵の輪郭も確かめながら、洋藍にて描きました。祈りのポーズは直立で、阿修羅に変身すると軽くうねりが入りますので、腰の位置が少し移動します。
静から動への変化も楽しめると思います。

表の輪郭線は現段階では必要最低限に留めておきます。
あんまり複雑に描いてあると、裏彩色で描く隠し絵画のトレースをするとき邪魔になるからです。

裏彩色の時、左右反転させた阿修羅の絵からトレースしますので、下図を撮影し、実物大にプリントアウトします。

表側にフイルムを間に挟み、伏せる様に張り、裏側から見たところです。
今日のところは裏彩色の準備まで、裏彩色の開始は明日以降!
11月15日
裏彩色 骨描き

裏彩色の骨描きを胡粉にて描き始めました。
輪郭線を胡粉で描き、蓄光顔料の発光を塞ぐ事で、暗くした状態では、それが暗い輪郭線となるはずだという理屈です。
もちろん、明るい時は白い線ですので見えません😊
「時音〜Tokine 」制作の時に考案した応用技法です。

一塗目の骨描きを一通り描き終えた段階で、蓄光顔料のパッケージを絹本の下に挟み、

照明を消して確認してみました。
一塗り程度では、全然被覆効果が弱く、骨描きの線が見えません。
もっと胡粉を濃い目に溶くべきでした。
でも、ちょっとした陰影なら、胡粉を軽く塗り重ねる事で、微妙な陰影もつけられると確認出来ましたので、無駄ではありません。

胡粉の骨描きを2回重ね描きして、再び蓄光顔料パッケージを下に挟みます。

今度は左右の横顔が薄っすらと見えてきました。
明日以降は、もう少し濃い目に溶かした胡粉にて、骨描きの線を濃くしていこうと思います。
それにしても我ながら根気と手間が掛かる技法を考案したな〜と思います。
真似されても構わない為に実用新案登録をしておきましたが、これはやり方の理屈が分かっても、僕レベルの表現はそうそう真似出来ないと思います😆
11月18日

今日は裏彩色の胡粉による骨描き&隈取りをしました。
胡粉による骨描きを重ねた後、蓄光顔料パッケージを置いた上に重ね、照明を暗くしてまた確認してみます。

少しずつ胡粉による輪郭線が見えてきました。

もう、左右反転させた下図を透かさなくても、暗いテーブルの上に置けば、胡粉の線が見えるようになってきましたので、ここから先は既に描いた輪郭線に胡粉を重ね、濃くしていきます。

さらに輪郭線がハッキリしてきました。

だいぶ胡粉の線が濃く見えてきました。

まるで「紺紙金泥写経」のようで、骨描きは写経する時の様な心境でした。
※参考資料として鎌倉長谷寺さんのHPから「紺紙金泥写経」が何なのか分かるようにスクショを拝借させて頂きます。

骨描きの部分アップ

かなりハッキリしてきましたので、骨描きは完了。
次に隈取りに入ります。
裏彩色 隈取り

隈取り完了です。
ネガポジ反転の様になってます。
では、また蓄光顔料パッケージの上に被せて、隈取りの効果を確認していきます。







バッチリですね!
今まで和紙に蓄光顔料を重ね、滑らかに陰影の変化をつけるためには、塗って乾いては紙ヤスリで均す、という手順で描いてきてましたが、絹本に紙ヤスリはなるべく使いたくなかったので、胡粉の重ね具合に濃淡をつけておけば、裏から塗る蓄光顔料は、ただフラットにムラなく塗るだけでよくなるはずです。
「時音〜Tokine」制作で思いついた胡粉による陰影描写から更に応用進化した新技法です!

裏から白い紙を張ったパネルをはめ込んで見ると、胡粉の白い線や陰影はだいぶ目立ちません。
この先蓄光顔料による裏彩色をしても、たぶんかなり目立たなくなると思います。
我ながら僕って、アイディアも技術も天才的だと思います😆
海外に出品を重ね、有名になったら、僕の絵の価格は更に高騰すると思います。
買うなら今のうちですよ!
いや本当にそう思ってます。
11月21日
真言 梵字 マスキング

表の祈る女性の絵柄の時、構図が寂しすぎると思い、背景に阿修羅の真言(呪文)を梵字で書き加えるアイディアが閃きました。
神田古書街や、新刊の本屋、図書館、知り合いの住職さんにもお願いし、真言や梵字について資料を集め、にわか勉強してました。
ちなみに背景の梵字は、いくつかある阿修羅の真言から一番短い真言を選びました。
オン アスラ ガーラ ラヤン ソワカーと読みます。
下図の方に墨で真言を書き込みました。
文字の位置は、掌を隠さないように調整したつもりでしたが、
梵字の黒が強過ぎ、優雅に伸びる腕の動きを邪魔してしまうと思いました。

そこで、背景の真言は薄く彩色した表の絵で、白抜き文字として優しく浮かび上がる様にして、暗くして阿修羅の娘に変身したとき、伸びやかな腕の邪魔にならない様にすることにしました。
久しぶりに使うので、マスキング液の注意書きを確認したところ、「製造年月から2年以上経過すると、剥がしにくくなることがありますので、その場合は、目立たないところで試してからご使用下さい」と書かれてました。
製造年月は21年1月となってました。
「化仏 不動明王〜大日如来」制作で購入、使用してからもうすぐ2年になりますので、張った絵絹の構図の外(赤丸部分)にちょっとだけ塗り、

乾いてから、付属のゴムで擦ったら無事簡単に剥がれました。
本番のマスキング作業に移ろうと思います。

梵字の真言を全てマスキングしました。
表の絵の背景を塗る工程は、しばらく先になりますが、裏彩色をして絹本の裏側に蓄光顔料を塗ってしまったら、もはや絵絹を透かして裏にはめ込んだ下図が見えなくなってしまいますので、蓄光顔料による裏彩色の工程に入る前に、この工程を済ませておく必要がありました。
紙の場合、長期間マスキング液をつけておくと、剥がす時、紙の表面が一緒に剥がれてしまう事がありましたが、絹の場合は表面を痛めることなく、楽に剥がせる事は、「化仏」制作の前の実験で確認してるので大丈夫だと思います。

クローズアップ写真。
梵字の上でマスキング液が一部光って見えると思います。
背景を塗った後、上手く白抜き文字として浮かび上がる事を期待します。
11月22日
裏彩色 蓄光顔料

