「登龍門」THE WAY OF THE DRAGON
辰年を迎え、自らの画業も昇り龍になるよう祈願も込め、
「鯉の滝登り」から「昇り龍」に変身、出世するHidden Art「登龍門」が閃きました。
2024年1月31日
下図制作
山梨県身延町の紙漉き見学体験モニターツアーにご招待された時、山十製紙さんから頂いた「甲州西嶋手漉き画仙紙」を使って下図を描き始めようと思います。
信玄公のご利益にもあやかれそうで益々縁起が良く感じられます!
画仙紙の折り癖を反対側に折ったりして伸ばします。
やや青味掛かった松煙墨を薄く擦ります。
更に水を足し
掻き混ぜて、極薄の墨汁にします。
小、中学生の頃、書き初めの為に使ってた太い筆を、いつか日本画で使う時が来るかもしれないと思い、実家から持ってきてありました。
日本画、水墨画の為に、この筆を使うのは長い画業でも初めてです。
粗品で頂いた吸水性の悪いタオルを下敷きに使います。
バスタオルとしては使用感が劣っていましたが、吸水性の悪さは汚れが着きにくい長所として、水墨画制作時の下敷きとしては最適です(笑)。
一枚目。
昇り龍としての勢いを出したかったので、下図の一筆目は一筆描きで一気にアタリをつけようと考えた訳です。
一筆目は、蛇みたいに見えます。
二枚目。
今度は途中でグルンと一回転させて、拡がりが出るようにわざといったん画面の外にはみ出るように描いてみました。
三枚目。
一枚目と同じに蛇行の動きですが、よりうねりを大きくしました。
更に二筆、三筆と描き加え、太さを加えたら龍っぽくなりました。
こちらをアタリとして、下図制作に使うことにしました。
カーテンレールに洗濯バサミで吊るして干します。
乾かしてる間に夕食の買物に行きます。
一枚目、二枚目の試作品も干しておきます。
今後、墨の濃淡や滲み具合の試し描きなどに使えると思います。
完全に乾くと、ほぼ無色になりました。
薄墨の色でアタリが確認出来るというよりは、いったん水分を含んで皺になる事で、この上に描いていく龍のガイドラインになってくれそうです。
「化仏 不動明王〜大日如来」制作の為に特注で作ってもらった木製パネルの上に置き、パネルの長辺の長さに合わせ、画仙紙の余分を断ち切ります。
マスキングテープにて天地をパネル側面に留めます。
パネルの左側に寄せて貼ったのは、絵の左横に座って、右手を伸ばして横からも描きやすくするためです。
制作に当たっては常に先々の工程もイメージしながら進めていきます。
表の下図
表の絵の「鯉の滝登り」から描いていきます。
ネットから拾ってスクショした写真をプリントアウトして参考にさせて頂きます。
鯉の滝登りと、その後成長した龍とを組み合わせた縁起物の掛軸は日本画定番の題材ですが、
僕の Hidden Art では、明るい時は「鯉の滝登り」で、暗くすると「昇り龍」に変身し、鯉は龍の尻尾の中に隠れて見えなくするつもりです。
アタリを付ける時とは一転し、今度は鉛筆で下描きをしてから描いていきます。
僕は藝大に入学して以降、絵画制作は理系だなと実感しました。
学科で熱心に履修したのも
・美術解剖学(中尾先生)
・(絵具の)化学
・色彩心理学
・生物(三木先生)などでしたし。
画面の縦横比率を決めたり、構図のバランスを図ったり画面配置を分割するのは数学的だと思いました。
また、学生アルバイトから始めた美大進学予備校講師として、精神論だけでなく、パース(遠近法)や、美しく発色させるための彩色方など、理論的に分かりやすく生徒たちに伝える能力も発達し、それが翻って自分の制作にも活きてます。
高校生までは、白隠禅師などのお坊さんや、一茶、蕪村などの文人画家もいらっしゃいますから、絵は、なんとなく文系の情緒が必要かと思ってましたが、少くとも僕自身の画家として制作に役立つ能力は、観察力、分析力、計画性、発明、発見など、理系的な才能と研究に根ざしてると実感してます。
前置きが長くなりましたが、鯉(や龍)の鱗の配列パターンも僕は滑らかに整然と描きたいタイプなんです。
そこで、いきなり墨で描かず、鉛筆で鱗の配列パターンのガイドラインを描き、修正しながら整えていきます。
鉛筆でのガイドラインがある程度整ったら、薄墨でなぞり定着させます。
薄墨で定着させた斜めにクロスさせた線が乾いたら、和紙が毛羽立たない程度に優しく練りゴムを使い、縦に揃わせるガイドラインは消します。
薄墨のガイドラインは、まだ直線的な菱形の配列に過ぎません。
もう一つのポイントは、背中のハイライト部分は、光って見えるよう、濃墨で骨描きしないように、光らせるつもりの範囲を鉛筆で印を描いておきます。
菱形のガイドラインの上に、濃墨にて扇形にして描き、鱗にしていきます。
それぞれの鱗を隈取りし、
全体的にも隈取りを加えます。
本日はこれでおしまいにします。
2024年2月10日
蓄光顔料で描く隠し絵の龍を、表の下図に重ねて描き始めました。
題名の英語訳はブルース・リーの
「ドラゴンへの道」から拝借しました。
ちなみに僕の絵に込める信条の一つが「燃えよドラゴン」での
“Don’t think. feel ! ” 考えるな、感じろ!
ってセリフです。
屁理屈こねたウンチクで価値をゴリ押しする絵は、嫌いです。
僕は絵や音楽は、観た瞬間、聴いた瞬間、本能的に伝わるものが本物だと思ってます。
龍の顔は、今回はスピノサウルスに似せて描こうと思います。イラストは、昔同じ画廊に所属していた
小田隆さん(背景付き)他、
小学館の図鑑NEO 「恐竜」も参考に描いてます。
もちろん自筆の「雲龍図」も参考にしてます。
スピノサウルスは、「ジュラシック・パークⅢ」で主役の恐竜として登場しました。
この映画では、ティラノサウルスと陸上で闘うシーンがありますが、本来は陸上よりもむしろワニの様に水棲だったのではないかと推察されてます。
久し振りにこのDVDも観て、龍の顔の参考にしようとしようと思います。
宝玉を持った前脚は、自分で姿見の前で野球の球を持ってポーズして自撮りしたものを参考に描きます。
後ろ足は、「雲龍図」の時もそうしましたが、
コモドドラゴンの写真を参考に描きます。
(株)日本メール・オーダー社発刊
「アニマルライフ」デラックス版
「動物の世界」より
同じく
(株)日本メール・オーダー社発刊
「アニマルライフ」デラックス版
「動物の世界」より
鹿の写真をスキャンし、左右反転させて拡大、ひっくり返して、龍の角の参考に描きます。
僕は写実的な描写が持ち味なので、空想の動物でも、現実に存在する動物を参考に描きます。
鯉の鱗を延長させながら、龍の鱗を描き乗せて行く為のガイドラインのアタリをつけていきます。
竜巻(トルネード)するように上昇する様に描こうと思います。
なかなか過去の作品に無かった動きのアイディアだと思います。
定番の画題だからこそ、自分独自の表現を加えたいと思います。
こういうアイディアは、制作してないリラックスした時間にこそ思いつきます。
クリエイターは、傍から見ればボ〜っとしてるか、怠惰に飲んだくれてる時間にこそ閃きます。
少くても僕は、集中とサボりの OnとOff との切り替えを繰り返す事が、閃きの秘訣だと実感してます。
決してひたすら描き続ける「見た目も努力家」ではありません
遊びもサボりも仕事の内だと思ってます。
首の背中の鱗の配列パターンが怪しいので、明日以降描き直しすると思いますが、今晩はこれでおしまいにして、また明日以降!
