「地獄極楽変相図」 2020年制作
「地獄極楽変相図」1510 x 740 mm 2020年制作 岩見沢市 明心寺蔵
臨済宗妙心寺派 明心寺 徳重寛道住職より、江戸時代中期の禅僧である白隠慧鶴(はくいんえかく1685~1768)による同名の掛軸に倣い、現代版の「地獄極楽変相図」を制作する内容にて依頼を受けました。
白隠禅師のそれは漫画の様に即興的に描かれたものです。おそらく極楽の釈迦三蔵像から描き始め、思いつくまま十界の様子から地獄までを次々と描き進めていったと推察致します。
描き進めるうちに、描きたい場面が地獄で沢山湧いてきたのだと思われます。結果、釈迦三尊像の周りは広いスペースが空いているのに、画面下方の地獄場面にいくにしたがってどんどん窮屈になってしまってます。
僕は、あらかじめ白隠禅師の作品を観てますし、即興では無く、じっくり構想を練り、構図全体のバランスを整えた大下図を仕上げてから、それをトレースするように本画を描きました。
白隠禅師同様に僕も地獄場面こそ描きどころ満載だと思いましたので、画面の2/3を地獄場面に当てた構図としました。
自由にアレンジしても良いと言われておりましたので、白隠禅師の作品をベースに聖衆来迎寺蔵の「六道絵」をはじめ「地獄草紙」「熊野曼荼羅」など他の古典作品を引用しつつ、作者独自の解釈にてアレンジを加えた表現とさせていただきました。
その一方で、現場で感じる臨場感を大切な創作動機としている僕としては、風景設定には現場の臨場感とリアリティを出したいと考え、恐山や箱根大涌谷、金属鋳造工場の溶鉱炉などに取材に出掛けて、地獄の風景の創造の源泉、風景描写の参考としました。
現場取材から創造したリアルな風景の中に、登場人物を生き生きと散りばめた、古さと新しさとが融合した令和版「地獄極楽変相図」です。
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A4版 18ページフルカラー
【内容】
・制作に当たっての作者の思いや、工夫した点、創作秘話など。
・仏教の世界観、十界や、八大地獄の解説など。
・六道、三途の川、閻魔王庁、そして地獄の各場面の獄卒達がどんな働きをしてるのか、罪人達が受けてる刑がどんなものなのかを各場面のクローズアップ図版とともに解説してます。
初めて地獄極楽図を鑑賞される方にとっては、入門書として分かりやすく興味深く読めると思いますし、引用元の古典作品に詳しい方も、元の古典作品が佐藤宏三によってどのようにアレンジされたかを比較する、通としての楽しみ方が出来ると思います。
一幅の掛軸に凝縮された細部の解説をじっくりお楽しみください。