蓄光顔料の粒子は粗いです。
粒子の粗い絵具を含むと、新品の面相筆もこんなに膨らみます。

首輪、腕輪、指先と、筆先がすり減ってくる前に細部から塗っていきます。
ちなみに首輪と腕輪は、青や群青に光る蓄光顔料で塗り、身体は緑に光る蓄光顔料にて塗り分けます。

一通り塗り終わったところです。

一塗り目からムラなく塗るのは不可能です。

表側から見ると、筆ムラは目立ちませんが、

照明を消すとこの通り。

アップでみてもかなり濃淡にムラがあります。

少し塗厚を均そうと思い、電熱器で温めたお湯を筆に含ませ、濃いところを洗って、薄いところに均す事を試みました。
絹本の表面を痛める紙ヤスリは使えませんので、比較的最近考案した方法です。

まだ乾き切ってませんが、表側に引っくり返し、

照明を消して確認しましたが、まだまだムラがありますね。
いつものように、また数日掛けて塗り重ねて、発光具合を均し滑らかにしていこうと思います。
11月23日

2度目の裏彩色をして、暗くして表側から見たところです。

アトリエの照明を消して、蓄光顔料の光が弱いところに3度目の塗り重ねをしていきます。
真っ暗なアトリエで筆を重ねる、変態画家の本領発揮です。

3度目を塗り終えたところです。

表側に引っくり返して、照明を消して確認します。
3度も塗り重ねたので、蓄光顔料が思いの外明るく発光し、胡粉でつけた陰影部分まで明るくなってしまいました。

部分アップです。
まだムラがあるので、更に蓄光顔料を重ねると、胡粉による陰影が効かなくなりそうです。
表側からも胡粉による陰影をつける必要が出てくるかもしれません。
裏彩色 円光の彩色

円光の彩色に移ります。
まず、絹本の表面にPPクラフトフイルムを被せ、マスキングテープで留めます。

裏側にして、左右反転させた下図のコピーを、本画とピッタリ位置を合わせてマスキングテープで貼り付けます。

円光は、青く光る蓄光顔料を平筆にて塗ります。
輪郭線は引かず、透けて見える下図の円光の輪郭線に沿って平筆を動かしました。

円光、1塗り目

画面を回転させながら、2塗り目

3塗り目からは、下図を剥がし、既に白っぽく見え始めた蓄光顔料の上に塗り重ねていきます。

3塗り目が終わったところです。

暗くするとこんな感じです。

表側から見るとこんな感じです。

裏からを白い紙を張ったパネルをはめ込むと、白地に白い絵具なので、ほとんど見えないという訳です。
11月24日

緑に光る蓄光顔料にて、阿修羅の娘を彩色します。
塗厚が薄く見えるところだけを狙って塗り重ねましたので、乾くまで斑に見えます。

次に青く光る蓄光顔料で円光を彩色します。

表にひっくり返すとこんな感じです。

光り具合もだいぶ滑らかになってきました。

次に背景にも群青色に光る蓄光顔料を塗ろうと思います。
反転コピーした下図を透かして、外枠にマスキングテープを貼ります。
幅の狭いマスキングテープは、金色のしか無かったので、上部だけ色違いになってますが、描き終わったら剥がす道具に過ぎないので気にしないでください。

群青色に光る蓄光顔料を背景全面に塗ります。

まだ乾いてないので、ひっくり返して表側からの確認はまだしてません。
裏からダイレクトに見ても、群青色の蓄光顔料は暗くてスマホのカメラにはまだ写りません。
こちらも引き続き、数日掛けて塗り重ねていこうと思います。
11月25日

本日の仕事を始める前に暗室代わりのトイレにて光り具合を確認します。
また、この画像を参考にしながら、光り具合の弱いところを特に塗り重ねるようにしました。

青く光る蓄光顔料にて円光を塗ります。

群青色に光る蓄光顔料にて背景を塗ります。
ついでに阿修羅の娘本体で発光が弱かった部分にも塗り重ねて補強しました。

乾いたところで、裏から白い紙を張ったパネルをはめ、確認します。
背景も含め、画面全体の裏側全てに蓄光顔料を塗ったので、全体が白っぽくなり、明るい状態では狙い通り隠し絵の絵柄が見えにくくなりました。

阿修羅の娘と円光のムラはだいぶ無くなってきました。
背景の群青もスマホカメラでも僅かに写るようになりました。
肉眼だと背景ももっと分かりやすく光ってますし、緑と青の色の違いも写真より分かりやすいです。
11月26日

一瞬分かりにくいと思いますが画面を逆向きにしてます。
一番最初に群青色に光る蓄光顔料を塗った首輪や腕輪が、周りをどんどん塗り重ねたら相対的に薄塗りになってきましたので、先ずは面相筆で、アクセサリー部分を彩色し、周りと同じくらいの塗厚まで盛り上げます。

背景はフラットに塗りたいので平筆に替えて塗ります。
今日だけでも3回塗り重ねました。

背景もだいぶしっかり絵具が着きました。

暗室代わりのトイレで確認。
背景の群青もハッキリ分かるようになりました。
裏彩色 ヤスリ掛け

さて、再三絹本を痛めるので今回は紙ヤスリを使いたくないと言ってきましたが、面相筆で塗り重ねた身体は、凹凸が激しいので、途中からやっぱりヤスリ掛けしなくちゃと内心路線変更することに決めてました。
でも、今日の前半の仕事で、裏面全面に蓄光顔料の層が塗り重ねられ、もはや裏には絹本が剥き出しの部分はありません。

出っ張りすぎた凸部分を優しく擦り均すつもりでヤスリを掛けました。

掃除機のブラシヘッドで粉塵を吸い取ります。

ドーサを左から右(画面上から下)へ引きます。

乾いたら180°回転させて反対方向からも引きます。
1回目引いたとき、少しドーサがはじかれたので、2度目はハッカ油を数滴ドーサに混ぜて引きました。

ヤスリ掛けをし、ドーサが乾いても、まだ身体の凹凸はかなりあります。
横から電気スタンドの光を当て、裏面の凹凸を分かりやすくしながら、

平筆にて人体に滑らかに蓄光顔料が行き渡るように塗り重ねていきます。

また、胡粉による隈取りの効果が少し弱かったので、次第により明るく見せたい部分の塗り重ね回数を増やし、濃淡をつけていくことにしました。

本日の最終段階です。
人体の輝度が上がったので、相対的に暗い群青色の背景は、この写真ではほとんど判りませんが、肉眼だと背景の群青も光って見えます。
乾き待ち時間に、抜かりなくネットで蓄光顔料の追加注文も済ませました。
11月28日