2024年2月11日
裏の下図
表の下図は墨で描き、裏の隠し絵の骨描きは洋藍で描き、1枚の下図にてそれぞれの下図を同居させようと思います。
今日あらためて吟味すると、鱗の配列は、首の裏だけでなく下半身も怪しいと思いました。
基準となる背びれだけを、薄く溶いた洋藍にて骨描きします。
角を鹿の角の写真を参考に描き、首の裏も中心の基準となる背びれのみ薄い洋藍にて骨描きします。
何度か消して鱗の配列を描き直しますが、丸い胴体に沿った感じになりません。
プリントアウトしてあった鯉の写真に、
鱗の配列具合と、胴体の丸みに沿ったカーブの具合を確認しやすくするため、ロットリングにてクロスさせる補助線を描き込みます。
胴体の丸みを意識しながら配列の補助線を描き直します。
日本画は掛軸や絵巻物にする仕上げを想定し、本来薄塗りで描くものです。
西洋文化の影響から額装しての展示を想定し、次第に西洋画の様に厚塗りになりましたし、自分も藝大の学生時代と卒業後の10年間くらいは、額装での展示のみを想定し厚塗りの日本画を描いてきてました。
ところが、伝統的な日本画の軸装を依頼された時に、厚塗りだったために、しなやかに巻けない絵を描いてきた事を思い知らされました。
それ以来、プロの日本画家として、伝統的な屏風や掛軸の依頼に常に応えられる技術を身に着ける必要を感じ、本画を薄塗りで仕上げるためには、下図段階の修正で妥協しないという、伝統的な日本画の基本の本当の意味に納得がいきました。
何度も描き直して、納得ゆくガイドラインが描けました。
洋藍を更に溶かし加え、濃くします。
濃く溶いた洋藍にて、隠し絵の龍の鱗を描きます。
首の後ろの配列を整えるのも、何度も描き直しました。
鱗の骨描き完了。
今日の制作は、ここで力尽きました。
骨描きが乾いたら、練りゴムを転がして、下書きの鉛筆の線や汚れを取ります。
本日最終段階です。
制作後は、明日以降の資料準備をしました。
映画「ジュラシック・パークⅢ」ではなく、
ドキュメンタリー風に作られたBBC「プラネット・ダイナソー」のブルーレイを再生し、モニターをデジカメで撮影し、
龍の顔の参考に、スピノサウルスの顔をいくつかの角度から撮ったものをプリントアウトして用意しておきました。
写実的で真に迫った作風のクリエイターほど、他者によるリアルな造形物も参考にするものだと思います。
完全に自分が取材した素材だけで制作してる作家もいらっしゃると思いますが、自分の目で直接見ることの出来ない空想の生き物なら、他のクリエイターがいかにもそれらしく造形したものも参考にさせてもらうのは、当たり前の事だと思います。
本当は他のクリエイターの作品も参考にしてるのに、さも自分一人で創作した振りをしてるから、後で類似の作品が見つかった時に「盗作だ!」とか批判されてしまうのだと思います。
社会で生きてる以上、他者からの影響を受けない訳がありません。
僕は、クリエイターの盗作スキャンダルが報じられるたびに、プロのクリエイターとして
いやいや、完コピなら違法行為で犯罪になるけど、創作物に他作品の影響、参照無しに作れるものなど無いと断言致します。
真似、学びは、誰でもやってます。
大切なのは、正直に他作品へのリスペクトを公言し、
決して100%自分だけで創作したものだという嘘や虚勢を張らない、作家としての良心、姿勢こそが大事だと思ってます。
2024年2月13日
後脚の下描き
前脚の下描き
頭部の下描きをスピノサウルスの写真も見ながら描きましたが、しっくりきませんでした。
現状の角度が、頭頂部から見た角度ですが、
もう少し横顔の角度の方が、龍っぽい印象を出せそうだと、少し角度を変えてみました。
それに伴い、首を捻る角度も修正しようと思います。
アクリルガッシュに、ガンボージを少し混ぜて、青い骨描きの線を相殺して隠そうと思います。
アクリル絵具は乾くと耐水性に固まってしまいますので、ナイロン面相を使います。
いずれにしても、うっかり固まらせてしまわないように、使い終わったら直ぐに洗いますけどね。
黄色味掛かったホワイトにて青い骨描きを目立たなくすることが出来ました。
下図段階での描き損じと修正は恥ではありません。
むしろこの段階で、納得ゆくまで修正を繰り返すべきだと思ってます。
僕が、洋画ではなく日本画を選んだ理由は、複数の理由から総合的に判断したわけですが、
一番の理由は、僕が一番凄いと思い、好きで尊敬してる画家が、この「アレ夕立に」の作者
竹内栖鳳の画集で惚れ込んだからです。
好きな画家、尊敬する画家は、自分の成長と共に多少入れ代わったりしますが、現在も、今後もたぶん一生、僕にとっては世界で一番憧れ続ける画家だと思います。
このページで紹介されてる下図段階の修正の跡に、日本画の場合は、本画に入ってからは、もう迷いがない筆使いをするためにも、下図段階で妥協なく修正すべき事を学ばせて頂きました。
人物画のジャンルだけに限定すれば、
上村松園、鏑木清方など、もっと卓越した技量を持ち、評価の高い画家もいらっしゃると思いますが、
竹内栖鳳が凄いのは、風景画や花鳥画(動物画)など、何でも描けて、表現も南画風のおおらかな筆致から、西洋画の陰影や遠近法を感じる筆致まで、筆さばきが自在です。
軍鶏を描いた「蹴合い」は、静止した様な表現の多い日本画において、ダイナミックでスピーディーな動きを感じさせます。
嘴や脚はシャープに描きながら、羽ばたく羽は細かい事にこだわらず、即興的に描いてて、それが破綻せず1枚の絵として同居させられてる訳です。
こんな絵が描けるなんて、もう「神」です!
例えばピカソの「アヴィジョンの娘たち」では、比較的美しく描かれた女性と共に、アフリカの仮面から影響を受けて、その後キュビズムやフォービズムの表現に発展するデフォルメされた女性が同一画面に同居してます。
ピカソの変遷具合を説明するのに好都合な作品で、僕も面白い絵だとは思いますが、1枚の完成作品としては破綻した失敗作だと(僕は)思います。
エスキース(構想段階のスケッチ)の様な不完全な絵だと思います。
もちろんスペイン人なら、
世界で一番優れた芸術家は、ピカソだ!とかガウディだ!とか言って当然だと思いますし、
イタリア人なら
世界で一番優れた芸術家は、ダ・ヴィンチだ!
