「総本山長谷寺 第八十五世化主」肖像画 2016年制作

1200 x 480 mm 2016年制作 奈良県桜井市 総本山長谷寺蔵

仏教系新聞の中外日報さんに僕の仕事ぶりを紹介する記事を掲載して頂きました。その記事で明心寺第二世住職の頂相を手がけた事と共に、総本山長谷寺の春を描いた屏風を制作中の写真が掲載されました。

その記事を目にされた猊下と奥様が、ぜひこの日本画家に、生前中に肖像画を描いて貰いたいと中外日報社さんに僕の連絡先をお問い合わせ下さり、ご依頼を受ける運びとなりました。

総本山長谷寺の初代から第八十四世までの歴代肖像画全ての写真を参考資料としましたが、やはり最近のものは平面的な法衣に写真を見て描いた立体的な顔という違和感のあるものになってました。

また、歴代のほとんどの肖像画背景が伝統的なのか分かりませんが黄土色でした。色彩対比を考慮したら肌色や朱色の法衣を引き立たせるためにも背景は青味のある色の方が断然良いと思いました。

「総本山長谷寺 第八十五世化主」肖像画 1200 x 480 mm 2016年制作 奈良県桜井市 総本山長谷寺蔵

また、伝統的に仏画は作者の落款(らっかん=サイン)を入れないものだそうですが、僕は作者としての名を残したいと思い、半畳の縁に隠す様にではありますが落款を入れる事もお許し頂けました。

「総本山長谷寺 第八十五世化主」肖像画 1200 x 480 mm 2016年制作 奈良県桜井市 総本山長谷寺蔵

猊下との打ち合わせで、伝統を踏襲する点と、伝統に囚われず改善する点とを確認しながら表現方法を決めていきましたが、僕が提案させて頂いた改善表現のほとんど全てにご共感頂けたおかげで、
「歴代の中でも一番素晴らしい肖像画になったと思います」と猊下ご本人からも喜ばれる出来に仕上がりました。

受注製作の場合画題はお客様のご要望に沿って描きますが、具体的な表現は、画家の美意識やアイディア、技術を信頼して任せて下さると、こちらもその信頼に応えようと、ますます力を発揮出来ます。