本日はビフォー&アフターからお見せします。
こちらが本日の仕事をする前の状態です。

本日の仕事をし終えた段階の全体像。
これはヨーロッパの展覧会で初披露する予定の隠し絵画ですので、特に暗くして浮かび上がる絵は、洋画家のデッサン力に負けない立体表現が、日本画家にも可能であることをアピールし、驚かせてやろうと目論んでます。
表の絵は陰影を控えめにして日本画風に仕上げるつもりでいます(現段階では)。

本日の仕事前の部分写真。

本日の仕事を終えた段階の部分写真。
表側から胡粉にて骨描きや、隈取りをして、蓄光顔料の発光を抑え、輪郭線や陰影のメリハリをつけました。
正面向きの頭部だけ現段階で明るく見せてるのは、この先、表の絵の髪の毛を彩色したら暗くなるのを見越しての事です。

下図の上半身部分だけをプリントアウトして、これを参考にしながら、輪郭線や陰影を濃くしたいところに、胡粉を重ね塗りしていきました。
アトリエの明かりをつけて胡粉を重ねては、たまに照明を消して光り具合の確認をするのを何度も繰り返しながら少しずつ描き進めました。

陰影を濃くしたいところほど胡粉の白さが強いので、明るい状態で見ると明暗が逆転してます。

蓄光顔料も白っぽいので、全体的には白くまとまってパッと見には隠し絵の絵柄は目立ちませんが、明日以降、更に隠蔽工作に念を入れようと思ってます。
11月28日
隠蔽工作 水晶末

市販の水晶末は、一番粒子が細かい白(びゃく)を購入して使用してきましたが、粒子の細かさは胡粉に劣ると感じてました。
ある時、もしかして空摺りしたらもっときめ細かな微粒子になるのでは?と思い、乳鉢で空摺りしてから膠で練ってみたら、なんと胡粉の様に団子が出来ました!
この事実は、日本画経験者ほど驚かれるんじゃ無いでしょうか。少なくても僕は最初驚きました。
写真左端は参考までに胡粉の箱を並べて撮影しましたが、絵皿の上の団子は、間違いなく中央の水晶末を空摺りしてから練って出来たものです。

画面の外側にマスキングテープを貼ります。

水晶末を1回目塗ったところです。
胡粉は貝殻の粉ですので、微粒子ですが塗り重ねると不透明な層になります。
一方、水晶末は水晶の粉ですので、塗り重ねても透明です。つまり、水晶末を塗り重ねて隠蔽すれば、明るいところでは白く塗りつぶされてても、紫外線を通し、裏彩色の蓄光及び発光を妨げないという訳です。

1回目を塗って乾いたところです。

2回目を塗って乾いたところです。
連筆を動かす方向を変えて、薄く溶いたものを数回に分けて塗り重ねるのが、筆跡を感じさせない塗り方のコツです。

2回水晶末を被せたところで、一旦暗くして裏彩色の発光を確かめます。
2度塗ったくらいでは、発光に支障は見られません。

引き続き、3回目、そして4回目を塗り重ねたところです。

4回目が乾いたところで、裏から白い紙を張ったパネルをはめ込みます。
だいぶ隠蔽されてきました。

発光を確認したら、発光の強さは変わりませんが、描写がボケて見える様になってきました。
水晶末の層を通過する段階で、光が乱反射する様になってきたと思われます。
肌の陰影は柔らかさが出て、むしろ良い塩梅ですが、
横顔、乳輪、おへそ、陰毛などは、また不透明な胡粉にてもう一度シャープに見せようかなと思います。

水晶末の塗厚にムラがあるので、例えば向かって右側の横顔の鼻の下の影が、鼻血ブーみたいで気になります。

裏から白い紙を張ったパネルを外して見ると、水晶末がまだらなのが判ると思います。
裏彩色の発光に問題が無ければ、これくらいのまだらは全然問題ありませんが、裏彩色の描写を妨げるムラは解消する必要があります。

ドーサを含ませた連筆で、表面の水晶末の余分を洗います。
余分を洗い取ると同時に、残った水晶末の定着を安定させる一石二鳥の方法です。

一応、また暗くして確認します。
全体が柔らかくボケてるのは変わりませんが、要所要所だけ、また胡粉でシャープに描写すれば問題無いと思います。

膠が減ってきたので、今晩のうちから、次の膠を水に浸して柔らかく溶けやすく準備しておこうと思います。
左端は、最近評判の新商品です。

学生の頃から愛用の「軟靭鹿膠」は名称にこそ鹿膠が残ってますが、かなり前から実際には牛が原料に変わってたそうです。
一方、この大和五條鹿皮膠は、正真正銘、鹿皮から煮溶かして抽出して作った膠だそうです。
増え過ぎた地域の鹿をジビエ食材や、本物の鹿膠を復刻させる有効利用の取り組みの一環のようです。
こちらは透明感と柔軟性に優れていると、同業者の投稿などから伺ってました。
いつもお世話になってるマスミ東京の社長さんから、試しに使ってみてくださいと譲り受けましたが、今度単独で使い心地を試してみたいので、次回のブレンド膠には加えない事にしました。

僕は、200ccの水に、膠18gを溶かすのを基準にしてます。だいたい9%の膠液になります。
今回は19gを表示してますが、そのうち12gを軟靭膠素が占めてます。
蓄光顔料は膠を吸収しやすく、乾くと硬く縮まる性質が他の岩絵具よりある事が分かってきましたので、接着力がやや劣るものの、柔軟性に優れ、丸める掛軸用に最適な軟靭膠素の割合を多めにブレンドするわけです。
11月30日

昨日の絵が完全に乾いた状態です。
ドーサにて表面の水晶末を洗い、濃度のムラを均した作戦は成功しました。
白さがまんべんなくなり、裏の隠し絵もほとんど見えなくなりました。

暗いところで確認したら、余分に厚塗りの水晶末が取れたせいか、全身の見え方も再びクリアに見えました。
横向きの顔だけ、胡粉での加筆をする事にしました。

胡粉にて加筆した後の写真です。
ほとんど変わってないように見えるかもしれませんが、この微調整は作者のこだわりです。

胡粉にて左右の顔の目鼻口眉などを骨描きしてるところです。
表彩色 背景

今日の制作中に、昨日から浸けておいた膠を溶かしておきます。
煮沸消毒するため、湯煎で溶かしたあと、直火で煮込むやり方を採り入れから、全工程の1時間余りを、電熱器の側から離れる訳にはいきません。
制作だけに集中してる時間に傍で煮込むのが安全です。