(または)ミケランジェロだ!って言うのが当然だと思うように、
日本人の僕は
世界で一番優れた芸術家は
俵屋宗達か、運慶、快慶か、北斎か、竹内栖鳳で、
中でも僕自身は竹内栖鳳が一番好き!って思います。
また薄く溶いた洋藍にて、少しずつ描いていきます。
いきなり輪郭を決める骨描きから始めるのではなく、人物クロッキーの時の様に、薄く隈取り(濃淡で陰影をつけること)をしながら、確信が持てた段階で、濃い色で骨描きを決める手順で進めます。
鱗の隈取りもしていきます。
後脚のボリュームは、網タイツの描写と同様です。
竹内栖鳳や、師匠の加山又造先生同様、描く対象を一つに絞らず、何にでも興味を持ち、色々な題材を描く方が面白いし、画家としての表現力が総合的に上がると信じてます。
エロい網タイツの描写も嬉々として取り組み、皮膚の鱗の描写によるボリュームの出し方も自然と会得したという訳です。
訓練、勉強だと思ったらとてもこんな面倒くさい描写する気になりませんよね。
本日はここまで。
2024年2月17日
蛍光ペンで稲妻を描きます。
群青棒を溶かします。
自宅アトリエから見える富士山を描きます。
富士山は360°いずれの角度からも写真を撮りためてありますが、東浦和の自宅アトリエから昇り龍になってやるぞ!という思いを込めて、この角度から見た富士山を描こうと思います。
蛍光ペンで描いた稲妻を避けて群青を塗っていきます。
下の方は滝を描きます。
洋藍と洋紅とを混ぜて、さっきより濃い群青を溶きます。
重ねて塗って空を濃くします。
滝の方も。
本日の最終段階です。
ちなみに明るい時、表の絵では、鯉と滝と富士山だけが見えてて、
暗くすると龍と稲妻が現れるという変化にしようと考えてます。
たぶん上野の森美術館での「日本の美術」が終わったあとは、今度は確定申告の帳簿付けの仕事に入ると思いますので、しばらくの期間この状態から進まないと思います。
2024年3月9日
やっと確定申告提出書類の作成が終了しましたので、気分を切り替えて「登龍門」の下図制作に移ります。
先ずはガンボージと洋藍とを混ぜて緑色を作ります。
本画の絵絹にトレースする時、見やすい様に、稲妻の輪郭をロットリングで描きました。
そして龍は青龍として、青く光る蓄光顔料で多くを描こうと思いますが、腹やいくつかのポイントは緑に光る蓄光顔料で塗り分けようと思います。
本画に写し取りながら彩色する時に塗り分けを分かりやすくするため下図段階で塗り分けます。
登り龍が突き抜ける雲は、裏彩色の濃淡だけで表現するつもりで、明るい時には見えない様にするつもりです。
今回は、1枚の下図に、表の絵と隠し絵の画像を同居させてますから、ややこしいですよね。
描いてる本人ですらそうですから。
洋藍(ベロ藍、プルシャンブルー)に
本藍(インディゴ)を混ぜて、より濃くした藍色で、
龍の描写をさらにハッキリさせます。
滝壺の飛沫をハッキリさせるため、滝の藍色も塗り重ねて本日の仕事はここまで。
やはり利益よりも必要経費が超過した赤字の帳簿付けの仕事はストレスです。
でも、黒字に転嫁した時に累計赤字を相殺して、せっかく待望の利益が出てきた出鼻を、税金でむしり取られないようにするため、この3年間の赤字申告をキッチリしておかないといけません。
たまに言ってますが、将来絶対に僕の絵の価値は上がると思います。
僕にとっては当面の活動資金を得る為にも
お客様になって下さる方にとっては、手が届く額である今のうちに買って下さった方がお得です!
というか、たぶん現実的に僕の作品が買えるのは、現在しか無いと思います。
今すぐご購入を決断されたなら、子々孫々まで、まだ世界的有名な画家になる前の佐藤宏三の作品の凄さを見抜いて購入したご先祖様として讃えられる事になると思います。
ご自身の生きた功績を、確かな証拠として手に入れませんか?
2024年3月10日
仮枠製作
「登龍門」を制作するための仮枠を作ります。
ホームセンターに材料を買いに行く前に、釘やネジの残りがありそうか確認し、図面も描いて木材カットの寸法が直ぐに計算出来るように準備します。
今回の確定申告で画材費の経費の三分の一は、
島忠ホームズ、東急ハンズ、ユザワヤ、アキバの電気部品店等で購入した工作部品が占めてました(笑)。
仮枠に丁度良い幅、厚みの角材を選んだら、そのサイズの角材を全て、水平な床に置き、表裏ひっくり返し在庫の中で、最も真っ直ぐな2本を選びます。
大きな節が沢山あるものは反りも大きかったりするので、見た目に節の数が少ないものや、節があっても小さな物を選ぶ事も大切です。
カットサービスに寸法を伝えてカットして貰って買います。
そうした方が切断面が正確に90度でフラットですし、何よりマイカーの軽自動車に収まる長さになるからです。
長い釘を打つ場所に、細いキリ、太いキリで順番にきっかけの穴を穿ちます。
一番最初に絹本用の仮枠を自作した時は、いきなり釘を打ったら、角材が割れてしまいました。
なので、細いキリ、太いキリと、段階的に穴を穿ちます。
木工用ボンドを塗ってから角材を合わせます。
木工用ボンド、長い釘、そしてL字金具の3通りの方法で固定します。
L字金具も養生テープで仮止めしてから、ネジ穴のきっかけを細いキリで穿ちます。
テーブルと椅子とでサンドイッチさせ、木枠を垂直に固定してから、釘を垂直に金槌で打ち込みます。
下の階の住人から苦情が来ないよう、釘打ち作業は日中のうちに済ませます。
アトリエの一角には他アーティストの小品を飾ってますが、やはりエロティックな作品が多いです(笑)。
反対側も垂直に立ててから木工用ボンドを塗り、
L字金具を当てて養生テープで固定し、ネジ穴も穿いてから、長い釘を打ち込みます。
この間に電動ドライバーの充電をしてます。
充電ドライバーはいつも久し振りにしか使用しないので、使う時にはたいてい充電不足です(笑)。
釘を打ち込んだ状態です。
※釘の打ち込み作業工程の写真を撮り忘れていましたので、後から撮影しました。
釘打ちを終えたら、電動ドライバーが使用可能まで充電出来てましたので、養生テープを両端から剥がしながら、両端から交互にネジで留めていきます。
大相撲中継を観ながらの、ながら作業です。
本日初日の横綱大関陣は、モンゴル出身力士が3人とも負け、日本人大関の2人が白星で幸先良いスタートでした。
別に外人ヘイトじゃないですよ。
日本人の正直で素直な思いとして、早く稀勢の里以来の日本人横綱が誕生して欲しいです!