胡粉が乾いたら、祈る人をマスキングテープ&マスキング液にてマスキングします。
仏像の解体補修の様な絵になりました。

棒絵具の洋藍を指で水をすくい、撫で溶かします。

タオルハンカチを絵皿に敷いて、洋藍液を染み込ませます。

そこで海綿をポンポンさせ、試し塗り用の紙の上に試し押ししてみます。
旧職場に併設された画材店で購入してありましたが、今まで日本画制作で使った記憶はありません。
何かで使えそうと思って購入したものの、一度も使った事のない道具は他にも色々持ってます(笑)。
ちなみに、講師として在職中、女子高生の受験生が、売店にて海綿を求めるときに、間違って
「海綿体ください」って尋ねていたのを思い出し、
ニヤニヤしてしまいました。
※海綿体が何物かご存知ない方は、
ご自分で検索なさってください。m(_ _)m

最初は慎重に薄く乗せます。

拡大写真だとこんな感じです。

もう一重ねして、

暗くして確認します。
大丈夫、蓄光顔料の発光を塞ぐほどではありません。
マスキングテープの重なった部分の方が暗いくらいです。

一旦タオルハンカチから絵皿に洋藍液を絞り出し、

水を足し、更に洋紅と追加の洋藍とを溶かし、先ほどよりも濃くします。

再びタオルハンカチを浸し、

海綿によるポンポンスタンプを重ねていきます。

拡大写真です。

まだ蓄光顔料の発光はほとんど塞がれてません。

今日の最終段階です。
早く人物と梵字のマスキングを剥がし、結果を見たいところですが、完全に乾くまで待つため、今日はここまでとし、明日剥がす事にします。

最後にもう一度暗くして確認です。
12月1日

マスキングを剥がします。
祈る女性の方は綺麗に剥がれてくれましたが、
梵字の方は、貼ってからの日数が長かったせいか、一部剝がれず残りそうです。

こんな感じです。
でもかえって歴史を経た風合いの様なものが出て良い塩梅です。
神仏のご加護だと受け止めました。

暗くして見るとこんな感じです。
表彩色 祈り

表の彩色は、蓄光顔料の発光を通しやすくするため、染料系の絵具を使います。

薄く塗っては、暗くして発光具合を確認しながら、少しずつ濃くしていきます。

肌色が一通り塗り終わったら、ワンピースの周りをマスキングします。

臙脂をベースに、少量の洋藍を混ぜた赤紫を塗っていきます。
薄く塗っては暗くして確認し、これは4回か5回塗り重ねた段階です。

この段階では、まだワンピースの裏側からの発光は充分明るいと確認してました。
後で落とし穴に落ちるとも知らずに…

全体の明るさは問題ありませんが、何故か乳輪やおヘソの暗さがボケてしまいました。
エロぞうを隠さず自認してる僕が、自主規制するはずはありません。

ワンピースの固有色に近くて、不透明な新岩桃 白(びゃく)番の顔料にて、暗くしたいところを塗ろうと思います。

乳輪、おヘソ、あそこに新岩桃を塗ります。

発光が塞がり、暗くハッキリ見えるようになりました。

胡粉にて発光を塞いでいた上瞼と瞳も、ちょっと弱いと感じてました。

新岩桃を塗る前の発光具合です。

新岩桃にて、上瞼、まつ毛、瞳を塗りました。

目力が強くなり、相対的に顔全体は明るくなったと思います。

新岩桃で加筆したところを目立たなくするため、再びワンピース全体に色を被せます。

この段階では、ワンピースの下も、他の部分の発光具合に遜色ないと確認してました。
実は、後で思い知るのですが、濡れてる間は発光が通過しやすく、乾くと被覆力が強まってしまうのでした。

髪の毛、眉、(下)瞼、鼻、口に、暗さを加えると、新岩桃で描いた上瞼や瞳の存在が目立たなくなりました。
ほつれ髪も描き加え、変身前は、生身の女性らしさを出しました。

さぁ、いよいよマスキングを剥がします。

お〜! ついに完成か!?
ところが、この後、電気を消すと…

うわ〜! これはエロ過ぎだ〜🤣
純粋にエロを極める作品だとしたらナイスですが、
今回は(表向きには)ありがたい仏画として発表予定です。
西洋美術は、神話の表現という大義名分の下にエロスを隠して発表してきた歴史があります。
この作品は、フランスの由緒正しき美術館に出品する予定の作品です。
東洋の神話をモチーフにして、表向きは、西洋美術のルールに合わせた(裏の本音では、その偽善をおちょくった)出品作です。
こんなエロ丸出しでは、大義名分が吹っ飛びます🤣
表彩色 洗い(TS1)

再びワンピースの周りをマスキングして

洗って薄くしようと思います。
顔料と違い、染料系の絵具は染み込んでしまって落ちにくいのですが、ボウルの中の水に少しピンクが移りましたので、少しは薄くなったと思います。

ティッシュペーパーを押し当てて、洗い水を吸い取らせましたが、ティッシュの裏には全然ピンク色が移りませんでしたので、これ以上は取れないという事でした。

電気を消して確認しました。
明るさが復活したように見えますが、もう騙されません。
湿ってる間は、光が通過しやすいんですよね。

洗ったワンピースが乾きました。

暗くして確認すると、洗う前よりはワンピースの裏の発光は明るくなりましたが、首輪との境で、やはりワントーン暗くなってます。
でも、これ以上洗っても薄く出来ませんので、洗う作戦は諦めてマスキングを剥がそうと思います。

マスキングを剥がしました。

洗う前よりはマシになりましたが、やはりスケスケのネグリジェをまとったみたいなエロさの方が、神々しさよりも先に立ってしまいます。
このエロさを弱めるのも、それはそれでもったいないと思いますが、よりエロさの度合いを重視した次回作にて思う存分発揮しようと思います。
修整作戦は2つ思いつきます。
たぶんその2つの合せ技で改善する事になると思います。
完成まで簡単には行きませんが、難しければ難しいほど、それを解決して納得ゆく作品が完成させられたら、他の追随を容易に許さない、まさにオンリーワンの表現となるわけです。

洗った後、胡粉や新岩桃の部分が明るく見えてきました。

臙脂で、白くなった上から周りの色に同化させるように塗りましたが、今度は濃くなりました

濃くなった部分には再び新岩桃を被せ、中和させました。
今後の仕上げも、この様に、明度の微調整になります。
ただし蓄光顔料の濃度は、いちいち暗くしないと確認出来ないので、照明のオンとオフとが忙しくなりますし、夜型の生活リズムが継続してしまいますが😅
続きはまた明日!
12月2日
表彩色 蓄光顔料(TS2)

前回までは、ワンピースの色が濃く塗られたせいで、暗くした時に、スケスケのネグリジェを着てる様に見えて、神々しさよりもエロさが勝って見えました。
今日は表側から蓄光顔料を塗って、ワンピースの下の身体を明るく見せようと思います。
面相筆で輪郭をはみ出ない様に塗ると凹凸が出来ますので、平筆でフラットに塗るため、身体のラインの外側にマスキング液を塗りました。
せっかくなので、暗くした時にも梵字が浮かび上がるよう、梵字の周りもマスキングしました。

身体も梵字も平筆を同一方向に動かしながら、なるべく均一に重ね、暗くしたいところも水を含ませた平筆で洗って明るさを調整しました。

アトリエの照明をつけたり消したりしながら描き進めました。

本日の最終段階(明)です。
太腿の内側は真っ暗な状態でしつこく洗い続け、明るくしてみたらワンピースの色まで取れてました。
なんだ、しつこく洗い続けたら取れるのかとも思いましたが、やはり全部を洗うより、色が薄くなったところに赤紫を被せて馴染ませようと思います。
蓄光顔料は粒子が粗く、粒子の隙間から下の絵具が透けて見えるので、薄塗りであればこの様に表側から発光の弱い部分をフォローすることが出来ます。

本日の最終段階(暗)です。
スケスケのネグリジェの存在は消えたと思います。
それにしても全裸よりも、スケスケの下着越しの方がエロく見えてしまう心理状態というのは興味深いですね。
これに続く次回作では、そんな仕掛けの隠し絵画を描く予定です。
12月3日

今朝の状態。
蓄光顔料が完全に乾いて、昨日の晩より、白く浮き出てきました。

ちょっと手ブレ写真になってしまいましたが、スケスケネグリジェの存在は消えてくれてます。

ところが、2つのトラブルに見舞われました。
先ず、梵字の周りのマスキングを剥がそうとしたら、蓄光顔料の膠を吸収したためか、なかなか剝がれず、しつこくリムーバーで擦り続けたら、海綿でポンポン押した洋藍まで薄くなってしまいました。
強く擦り続けて手も痛くなりました。
人体の方の緑色に光る蓄光顔料の方は、膠が弱かったようで、軽くヤスリを掛けたら、昨日塗った分が、ほとんど全て取れてしまいました。

梵字の青く光る蓄光顔料の方は、マスキング液ごと絵絹に接着させてしまうくらいでしたので、しっかり定着し、梵字が暗闇でも明るく発光するようになりました。
人体の方は、昨日の仕事が無駄骨になり、スケスケネグリジェ状態に戻ってしまいました。
対応策は思いつきましたが、今日はモチベーションが下がってしまいましたし、手が痛くなるほどリムーバーを擦り続けてしまいましたので、潔く仕事を休むことにしました。
長年の経験から、気持ちが乗らない時に描くと、絵をダメな方向にしてしまうので、そういう時は描かずに休むか、別の事をしたほうが良いという結論に至ってます😅
明日、手指の痛みが無ければ、明日から気分一新して再挑戦しようと思います。
12月4日
表彩色 リカバリー

マスキング液には膠液が染み込んで、剥がせなくなるくらい絵絹に接着されてしまうリスクがある事を体験しました。
なので、今日のリカバーは、(膠液を弾く)マスキングテープでやり直す事にしました。
ホームセンターにて最大幅5cmのマスキングテープを購入し、梵字の上に貼ります。

身体の方は、マスキングテープを貼る前に、赤紫が擦れ落ちた部分を塗って周りに馴染ませます。

梵字のアウトライン及び、身体のアウトラインを鉛筆でトレースします。

マスキングテープを画面から剥がし、カッターマットに移動し、アートナイフにて切ります。

カッターマットから剥がし、梵字の上に貼っていきます。

身体の方は逆に、ラインの外側をマスキングします。

緑に光る蓄光顔料を身体全体に塗ります。
今日は少し膠の分量を増やして塗りました。

塗った直後に暗くして確認します。

次に梵字の周りの薄くなってしまった部分に、海綿ポンポンで、洋藍を重ねていきます。

だいぶ元通りに復活しました。

もう一度暗くして確認します。
身体に塗った蓄光顔料もすっかり乾いたようなので、

梵字及び、身体の周りに貼っていたマスキングテープを全て剥がします。

再び、照明を消して確認します。

新岩桃にて、乳輪など、暗くしたいところの発光を抑えるための彩色をします。
新岩桃は明るい照明化では、むしろ明るい色なので、影の描写をしても乾くと明るくなって目立ちません。

乳輪やおヘソは既に乾いてきてるので、周りの明るさと違和感がなくなってきました。
陰毛がまだ乾いてないので、少し影になってると思いますが、乾けば明るくなって目立たなくなるはずです。

こんどは、ワンピースの下の身体のラインを隠すため、ワンピースの輪郭をトレースし、

カッターマットの上で、くり抜きます。

画面に貼ってワンピース部分だけを露出させ、

水晶末をワンピース全体に塗ります。
乾き待ちの間にこの投稿をしましたので、一塗り目が乾いてからの経過は、また次回の投稿でお伝え致します。
12月5日

昨夜の投稿後、真夜中の制作の続きから。
水晶末一塗り目が乾いたところです。

蓄光顔料は、ある程度の輝度がありますが、この先の隠蔽工作に負けない輝度に高める必要を感じました。

明るくしたいところに蓄光顔料を重ねます。

濡れてる間はこんな感じです。

蓄光顔料が乾きました。

蓄光顔料を重ねたところと、ワンピースだけのところに明度差があるので、人体の外側には水晶末を塗ります。

人体とワンピースだけのところの明度差が近づきました。

また蓄光顔料を重ねます。

乾き待ちをして

乾いたところで、再びワンピース全体に水晶末を重ねます。
これで隠蔽工作は完璧になるはずです。
表彩色 一進一退

寝て起きたら、ワンピース全体が白くなってました。
この上に薄く彩色すれば、完全に中の身体を隠蔽出来るはずです。
ところが…

暗室代わりのトイレで確認したら、
ガーン!
ものすごく暗くなってました。

「蓄光顔料を使った隠し絵画」を考案してから、丸2年間、ほとんどこの技法を使った作品を描き続けて来ましたが、こんなに輝度が暗くなってしまった原因が分かりません。
最後に塗った水晶末がそんなに厚塗りではありませんし。
しかし、事実暗いので、もう一度最初からやり直しするしかありません。
ヤスリを掛けて一旦平滑にします。