今回はすき間テープを貼る前に、超強力な両面テープを貼ることにしました。
次にすき間テープを4辺の内側の長さに合わせてカットします。
すき間テープを貼りました。
内側にはめ込むパネルの着脱時に、スポンジ状のすき間テープが傷まない様に、上から養生テープでカバーします。
パネルをはめ込みます。
今回の作品の天地、幅のパネルはありませんでしたが、幅だけ合わせて、後はこのパネルを上下に移動させながら下図を本画にトレースしていこうと思います。
ちなみにこの縦長の画面をカバー出来るエロぞうスコープは現実的に無理ですので、初代エロぞうスコープを上下に動かしながら隠し絵の龍をご覧頂く展示方法を思いつきました。
展示場所の照明を真っ暗にする以外、エロぞうスコープでは龍の全貌を観ることが出来ません。
でも、その方が龍の巨大さが演出できそうですし、観客がご自分の意志でスコープを移動させながら覗く鑑賞法は、より観客参加型のエンタメを提供出来て喜んで貰えそうです。
表側から見るとこんな感じです。
今度、谷中得応軒でこのサイズに合わせた絹本を買って張り込めば、いよいよ本画制作の準備が整います。
2024年3月12日
絹本張り
開封後は冷蔵庫で保管してる糊を、お湯で塗りやすい濃度に溶かします。
絹本を仮枠に貼る時の濃度は、和紙の裏打ちの時に比べたらかなり濃い目にしてます。
正確に量ってはいませんが、
和紙の裏打ちの時は、糊1対水1くらいで、
今回は、 糊4対水1くらいで、
ほぼ原液の接着力を弱めずに、
糊刷毛で塗りやすくするために、必要最低限の水分を与えて溶かす感覚です。
今回は新しく作った仮枠ですので、貼り込む前に「捨て糊」を塗ります。
捨て糊1回目
捨て糊1回目塗った直後のアップです。
捨て糊1回目が乾いたところです。
1回目の捨て糊は、すっかり木目に吸収されてしまいました。
捨て糊2回目
捨て糊2回目を塗った直後のアップ
捨て糊2回目が乾いたところです。
今度は木目に吸収されず、表面で糊が固まった層が見られます。
これでいよいよ貼り込む為の糊が塗れる状態になりました。
絹を貼り込む為の糊を塗ります。
絹を貼る直前のアップ写真
一人で絹を貼る時は、先ず仮枠を壁に立て掛け、絹の下端を口で咥え、上端の両端を両手で摘み上げ、仮枠の上端に貼ります。
上端を仮止めし終わったら、口に咥えて浮かせておいた残りを両手に持ち替えて、上からゆっくり木枠の両端に接着させながら下まで仮止めの接着をさせていきます。
仮止めが終わったら、再び床に寝かせます。
右上に弛んだ部分が見られますが、仮止めですので、多少の弛みは、一旦その部分だけを剥がして、歪みを直して貼り直します。
いつも説明してますが、
絹本は、ドーサを引いたり、膠分を含む絵具で彩色を重ねるほど、縦糸の方がより縮みます。
ですので、縮む分を想定し、縦糸は緩く貼り、
横糸は、左右に引っ張りながら貼ります。
結果として横方向への皺が目立つ張り込みが出来れば、良い張り込みが出来た事になります。
(90度横から撮った写真です)
横方向へは左右に引っ張りながら張り込んだはずですが、天地の仮枠に接着させようとした絹本は、糊の水分を吸って一旦伸びます。
なので、天地の接着部分には弛みと浮きが見られます。
空瓶の腹でしごいて仮枠に密着させます。
天地だけでなく、左右の木枠との接着部分も全て空瓶でしごいて密着させます。
空瓶でしごいて密着させた後のアップ
仕上げに四隅に画鋲を刺して貼り込み完了。
余った分をハサミでカットします。
谷中徳応軒では、いつも注文した長さより少し長めに切り売りして下さるので、木枠の正確な天地の長さは 121cmでしたが、店頭では「120cm欲しい」と注文しました。
期待通り120cmより少し長く切って包んで下さってましたので、余裕で貼れました。
しかも、「ロールの余りが中途半端に残ったので、一緒に包んでおきますね」って仰って今回も40cmの長さの余りを下さいました。
小品または試し描き用として十分役立つ大きさがある貴重なプレゼントです。
ありがたく使わせて頂きます。
でも不思議な事に何故か僕が絹本を買う度に、余分を貰えます。
全長何mの絹本ロールから切り分けてるのか分かりませんが、そうそう毎回僕が買う度に余分が出来るのは、確率的にありえません。
前回、前々回等は、余分がどちらも60cmの長さを超えてましたので、「泥中に咲く」と「マリア観音」の2作は、購入した絹本じゃなくて、頂いた余分の絹本で制作出来ちゃってました。
まさか谷中得応軒の未亡人の美人女将が僕に惚れてる訳じゃ無いと思いますが
もしかしたら、様々な画期的な日本画を試しては発表してるのに、なかなか売上が伸びず苦労してる僕を応援するつもりで、さり気なく必要な画材をご支援してくださっているのかもしれません。
昨日も「佐藤先生の様な日本画家と我々日本画材店、絵具工房、筆工房等は業界全体が共存共栄ですもんね」ってお話ししてくださってましたから。
壁に立て掛けて一晩乾かし、
明日カラッと晴れたらドーサ引きしようと思います。
2024年3月16日
龍の骨描きと隈取り
アクリル絵具のホワイトで稲妻を明るくします。
目を入れます。
下図をスキャナーで取り込み、PCで左右反転させてプリントアウトします。
A4サイズ8枚に左右反転させたコピーを出力し、連結させて裏彩色用の下図とします。
透明シートを貼ります。
今回は画面の長さに足りないので、上下に移動させながら使おうと思います。
左右反転させた下図を貼ります。
裏にひっくり返します。
胡粉で骨描きと隈取りをします。
顔のアップ。
蓄光シートを差し込みます。
照明を消して胡粉の効き具合を確認します。
まだまだ被覆力が弱いので、胡粉による骨描き、隈取り仕事は何日も掛かると思います。
2024年3月17日
本日丸一日、裏からの胡粉による骨描きと、隈取りをしました。
蓄光シートを差し込み、
アトリエの照明を消せば、胡粉で描いたところの光が被覆され、暗く見えます。
結構、何度も重ね塗りしたつもりでしたが、まだ被覆力が弱いようです。
墨による骨描き、隈取りならば、簡単に光を遮断出来ますが、明るい時は見えなくて、暗くして初めて姿を現すようにするためには、胡粉を地道に重ねて被覆させる必要があります。
頭部のアップ
胴体。
龍が突き抜ける雲の下部ももう少し暗くなるように塗り重ねようと思います。
何しろ作業中は加減が分からず、乾いて夜にならないと、どの程度の濃さになったかの結果の確認が出来ませんから、薄めから始めて、少しずつ濃くしていく慎重さが必要です。
2024年3月20日
裏彩色 稲妻と龍
裏彩色用の左右反転下図を、位置を合わせて再び表側から貼ります。
裏側にひっくり返します。
本日は稲妻を輪郭線のトレース無しに、直接緑に光る蓄光顔料で描く手順から始めたいので、左右反転下図を透かし見ながらするための準備です。
緑に光る蓄光顔料で、稲妻と、龍の部分で緑に光らせる部分を塗ります。
暗室代わりのトイレで光具合を確認。
今回の作品は縦長ですので、狭いトイレの中では、上下半分ずつに分けてしか撮影出来ません。
下半分です。
背中は青く光る蓄光顔料で塗るつもりですが、腹は緑に光らせるつもりですので、腹側だけ塗りました。
下半分。
表彩色 鯉
さて、こちらは和紙に描いたオリジナルの下図を裏側から当てたところです。
下図を描いた和紙には裏側まで絵具が浸透してますので、裏返して置くと、まるで左右反転下図と見分けがつきませんね。
仮枠の内側にはめ込むパネルを、はめ込もうとしたら、キツくてはめられなくなってました。
仮枠の内径は上下左右3mmずつ、パネルより一回りゆとりを持たせたサイズで作り、内側にサッシ用すき間テープを貼ってましたが、そのすき間テープを剥がす事にしました。
下図の位置を合わせてマスキングテープで固定してから、
パネルをはめ込みます。
縦長のパネルでしたので中央部分の縮みが激しく、すき間テープを剥がす事で、ほぼピッタリはまりました。
この後、何度もはめたり外したりを繰り返す事になりますので、粘着力がやや弱い若草色の養生テープで固定します。
表側から下図を透かして見たところです。
表彩色は、画面下の鯉から描き始めようと思うので、裏からのはめ込むパネルをは、先ず下側に寄せてはめ込みました。
青墨(松煙墨)を薄く擦った薄墨から描き始めます。
ここでも、下図をそのままトレースするのではなく、ウロコの配列をより整えながら描いていきます。
油煙墨を濃く擦った濃墨まで、濃淡の異なる墨で鯉を描きます。
表彩色 空と滝
今度は裏からのはめ込むパネルを上に移動させて
富士山の稜線を境に棒群青を溶いた透明感のある絵具で空を塗ります。
富士山は遠方にある感じを出したいので、輪郭線の骨描き無しに、本画の彩色で見せようと思いました。
蓄光顔料で裏彩色した稲妻等に、棒群青が吸い込んで他より濃くなりそうで心配しましたが、その後乾くに従って濃淡差は少なくなります。
ここまでは大相撲中継を観ながらのながら仕事でした。
新入幕の尊富士(たける富士)、無傷の11連勝で新大関の琴の若を破りました。
強いですね!