当然ですが、更に暗くなりました。

今日は濃い目に溶いた蓄光顔料を重ねます。

うわっ!
今度は凄く明るいです😆
加減が難しいです。
昨夜の反省から、今日は、こんな感じで、思いっきり明るく発光する様に描き進めることにします。

乾いたら、ヤスリ掛けをして、塗り重ねるのを繰り返します。
以下、発光具合の変化のみを順番にご覧ください。





これが今夜の最終段階です。

表面はかなり凹凸が激しいので、一晩乾かして、明日ヤスリ掛けから再開します。
12月6日

昨夜の続きから。
日本対クロアチアの前半の間に乾きました。
どんだけ凹凸があるか分かりやすくするため、横からスタンドの明かりを当てて撮影しました。

暗くして見るとこんな感じで、ムラがあるものの、一応全体に蓄光顔料が塗れたようです。

ハーフタイムのCM中に、紙ヤスリで均し

掃除機のブラシヘッドで粉塵を吸い取ります。

表面が滑らかになりました。が、

ありゃりゃ!後の方で塗り重ねた蓄光顔料がまた取れてしまいました。
でも、この結果から、最近の不具合の原因が見えてきました。
つまり、一塗り目を塗って、一見乾いた様に見えたとしても、その日の中に2度、3度と塗り重ねてはいけないという事のようです。
今までの制作は、数日掛けて塗り重ねてきてましたから、2度目、3度目と塗り重ねる毎に、滑らかに光るように塗る事が出来てたのに、今回は、完成が見えてきたら、気が早って一晩の中に、2度、3度塗り重ねてきたので、蓄光顔料の定着が不十分だったのだろうと推察出来ます。

延長線、PK戦が終わった後、ワンピースの周りのマスキングを剥がしました。

白いワンピースも清楚で良いですね。
神に祈る衣装として、あえて色をつけず、白いままで仕上げようかな?

マスキングの下に入り込んだ絵具を洗って、乾いてから、

一旦ドーサを引きます。

塗る方向と、連筆の継ぎ目を変えて2度目のドーサを引きます。
続きは翌日。

今日は、もう一度、隠し絵画の身体のラインの外側にマスキングをします。

今度こそ全身にムラなく蓄光顔料を塗り重ねようと思います。

アトリエの照明を明るくしたり、暗くしながら、塗り重ねました。

今晩は、潔く、一度塗りで止めます。
まだ、ムラがあっても、一晩完全に乾かしてから次の塗り重ねをするかどうか判断します。
早く完成させたいと気が急いてしまいましたが、今後は、構想、準備段階であった次回作も並行して描き始めようと思います。
やはり、乾き待ち時間の無駄を無くし、効率良く制作するためには複数の作品を並行して描いていくのが良いと思いました。
12月7日

いつもの様にヤスリで均してドーサを引き、身体の周りのマスキングを剥がし、緑色に光る蓄光顔料で塗り重ねました。
身体のラインとワンピースのラインのズレたところが暗くて、対比で身体だけが妙に明るく見えてしまいますので、

身体のラインとズレたワンピースのシルエットの上に、青く光る蓄光顔料と、群青色に光る蓄光顔料をそれぞれ塗りました。

下図のコピーからネックレスをトレースします。

本日の最終段階です。
ここ数日の反省を活かし、完全に乾かしてから、また明日の続きをすることにして、今日はたったこれだけですが、制作終了😅
12月8日

表側から蓄光顔料を塗った部分だけをヤスリ掛けします。
背景部分は、裏彩色による蓄光顔料だけ塗ってあり、表側からは染料系の洋藍しか塗ってませんので、絵絹が剥き出しも同然です。
剥き出しの絵絹にヤスリを掛けてしまうと、表面を傷める事になりますから。

明かりをつけて、この後直ぐに掃除機のブラシヘッドにて蓄光顔料を吸い取ります。

ドーサを引いて、明日まで完全に乾かしてから再開します。
12月9日
表彩色 微調整

今日の仕事に掛かる前の状態です。
薄っすらと身体が見えますが、ワンピース全体が白く均されてます。

暗くすると全身が光って陰影が不明瞭です。

今日は先ず、胡粉を使って、陰影をつけていきます。
昨日トレースしたネックレスの輪郭を、明るい状態では白い胡粉で隠すと同時に、光の通過を塞ぎ、暗くした時には、逆に輪郭をハッキリさせます。

ネックレスの他に、乳輪など、光を塞いで暗くしたいところに胡粉で隈取りします。

暗くすると、少しずつ身体の陰影がハッキリしてきます。
少しずつ様子を見ながら胡粉を重ねていきました。

先ほどまでは純粋な胡粉で描いてきましたので、陰影部分の方が
薄緑色をした蓄光顔料のベースより明るくなってしまいました。
ノーバグリーンとガンボージと胡粉とを混色し、緑に光る蓄光顔料と似た色に調合(写真中央)し、ここから先は、この色で隈取りを重ねていきます。

隈取りも、少しはベースに馴染んで目立たなくなってきました。

暗くすると、身体の陰影がよりハッキリしてきました。

またまたワンピースの周りをマスキングします。

水晶末を塗る前の拡大画像です。
少し隈取りが見えます。

今度は(白く見えますが胡粉と違い透明な)水晶末をワンピース全体に塗ります。

2回塗って乾いたところです。
乳輪などはだいぶカモフラージュされてきました。

暗くするとこんな感じです。

腰と円光との境が曖昧なので、

ブレンド胡粉で腰の際の陰影を強めます。

被覆力のある胡粉で境をハッキリさせようと思います。
この先も、もう少し微調整を続けようと思いますが、慌ててはいけません。
充分乾かして、暗くした時の発光具合を確認しながら、少しずつ慎重に進めます。
慌てず進めるため、晩酌を始めました。
続きはまた明日以降😊
12月11日

先日までに被せた水晶末が乾き、ほとんどフラットに白くなりました。

暗くして確認。
隠し絵の身体がしっかり見えます。

洋藍に少しだけ洋紅を混ぜた薄い青紫を少しづつ塗り、ワンピースに陰影をつけていきます。

これくらい軽く陰影をつけます。

濡れているうちは下の輝度が損なわれないのを、前回学習したので、これくらいで乾くのを待ちます。

ほぼ乾きました。

さて、中の身体の輝度は、丁度良く落ち着きました。
周りに伸ばした6本の腕の輝度とも近づきました。

マスキングテープを剥がします。

マスキングを剥がした状態です。

胴体の輝度も概ねちょうど良いです。

胸の筆跡の粗さが少し気に入らないので、こちらは後で対処しようと思います。

先ずは、ワンピースからはみ出て塗った蓄光顔料の白さを背景に馴染ませる仕事から始めます。
またまたマスキングテープを貼り、ワンピースのアウトラインなどをトレースします。

カッターマット上でラインに沿ってカットしたあと、再びワンピースの上に貼り、海綿ポンポンで、背景に同化させます。

はみ出た部分は背景に馴染みました。

暗くして確認。

胸や脛など、少し輝度や滑らかさを足したい部分に薄く蓄光顔料を塗ります。

乾いたら、胸や脛が明るくなり過ぎました。

明るい状態では、ワンピースの上に被せた蓄光顔料は目立ちません。
蓄光顔料は、明るいところでは、やや黄緑色掛かってるものの、ほぼ白ですから。

紙ヤスリで明る過ぎる部分を擦り落とし、

再び滑らかになるよう薄く塗ります。
3歩進んで2歩下がるを繰り返し、微調整しながら仕上げていきます。

明るい状態では、ほぼ完成です。

隠し絵の発光具合もだいぶバランス良くなったので、ほぼ完成です。
裏彩色 仕上げ

いよいよ最後の仕上げに入ります。
裏側から水晶末を塗ります。
蓄光顔料の輝度は、下地が白いほど上がるので、表側から見た最下層を水晶末で白く塗りつぶす訳です。

一塗り目が乾いたら、画面を180°回転させ、反対方向から二塗り目をして、今夜の仕事は終わりにします。
明日には完成させられそうです。
12月12日
表彩色 微調整

昨日、裏側から水晶末で最下層を白く塗ったおかげで、全体に蓄光顔料の輝度が上がりました。
向かって左脇と、右腰脇の暗さが、身体のラインの邪魔になってると感じたので、青く光る蓄光顔料を塗って暗さを隠そうと思います。

円光と同じ青く光る蓄光顔料を重ね、身体の脇の余分な暗さを消しました。

暗くした時は、ワンピースのシルエットは消え、スムーズにヌードのうねりが見えてくるようになりました。
これで完成です。
落款

金泥にて名前を書きます。

金泥の署名が乾いたら、印を押し、天然珊瑚末13番を振り掛けます。

珊瑚末を筆で掃き落とし、
ケースに戻します。

金泥で書いた署名部分を瑪瑙ベラで擦り、ツヤを出して完了。
後日、表具店に作品を持っていき、掛軸の注文をして、軸装が終わってからが、本当の完成になりますが、とりあえず作品自体は完成致しました。
完成

明るいところで見た状態。

明〜暗への途中段階。

暗闇では、蓄光顔料で描いた阿修羅に変身します。
12月15日

背景のマスキングテープから剥がしていきます。

表側の絵の周りのマスキングテープを剥がしたところです。
エッジが明解になったので、表具の職人さんも、どこまでが画面か分かりやすくなったと思います。

裏彩色のマスキングテープも剥がします。

裏彩色のマスキング位置が少しズレてましたが、これはご愛嬌。
もちろん表の青い背景に合わせて掛軸を仕立てて頂きます。
木枠と絵絹との接着部分のマスキングテープも剥がし、四隅に刺してた画鋲も抜きます。

絵絹と木枠との接着部分を湿らせ、

剥がして糊が乾くまでタオルの上に置いておきます。

糊が乾くと縮んで画面がフラットにならないので、糊代部分をカットします。
明日、画面を丸めて表具店に持って行きます。
裂地を合わせ、表具の注文をしようと思います。楽しみ♪
12月16日
軸装

裂地、軸先、紐を選び、軸装の注文をしてきました。
軸装されるとひときわ作品の見栄えが増しますので完成が楽しみです。
2023年1月31日

「祈り〜阿修羅の娘」の軸を受け取ってきました。

ウコン染の黄布を開き、

取り出します。
蓄光顔料で厚塗りして描いた軸物でしたので、細く巻くと蓄光顔料の層にヒビが入ってしまう怖れがあったので、今回は「太巻」というアタッチメントを付けて貰う注文をしました。
桐箱も大きくなりますので、お値段は張りましたが、作品の為にはそういう経費をケチってはいけません。
僕の作品は高級品ですから。

太巻を付けたまま、掛けて、

しまう時も、巻く前に太巻を取り付けてから巻いていきます。
矢印の方向に丸めていくので、巻き付け始めに折れ目が入らないよう、手前の角は少し削ってあります。
細やかな職人技です。
こういう細かな気遣いが出来るのが、日本人の職人の優れたところだと誇らしく感じます。

太巻をパカっと外して、

これが表装の完成写真です。
明日、自然光も入る明るい時間帯に、一眼カメラにてあらためて撮影し直すつもりです。

照明を常夜灯にして撮影。
阿修羅が浮かび上がります。
こちらと、真暗にした状態も、明日一眼カメラであらためて撮影し直します。
2月12日
桐箱 箱書き

桐箱への箱書きをしました。
作品の完成は昨年末でしたが、軸装完了したのが今年でしたので、令和5年制作と箱書きしました。
海外の人達にも、2023年制作の最新作だとアピール出来ます。

印泥に天然珊瑚末13番を振りかけ、

筆で掃いてケースに戻し、

木目に入り込んだ珊瑚末はウエットティッシュで拭き取ります。
蓋を明けた状態で2,3日乾かせば、掛軸の収納が出来る状態になります。
阿修羅の娘の独白

「祈り〜阿修羅の娘」の掛軸の裏に、僕がこの作品に込めた思いとして創作した、阿修羅の娘の独白を貼りました。
後世の美術評論家に作者の創作意図を勝手に曲解させない様に、作品の裏に作家自身の思いを貼り付けておいたというわけです。
この作品は、フランス・ロワールでの展覧会で初披露する予定ですので、もしかしたら外国人がお買い上げ下さるかもしれません。だったらなおさら戦後生まれの日本人の中にも、このような愛国心、憂国心を持ってる大和男児がいる事を知っておいて貰いたいと思います。
詩の内容に興味を持ち、作者の僕か、日本語が解る方に、どんなメッセージが書かれてるか尋ねるはずですから。
まず「阿修羅の娘」の独白を裏打ちしました。
裏打ちの方法は、裏打ち紙に糊を塗る「迎え打ち」と本紙に糊を塗る「地獄打ち」との2種類あります。
たいてい裏打ち紙の方が薄くて破けやすいので、僕は厚みのある本紙の方に糊を塗る「地獄打ち」しかしたことがありませんでした。
表具師が、画家や書家から依頼されて、裏打ちするときは、万一作品本紙を破いてしまったらとプレッシャーが掛かるので「地獄打ち」と呼ばれてるようですが、作家本人が裏打ちするときは、自分で選んだ本紙の強さに微塵の疑いもありませんから、簡単な「地獄打ち」を選ぶ訳です。
今回、半紙の強度を増すために選んだ裏打ち紙は、山梨県身延町にて紙漉き工房体験&見学ツアーのモニター体験したときに、職人さんの指導の元、自分で漉いた楮100%の和紙です。
裏打ち紙の方が本紙である半紙よりも丈夫で厚みもあります。なので、今回は丈夫な楮和紙の方に糊を塗る方法を取りました。