僧帽筋(前から見ると首と肩の間の盛り上がり)の発達具合が、ポパイと呼ばれ千代の富士の天敵だった横綱隆の里を彷彿させます。
画家は視覚情報に鋭いので、筋肉のつき具合で、この力士は本当に強いと感じました。
次に滝の表彩色をしようと思います。
鯉の上にマスキングテープを貼り、輪郭線をトレースし、
カッターマットの上で切り、
貼り付け、波飛沫はミツワ・マスケットでマスキングします。
ここからの仕事は韓国で開幕したMLBの
パドレスvsドジャースの試合が始まり、
引き続き、ながら仕事です。
隠し絵の色も、発光の良い、緑、青、群青に限られます。
今回は表の色も、空の色、水の色と、青系のみになってしまいます。
葛飾北斎が、本藍(インディゴ)と、洋藍(ベロ藍、プルシャンブルー)とを使い分けた様に、
僕も空と富士山は棒群青、
滝は主に洋藍と
使い分けて、少ない色数でも微妙な変化を出そうと思います。
本日の最終段階。
表の絵柄は、この後、様子を観ながらもう少し描き加えると思いますが、基本的に「鯉」と「滝」と「富士山」だけのシンプルな絵にすると思います。
暗くするとこんな感じです。
この後、青く光る蓄光顔料と、群青色に光る蓄光顔料、光らない白色顔料とを使い分け、隠し絵の演出が腕の見せどころとするつもりです。
2024年3月22日
裏彩色 龍
青く光る蓄光顔料と、緑に光る蓄光顔料とを裏から彩色していきます。
日が暮れたので、先ずは裏側を向けたまま、アトリエの照明を消してみます。
表にひっくり返すと、絹本を通して裏彩色の蓄光顔料も光って見えますが、まだ輝度が足りない為、3回トライしましたが、全てこの様に手ブレ写真になってしまいました。
上下に分けてクローズアップ写真の方が細分までよく分かりますね。
まだ塗りムラがありますが、(爬虫類?)としての皮膚のリアリティーは、塗りムラがあった方が良いのかな?
とも思いました。
でも、輝度はもう少し上げたいので、さらに塗り重ねます。
表にひっくり返し、
再びアトリエの照明を消します。
先程より輝度が上がって、スマホでの撮影でも手ブレせずに撮影出来る様になってきました。
クローズアップ上部。
たとえば、肘を折り畳んだ内側の皺部分とかは、もっと暗い方が良いかもしれません。
今後は、輝度を増したいところは蓄光顔料を塗り重ね、反対に輝度を落としたいところは洗い取るなど、プラスとマイナスとの仕事両面が必要かも。
クローズアップ下部。
とりあえず、輝度が足りなく感じた部分に蓄光顔料を重ねて、今夜の仕事はおしまいにしました。
明日以降は、日が暮れてから真っ暗なアトリエでの仕事量が増えるかも。
また昼夜逆転の生活リズムになりそうです。
2024年3月23日
昨晩の投稿を終えて直ぐに、絵具が乾き切らない内に、肘の内側等、暗さをハッキリさせたい部分をお湯を含ませた筆で洗っておきました。
今朝、暗室代わりのトイレにて確認します。洗ったところが思いの外暗くなってました。
今度は取れ過ぎたところに再び蓄光顔料を重ねて丁度よい塩梅にしていこうと思います。
下半身も同様でした。
薄く溶いた蓄光顔料を塗り重ねると共に、少し輪郭をはみ出す様に塗り、水を含ませた筆で周囲にぼかします。
周囲にぼかしを入れた効果は、この写真ではあまり分かりませんね。
下半身の方は、スマホカメラがかなり明るく自動補正されて写ったので、ウロコの暗さが飛んでしまいましたが、後ろ脚の周りに明るさをぼかしたのが少し確認出来ると思います。
裏彩色 背景
富士山の周りの空と、麓に群青色に光る蓄光顔料を薄く塗り始めます。
トイレで確認します。
今度は山頂の冠雪に、青く光る蓄光顔料を薄く塗ります。
青龍を光らせる青い蓄光顔料と同じ絵具です。
龍より後方に、弱めに光らせたいので、薄塗りからスタートして様子をみます。
龍が突き抜ける雲の上部と、滝もぼんやり光らせたいので、こちらにも青く光る蓄光顔料を塗ります。
蓄光顔料を塗った裏側を向けたまま、アトリエを暗くして様子をみます。
表から見たところは、手ブレしないよう、三脚に固定して撮影します。
まだ何の絵具も塗ってない場所と、蓄光顔料を厚く塗り重ねたところとでは、絵絹を通して透けるところ、透けないところの差があるため、龍の存在が白く見えてますが、画面全体の裏彩色が進むにつれて、だんだん見えなくなっていく予定です。
三脚で固定した撮影で、弱い光も写せる様になり、龍の周りにぼかした光も確認出来るようになりました。
富士山頂の冠雪や、滝も、龍と同じ蓄光顔料ですが、薄く塗る事で、主役の龍より控え目な発光になってます。
画面上部のアップ。
画面下部のアップ。
今日も暗室代わりのトイレに持ち込みながら、昼間の制作がほとんどでした。
Hidden Art を開発し、制作を続けて3年以上経ちましたので、明るい時に塗っても、その濃度の違いで、光の強弱がある程度予測出来る様になってきたのだと思います。
2024年3月26日
青く光る蓄光顔料にて、龍が貫く雲の上部を塗ります。
昼間の制作でも、ブラックライトで照らすと、蓄光顔料が塗れてるところ塗れてないところの違いが多少分かります。
暗室代わりのトイレで確認します。
雲が水平に真っ直ぐ過ぎました。
多少、上下に波打たせました。
左側の絵皿には水晶末、
右側の絵皿には群青色に光る蓄光顔料が入ってます。
水晶末は、暗くしたい雲の下部や、富士山の裾野(赤く囲んだ部分)に塗り、
群青色に光る蓄光顔料は、空の下部と、雲の上部(青く囲んだ部分)に塗ります。
蓄光顔料も明るい環境では、ほとんど白く見えますので、昼間の制作風景では、どう塗り分けてるか訳が分かりませんよね。
青く光る蓄光顔料で飛沫を描きます。
雲の上部は群青色じゃなく、青く光る蓄光顔料しか塗ってませんでしたね
自分でも、ややこしくなります。
画面下部に群青色に光る蓄光顔料を塗ります。
雲の上部は、水を含ませた連筆で洗ってぼかしました。
表にひっくり返して、
日が暮れたので、アトリエ内で三脚を使って撮影します。
画面下部に群青色の明るさがほんのり入る事で、相対的に雲の陰が暗く見えます。
雲の上部は相変わらず固体の様ですので、更に洗ってぼかそうと思います。
雲の上部を洗います。
空の下部にも群青色に光る蓄光顔料を薄く重ね塗りし、上空に行くに従って闇を深くし、龍の顔が相対的により明るく見えるように対比させたいので、上空と、空の下部とがグラデーションになるよう、こちらの境目も洗います。
空のグラデーションが乾いたら、空全面の裏から水晶末を塗ります。
現在のところ、蓄光顔料を塗った部分が厚塗りで、塗ってないところが剝き身の絹本と、画面全体の厚みに差があります。
蓄光顔料による濃淡が決まってきた部分から、水晶末を塗り重ね、画面の絵具の厚みを平均化していくつもりです。
稲妻や角など、染料系絵具の表彩色を吸って濃くなってしまった部分もありますが、これは後から目立ち難くします。
龍の背景にも蓄光顔料または水晶末を裏彩色してきた事で、龍の白さと背景の白さが近づいてきて、明るい時にはだんだん見え難くなってきたと思います。
雲の上部を洗いぼかしたつもりですが、完全に乾いてから暗くして確認しないと、丁度よい塩梅になったかどうか分かりません。
急いては事を仕損じますから、本日はこれくらいにして続きはまた後日。
2024年3月28日
「登龍門」”THE WAY OF THE DRAGON”(暗)
現状です。まだ完成してません。
2024年4月3日
青く光る蓄光顔料を雲や、滝壺の飛沫に塗ります。
暗室代わりのトイレで確認。
隠蔽工作
表側から塗った群青棒の空色が、蓄光顔料で裏彩色してた稲妻部分などにだけ染み込み、濃くなってしまってたのを、表側から明るい時は白っぽく見える蓄光顔料を塗って隠蔽していきます。
稲妻はだいぶ目立たなくなってきましたので、続いて角も表側から蓄光顔料を被せ、濃さを周りの空色と同化させます。
富士山の冠雪部分も、表側からも蓄光顔料を被せ、少し明るさを増そうと思います。
またトイレで確認。