楮紙に糊を塗ります。
長い繊維が縦横無尽に絡んでるのが見えると思います。
この繊維の長さと、不規則な絡みが手漉き和紙の強度の理由です。

半紙は木製パネルに伏せて、水で湿らせるだけです。
紙が水分でパネルに密着するので、この後、パネルを垂直気味に壁に立て掛けても剥がれ落ちません。
また、糊の水分で伸びる楮紙と、
こちらも水分で伸ばして、
2つの紙の伸縮をシンクロさせる意味もあります。

撫刷毛で上下左右に伸ばすようにして密着させます。
半紙の角を少し破いて、5mmほど欠けさせてしまいました。
やはり薄い紙は湿ると破けやすくなります。
丈夫な手漉き和紙で裏打ちしておいて良かったです。

3日ほど置いて充分に乾燥したのを確認して、楮紙で裏打ちしてあった半紙を一旦剥がします。

今度は、楮紙の裏側に糊を塗ります。

楮紙との伸縮をシンクロさせる為に、掛軸の裏側に水を引き、こちらも少し伸ばします。
この後、壁に裏側を向けて掛けて、楮紙で裏打ちした半紙を貼ります。

掛軸の裏に貼った状態です。
作者自身による作品コンセプトを、作品と一体化することで、後世にも誤解なく作者の創作意図を残す事が出来ます。

僕の愛国心、憂国心、大和男児としての誇りをご理解して下さってる友人なら、僕がこの詩に込めた真意がご理解出来るはずです。

表側からは見えません。
もちろん暗くしても浮かび上がりません(笑)。
作品の購入者や、美術評論家、研究者が裏に貼られた詩の内容に気付いて下されば本望です。

「祈り〜阿修羅の娘」暗くすると、こう見えます。
失敗の巻
リバーシブル掛軸、上手くいきませんでしたので、結局剥がしました。
巻物なだけに、まさにこれこそ失敗の巻!
失敗しながら、学んで、技術と知識、挽回するためのアイディア等が向上していきます。
今回は結局は上手くいかずに、剥がしてしまいましたが、トライ&エラーの姿勢は、今後も上達の秘訣と信じて取り組んでいきます。

掛軸本体に引いた水分と、裏打ち紙に塗った糊の水分とをシンクロさせたつもりでしたが、
日を追うごとに、本紙はそうでもありませんが、廻りの裂地がダブついて皺が出来てしまいました。
掛軸として仕上がったものの最終的な裏打ちは、やはり「総裏」の様に、本紙も廻りの裂地も全てまとめて裏打ちしないといけないと納得出来ました。
一部だけ裏打ちしたら、そこの部分だけが縮むから、それ以外はダブつくのは必定でしたね。
でも、「聴いた話」ではなく、自分で実際に体験し、痛い目にあい、恥をかく事で、骨身に染みて吸収、記憶出来ます。
頭だけで知ってるつもりの知識とは天と地ほどの違いがあると思ってます。
また一つ大きな勉強になりました。

たっぷり水を引き、糊を溶かします。

プラスチック製のパレットナイフを差し込みながら、少しずつ少しずつ剥がしていきます。

剥がし終わりました。
裏打ちの紙は剥がす時に、また皺が沢山つきました。

詞を書いた裏打ちの紙は、木製パネルに置き、水を引きながら皺を伸ばし、パネルに密着させました。
乾いたら皺は伸びてる事を期待します。

掛軸本体は日中は寝かせたまま、そして現在は壁に掛けて乾燥させてます。
現在、湿り気は感じませんが、裏打ちを貼ったり剥がしたりしたので、凹凸があります。
明日以降、完全に乾いたら、丸めて桐箱に入れます。
丸めて収納してるうちに凹凸は平均化され、平らに整うはずです。
掛軸の収納

阿修羅の娘の詞をパネルから剥がします。
せっかく平らに乾いたこの紙を波打たせたくありませんでしたので、今回は水を引かずそのまま、ペリペリと剥がしました。

「軸棒(掛軸下部の軸)」に、太巻のアタッチメントを装着します。少し抉(えぐ)ってある方を必ず表側に当てるようにします。
丸め始めに裂地に太巻のエッヂが強く当たるのを防ぐ為に、少し抉ってるとの事です。

絵の上に差し掛かったところで裏打ちに失敗した阿修羅の娘の詞を挟み、一緒に丸める事にしました。

最後に「八双(掛軸上部の軸)」に紙を挟みます。

「掛緒(掛け軸を掛ける紐)」に付いている「巻緒(掛け軸を巻き留める紐)」で巻いていきます。

「巻緒」を巻き終わった状態です。

桐箱と黄布です。
黄布や黄袋は、昔はウコン染めで防虫効果としてた名残りで、現在はウコン染めでは無いと思いますが、黄色い布で絵画作品を包む伝統が残ってます。

ウコン染めでは無くなった代わりに防虫香と一緒に桐箱に収納します。
松榮堂の防虫香は特に香りが良く、僕も、お客様達からも好まれます。

太巻を含む軸先受けは、微妙に幅が違います。
八双(掛軸てっぺんの軸)側を幅広側にして収納します。

桐箱に収まった状態です。

シールは、所有者が記入します。
昔の風流人は、沢山掛軸を買い集め、季節毎に掛け変えて楽しんだものでしたので、外箱のシールに作者名と題名とを書いて収納したんです。

桐箱を掛軸ケースに収めます。

蓋を被せたエロぞうスコープと、掛軸ケース

スコープの底にピッタリ収め、

専用キャリーバッグを被せ、

ひっくり返してチャックを閉めれば、搬入準備完了です。
海外輸送時は、たぶん、展覧会企画会社がエロぞうスコープをエアキャップ(プチプチ)で梱包してくださると思いますが、キャリーバッグは、スコープよりひと回り大きな容量ですので、エアキャップで梱包したら、よりピッタリジャストフィットすると思います。
エロぞうスコープ2
「エロぞうスコープ2」を使うことで、ご自身で調光しながらご鑑賞いただけます。






こちらから⇒【Hidden Art】「祈り〜阿修羅の娘」の制作コンセプトがご覧いただけます。