群青色に光る蓄光顔料を画面の下半分、滝の全面に塗ります。
群青色に光る蓄光顔料は、緑や青に光る蓄光顔料より、やや輝度が落ちます。
狭いトイレでは引きが取れないので、上下半分ずつしか写真撮影出来ません。
水晶末を裏面全体に塗ります。
水晶末が乾いたところです。
表側から確認します。
まだ、稲妻など、周囲より濃く見える部分があります。
クローズアップするとこんな感じです。
再び、表から蓄光顔料を稲妻部分に塗り重ね、周りと同化させます。
裏から見たところ。
表から見たところ。
日が暮れたら、アトリエの照明を消して、三脚にて画面全体像を撮影可能になります。
本日の最後に、また裏面全体に水晶末を塗ります。
水晶末の塗り重ねも、また明日以降数回重ね、裏面の絵具の厚みがそれなりになったら、裏から紙ヤスリで均そうと思ってます。
絵具の厚みを平均化する事で、掛軸に仕立てた後、しなやかに丸めやすくなるはずです。
ただし、絵具の厚みが薄いところがある内に、紙ヤスリで擦ると、絵絹を傷つけてしまうリスクがあるので、遠回りなようですが、一旦は画面全体をある程度の厚みの絵具の層で覆う訳です。
2024年4月10日
出掛ける前に稲妻の表彩色の蓄光顔料が白く盛られ過ぎたところを洗ってぼかそうと思います。
絹本に塗った絵の具をぼかす時は、縦か横かの繊維に沿ってぼかします。
斜め方向は繊維に引っ掛って綺麗にぼかせません。
最初は全て横方向に、水を含ませた平筆でぼかし、
次は全て縦方向に平筆を動かして、ぼかしたつもりでしたが、帰宅して乾いたのを確認したら、ほとんど洗う前と変わってませんでした。
蓄光顔料はいったん乾くと洗ってもなかなか取れない性質を、あらためて把握しました。
2024年4月11日
水晶末を裏面全体に塗ろうとしたら、半分ほど塗ったところで絵具を使い切ってしまいました。
大きいサイズを描くのは久し振りなので、必要な絵具の加減を間違えました。
水晶末を追加で、先ほどより少し多めに空摺りします。
続きを塗りました。
日が差し込んで日陰、日向で色の濃淡が違って写ってますが、裏面全面の水晶末が乾きました。
当初、この後、紙ヤスリで裏面全面を擦って均そうと予定してましたが、蓄光顔料の裏彩色は、ほとんど平筆で塗り重ねたので、それほど目立った凹凸は出来ませんでした。
水晶末の絵具層を重ねたとはいえ、絹本に紙ヤスリを当てるリスクを犯さなくても、たぶん掛軸としてスムーズに巻けると判断しました。
表側に向けるとこんな感じです。
膠液が少なくなってきたので、また新たに用意して、水に浸して冷蔵庫の中でふやかしておこうと思います。
蓄光顔料を使って、しなやかに丸められる掛軸用の膠は、
軟靭膠素10g:三千本膠6g:軟靭鹿膠2g=18gを 200ccの水に溶かします。
軟靭膠素はグミみたいに柔らかく、軟靭鹿膠は硬く接着力が強いという正反対の性質がありますが、ブレンド比率を変えながら制作を続け、接着力の強い蓄光顔料は、接着力では劣る軟靭膠素のブレンド比率を高めてもしっかり接着出来る事が分かってきました。
ドーサを引きます。
今回は明礬を加えてしっかり固めます。
蓄光顔料は他の絵具より水分や膠分を吸収しやすい性質がある事が分かってきました。
明礬で表面を固めないと、蓄光顔料を塗ったところだけが、表彩色の絵具を沢山吸って濃くなってしまうからです。
表側に引いたドーサが乾きました。
今度は裏からも明礬入りのドーサを引きます。
過去の Hidden Art で、表装した後、裏打ちの一部が剥がれて浮いてるのを目にしました。
表からは分からないので大丈夫ですが、原因を推測すると、明礬で固めてないと、表装後も蓄光顔料が裏打ちの糊を吸い取ってしまい、吸い取られた部分の裏打ち紙が剥がれるのだろうと思います。
Hidden Art は自分が先駆者なので、自分で最適な技法も探りつつの制作になります。
2024年4月12日
友人が出品してる展覧会を観に行く前に、表と裏からそれぞれ明礬を加えたドーサを引きます。
先ずは表から。
表からのドーサが乾いたら、裏からも引きます。
乾き待ちの時間に、家事や制作以外の用事を挟む様に日々の予定を組みます。
2024年4月14日
殺菌膠
2日前に水に浸して冷蔵庫で保管してた膠です。
どの膠も水を吸収し、ふやけてます。
この状態からなら容易に溶けます。
こういう段取りも経験を積むことで要領良くなります。
ボウルに水を張り、電熱器の上で湯煎で溶かします。
熱で膠が溶けたら撹拌します。
今度は電熱器の上に直接乗せて直火で煮ます。
藝大では習わなかったやり方です。
直火でぐつぐつ煮込みます。
30〜40分ほど煮込むと水分が蒸発して半分位になります。
電熱器のスイッチを切った後も、余熱で更に水分が蒸発し、3分の1位に減ったらカビ菌などが完全に消毒されるそうです。
再び元の容積まで水を足し、湯煎にて溶かします。
漏斗に木綿の手拭いをフィルターとしてセットし、溶かした膠液を注ぎます。
灰汁を濾し取った膠液を普段制作で使用してる
200cc入る膠鍋に移します。
一回り小さな膠鍋は、新たに膠を漬け込み溶かす為のバックアップ用途として重宝してます。
水晶末の裏彩色
水晶末を、前回の反省を生かし、一番大きな絵皿に溶かします。
裏側全体に水晶末を塗ります。
乾いたところです。
二度塗り目は、目視で、水晶末の着きが薄いところを狙って塗り重ねます。
全体が均一に白くなりました。
水晶末の裏彩色が完全に乾いたら、表からまた明礬入りのドーサを引きます。
ドーサが乾いた状態です。
この後、表から水晶末で微調整の彩色をします。
何処がどう変化したか興味ある方は、後の写真と見比べてみて下さい。
水晶末での微調整と、薄墨による雲下部の陰を入れます。
画面上部アップです。
日が暮れてきたのでアトリエの照明を消して、手持ちで撮影しました。
手持ちだと、やはり手ブレしてしまいますが、表彩色の微調整が、隠し絵に不都合な影響を与えてない事が確認出来ました。
慎重な表彩色
ガンボージと、少量の洋紅を溶かします。
滝を相対的に白く見せるためと、
青色ばかりの画面構成なので、青色を引き立てる為、補色の黄色味掛かった色を背景に薄っすら塗る訳です。
極薄から塗り始め、加減を見ながら少しずつ濃くしていきます。
洋紅を少し足して、先ほどより少し濃くします。
二塗り目です。
加減と言いましたが、墨や染料はいったん塗ったら洗っても取れません。
「加」は出来ても「減」が出来ませんので、薄塗りから始め、慎重に塗り重ねるという訳です。
更に洋紅とガンボージを溶かし、もう1段濃くします。
鯉の背中の光ったところが、白く抜け過ぎでしたので、鉛筆で鱗の当たりを描きます。
後日、薄墨で光った部分にも鱗を描こうと思います。
滝の背景だけでなく、鯉にも薄く橙色を塗りました。
棒群青を溶かし、空を塗ります。
雲にも少しニュアンスを加えます。
臙脂も膠で練って溶かします。
棒群青を溶かした絵具に臙脂を半分ほど加え、混ぜて少し濃くします。
空の上空は、これを重ねて濃くなるようグラデーションを掛けました。
更に、臙脂を全て群青に混ぜて濃くし、富士山の麓に塗ります。
滝や、滝の背景の橙色の上にも群青を薄く重ねて色彩の変化が唐突感の無いように馴染ませます。
本日はここまで。
2024年4月15日
棒群青にて上空を濃く、グラデーションを掛けます。
鯉の背中の光ったところにも鱗を描き込み、全体的に鱗のコントラストも上げました。
日中のアトリエでは、全然分かりませんが、青く光る蓄光顔料を刷毛で、滝壺付近に被せました。
蓄光顔料は粒子が粗く、筆や刷毛へダメージを与えてしまうので、持ってる刷毛で一番劣化してる物を使いました。
こちらも日中の写真では全く分かりませんが、
スパッタリングにて、蓄光顔料で滝壺の飛沫を散らしました。
飛沫は、暗くした時の方がより豪快になります。
暗室代わりのトイレで確認。
上部
下部
明るい状態の時より、細かい飛沫が増えているのが分かりますか?
先月のカレンダーがブラジル、アルゼンチンに跨がる「イグアス国立公園の滝」の写真でしたので、4月に入ってもこのままめくってませんでした。
今日、これも参考に滝を仕上げてから、やっと4月に変えられました。
滝に本藍をアクセントとして入れます。
本藍に岱赭を混ぜて更に暗くした色も差します。
鯉と滝のコントラストを上げて、相対的に富士山が遠くに見えるようにしました。
松の枝と葉
画面の一番上に松を入れようと思います。
「一夜城」の取材前に、松を入れようと計画してましたので、皇居東御苑の松の写真も何枚か撮っておいてありました。
龍の頭部を隠さない位置に写真を貼り、念紙を挟み、ボールペンでなぞってトレースします。
プロの画家のくせに、写真からトレースするのかよ!
って思う方もいらっしゃるかもしれませんが、こんな細かい描写、わざわざいったん下図を描く手間を挟むのは非合理です
写真からトレースしたって、こんな感じで、ただの無数の線に過ぎません。
結局最終的には写真を観ながら、いかにも松の実感を伴うよう、本画に描写する力量が必要です。
天然象牙色を溶きます。
トレースに使った写真は、赤ボールペンでなぞった為、新たに同じ写真をプリントアウトし、そちらを観ながら本画に描いていきます。
先ずは象牙色で松葉の明るいところを描きます。
次に墨で暗いところを描きます。
トレースした一本調子の線では松に見えなかったと思いますが、こうして明暗の変化をつけて描く事でリアリティが出てきます。
画面を立て掛けて構図全体を確認します。
象牙色と墨とを使い分けて、更にコントラストを上げていきます。
ガンボージを溶いた黄色を加えます。
ガンボージに洋紅を加え、実や枝を彩色します。
松の枝と葉とを配置するこの場所は稲妻の一部が隠れますが、透明感を保つ必要はありませんので、仕上げは岩絵具で彩色しようと思います。
本日の最終段階(明)。
完成状態が見えてきました。
本日の最終段階(暗)。
やや光り方の微調整が必要です。
微調整は表側から目立たない様に蓄光顔料を被せるつもりです。
2024年4月16日
絵具の名前が、そのものズバリの
天然松葉緑青(笑)。
でも、実際の写実的な風景画で松の葉の色を、この松葉緑青だけで彩色したためしは無かったと思います。
今回は写実的なというより、昔ながらの、やまと絵風な画風を装うので、思いっきりベタな色材を選びます。
最初溶くと、白っぽい灰汁が浮きますので、上澄みだけ捨てて、
再び膠を加えて練り直します。
天然緑青は接着し難い性質があるので、他の絵具より膠液多めに溶きます。
絹本の繊維に沿って、連筆にて、大まかに彩色します。
乾き切る前に、水を含ませた小さな連筆で余分にはみ出た絵具を洗い、ぼかします。
松葉の彩色は完了。
次は、染料系の群青を吸い込んで他より濃く見えてしまっている、龍と稲妻の隠蔽工作に入ろうと思います。
隠蔽工作と微調整
明るいところでは白っぽく見える蓄光顔料を、濃くなってしまっているところにピンポイントで塗って、見た目の明るさを周辺に近づけます。
乾いてくると白く塗り過ぎたところも見えてきます。
左手でスマホカメラのシャッター、右手で連筆を持って写したので、連筆本体がはみ出して影しか写ってませんが、水を含ませた連筆で、濃すぎた蓄光顔料を洗い馴染ませます。
本日の仕事は蓄光顔料の濃淡の微調整が主になると思ってましたので、昼間は寝て過ごし、夜のために体力を温存しておきました
さて、先ずは、富士山の稜線で首が切れてしまってるところの修正をします。
首の途中の暗くなった部分に、表側から緑に光る蓄光顔料を被せます。
写真右下が筆先です。
蓄光顔料は、細かな部分も、尖った面相筆ではなく、平筆を使うのが凹凸を抑えた彩色が出来る事が分かってきました。
次に下半身。
滝と重なったところと、そうでないところがツートンカラーのようにクッキリと明度が変わってしまってます。
青く光る蓄光顔料を表側から暗い方だけに塗り、滑らかに繋がるように整えます。
こちらも左手でスマホカメラのシャッターを切ったので手ブレ写真になってしまいました。
先ほど明るさを復活させた首輪の下の胴体を暗くして、相対的に宝玉と稲妻を明るく見せたいと思います。
また、龍全体の色のイメージは「青龍」に見せたいので、青く光る蓄光顔料より、腹側に塗った緑に光る蓄光顔料の光は控えめにしたいとも思いました。
首輪から下の腹の上に水晶末を被せて発光を抑えました。
宝玉を持った右腕の上にシルエットで見えてるのが水晶末を含ませた平筆です。
今度は手ブレしないように、平筆は足の指ではさみ、右手でシャッターを切りました
鯉に臙脂や紫を彩色しました。
画面上部の松葉の発色が目立ち、主役の鯉が地味に見えてきたので、赤味を加え、主役復権させたという訳です。
青系の色が大半を占める画面構成ですから、少しでも赤味を加える事で一番目立つ存在になります。
龍への変身を考えた時に、鯉に透明感を保つ必要があるので、薄塗りでも目を引く赤味を加えたという訳です。
だいぶ完成に近づいてきました。
滝の後ろの黄色っぽい背景が綺麗過ぎます。
主役の鯉を目立たす為に、ここの色調も抑えようと思います。
ちなみに、暗くした時のバランスはほぼ完成だと思います。
滝の後方の黄色っぽい背景に、紫を薄くして被せます。
乾いたら様子を見て、足りなければまた薄く塗り重ねようと思います。
滝の後方の背景に薄紫を計4回ほど塗り重ねました。
松葉緑青ももう一重ねして、余分を洗ってぼかします。
表向きの絵が乾いたところです。
暗くして全体のバランスを確認します。
やはり上半身の腹の緑が明るすぎなので、
再び腹に水晶末を塗り重ね、発光を弱めました。
相対的に宝玉と稲妻が明るく見えます。
表側に明礬入りのドーサを引きます。
表側に引いたドーサが乾いたら、
今度は裏側を、膠液で余分な裏彩色の水晶末を洗い取る仕事をしました。
ヤスリ掛けはしない事にしましたが、掛軸として丸めやすくするために、なるべく裏彩色は薄く平滑に心掛けます。
水ではなく膠液にて洗う事により、乾燥した後はより水晶末の定着が安定するという訳です。
乾いたら、画面を180°回転させて、反対側からも同様の仕事をします。
2回目はほとんど取れる水晶末は無くなりました。
2024年4月17日
画面の矩形を囲んでたマスキングテープを剥がします。
龍の頭部と稲妻が他より濃く見えてしまってるので、
今日もまた表側から昼間は白っぽく見える蓄光顔料を塗って、周辺の明るさと馴染ませます。
蓄光顔料が乗り過ぎて白くなり過ぎたところは洗って馴染ませます。
隠蔽工作にはデリケートな加減が必要です。
表側から明礬入りのドーサを引きます。
ドーサを引いて乾いたら、また龍の頭部と稲妻が濃くなってしまいました。
やはり蓄光顔料は膠を良く吸収するので、膠分を他より多く吸収した分、他より濃くなってしまいます。
また同じように蓄光顔料を上から被せて周辺と明度差を無くしますが、もうドーサを表側からは引かない事にします。
蓄光顔料を塗り重ねていきます。
まだまだ完璧に隠蔽出来てません。
だいぶ隠蔽出来てきました。
これならぱっと見には龍や稲妻の存在には気づかれないと思います。
斜めから角度を変えて観ると、蓄光顔料を塗ったところの方が明るく見えます。
正面から見た時のみ、下の暗さと上から塗った明るさが相殺されて見えるという訳です。
Hidden Art の技法のアイディアは、思いついてみれば、誰でも思いつきそうな単純なアイディアですし、制作手順も隠さず投稿してます。
実用新案登録は、あくまでも最初にこの技法を思いついたのが自分であるという名誉を守る為で、全然真似て貰っても構いません。
ただし、表側の絵と、裏側の隠し絵と、どちらも絵画作品としてのクオリティを高く保ちながら、両立させる技術は繊細で、手間が掛かります。
僕自身は画家として、投打両方ともトップレベルで両立させられている大谷翔平選手のようだと思ってます。
僕と同じクオリティで真似できる画家がいるとは思えませんので、制作過程を全て明かす事に何の不安もありません。
逆に、これだけ繊細に手間を掛けて一点一点を制作してる事を知ってもらい、販売価格にも納得して頂くため、苦労してる経過も全て隠さず投稿してます。
表側も完成したので、最後に裏側に明礬入りのドーサを引き、完全に表面を固め、表装する時の裏打ち糊を蓄光顔料が吸い込み、裏打ち紙が剥がれる心配を無くします。
そういう意味では裏彩色のドーサ引きの方が大事と言えますが、Hidden Art初期の制作で、裏側からばかりドーサを引くと、裏側の方が縮み剥落するという苦労も経験済です。
沢山のトラブルを経験し、原因を推察し、改善策が進化していきます。
ドーサ引きに関しては、表から裏から(畑中葉子さんの放送禁止歌謡のタイトルみたいですね)交互に引き進めるのが両面の収縮率を同じにして、剥落を防ぐコツです。
それにしても、いつの間にか放送禁止歌謡という行き過ぎたコンプライアンスが横行する様になってしまったんですね。
道理で最近歌詞が良くも悪くも引っ掛かる歌が聞こえてこない訳だ。
言論統制、言葉狩り、表現の自由を奪う、悪しき風潮だと思います。
表現者として、今後も問題作になりそうな題材こそ、表現の自由を守る為に制作し、闘っていこうと思ってます。
落款
ダミーの印を置いて落款の位置を決め、
金泥にて署名を入れます。
印矩の位置を決め、
ダミーの印を退かして、
印を押します。
一回押しただけでは印泥のつきが薄かったので、印矩の位置を固定したまま、3回押して濃くしました。
印矩を発明した方、ナイスアイディアです!
印泥を押した後、天然珊瑚末13番をまぶし、余分な油分を吸い取らせます。
絹本の木枠接着部分を湿らない様に保護してたマスキングテープの一部も剥がしてから、筆で掃いて珊瑚末をケースに戻します。
金泥に熱湯を注ぎ撹拌し、膠分と金泥とを分離させます。
木枠との接着部分を保護してたマスキングテープを全て剥がします。
金泥で書いた署名が乾いたようですので、
仕上げに瑪瑙ベラで擦って光沢を出します。
金泥だけが皿の底に沈んだので、
上澄みを捨てます。
完全に水分を捨てようとすると金泥まで捨ててしまう事になりますから、あとは水分が蒸発仕切るのまで放置し、完全に水分が蒸発したら蓋を乗せて絵皿に埃が入らないようにします。
完成
昨日、フィレンツェに出品してた
「煩悩 desire」が帰ってきました。
今回仕上げた「登龍門」も、いずれ表装します。
二幅並べると、あらためて「登龍門」の大きさが分かると思います。
最近はエロぞうスコープに収まる10号以内のHidden Art 作品ばかり描いてきましたが、そろそろ大きな作品を描きたくなってました。
逆に初代エロぞうスコープの様な軽くてコンパクトなスコープを手に持って、鯉から上昇していく龍を追いかけるように鑑賞してもらえばいいや!って思いつきました。
エロぞうスコープでは全貌が見えず、部分を切り取った鑑賞しか出来ない事で、逆に龍の巨大さを演出出来るかもしれないと思いました。
ゴジラやジュラシック・パークの映画のカット同様に。
迫力を感じさせる為には、やはり画面サイズの大きさは必要です。
大作は価格が高くて売れにくいと言って、小さなサイズの絵ばかり描いていてはスケールの小さな画家に留まってしまうと思います。
高額な大作をポーンとお買上げ頂けるお目の高い個人、法人のお客様が現れる事を期待して、今後もスコープに収まらない大きめの Hidden Art を描いていこうと思います!
天才、佐藤宏三をご支援して下さる個人、法人、いつでも大歓迎で募集中です!
どうぞよろしくお願いします
「登龍門」“THE WAY OF THE DRAGON”
明
中
暗
2024年4月20日
四隅を留めてた画鋲を抜きます。
連筆で木枠との接着部分を湿らせ糊をふやかします。
剥がします。
剥がし終わりました。
タオルの上で乾かします。
画面と糊代部分は伸縮具合が異なるので、糊代部分を付けたままだとフラットになりません。
糊代部分が乾いたらハサミで断ち落とします。
すると画面がフラットになります。
丸めてケースに入れます。
粒子の粗い蓄光顔料を塗った作品ですが、自分の予想以上にしなやかに丸まってくれました。
だいぶ蓄光顔料の扱いが上達してきたと実感しました。
軸装するのに何の不安も無い事が確認出来ましたが、軸装に預けていったん手元を離れる前に、営業でこの作品を使うつもりです。