真菰和紙 水張り
Stretching “Makomo Japanese paper”

日本画家 佐藤宏三「八代将軍肖像画」Portrait of the Eighth Shogun 制作準備

新作用に絹本と、真菰和紙とを木枠に張りました。

絹本は、いつもの要領で、ドーサを引くと縦糸が縮むので、縦方向はわざと緩く張りました。

真菰紙は、初めて使います。
和紙の風合いを活かす為、表側からの厚塗りを避けるため、裏彩色が出来るよう、パネルでは無く、木枠に張ってみましたが、結論は失敗でした。

日本画家 佐藤宏三「八代将軍肖像画」Portrait of the Eighth Shogun 制作準備

真菰紙(葉の繊維)は、弱く、水分が蒸発して収縮するとき破けて皺が入ってしまいました。

茎の繊維で漉いた真菰紙はもう少し丈夫そうでしたが、葉の繊維で漉いた真菰紙は弱いのが判りました。

本格的な制作に入る前に分かって良かったです。

日本画家 佐藤宏三「八代将軍肖像画」Portrait of the Eighth Shogun 制作準備

木枠に糊付けした部分を湿らせ、糊をふやかします。

日本画家 佐藤宏三「八代将軍肖像画」Portrait of the Eighth Shogun 制作準備

剥がすとき、何箇所が破いてしまいました。

これは試し描き用の紙として使おうと思います。
質感が面白いのと、神聖な材料なので、なんとかこの紙の性質を知り、使いこなせる様にしたいと思います。

日本画家 佐藤宏三「八代将軍肖像画」Portrait of the Eighth Shogun 制作準備

もう一度湿らせ、乾かす事で水張りの時に出来た皺を消そうと思います。

常にトライ&エラーを繰り返し、新たな表現方法を模索していきます。


日本画家 佐藤宏三 真菰和紙水張り

前回、葉の繊維を漉いた真菰和紙(左)は、水張りの張力に耐えられず端が破れてしまいました。

今度は、茎の繊維を漉いた真菰和紙(右)に、楮で漉いた和紙を裏打ちして再挑戦してみようと思います。

茎製の方が丈夫そうに見えますし、裏打ちすればさらに強度が増すと思います。

真菰和紙そのものが、大阪府泉佐野市の紙漉き
明松(かがり)政二さんの新発明ですし、
それに日本画を描くのも、僕がこの世で初めてだと思いますので、やってみないと分かりません。

ただ、この粗い風合いは、絵肌として利用してみたい魅力があります。

日本画家 佐藤宏三 真菰和紙水張り

M10号と、P8号と2枚同時進行します。

パネルを置いて、一回り大きなサイズに紙を切り揃えます。

日本画家 佐藤宏三 真菰和紙水張り

M10号のパネルには既に下貼りしてありましたので、P8号のパネルだけ、下貼り用の新鳥の子紙を切り出します。

日本画家 佐藤宏三 真菰和紙水張り

新鳥の子紙の裏面全体に、煮糊アク止め安全糊を塗り

日本画家 佐藤宏三 真菰和紙水張り

パネルを伏せて乗せます

日本画家 佐藤宏三 真菰和紙水張り

表にひっくり返し、パネル側面にも糊を塗ってから

日本画家 佐藤宏三 真菰和紙水張り

側面も密着させます。

一晩寝かせ、完全に乾いたら四角に余った紙を切り取ります。

日本画家 佐藤宏三 真菰和紙水張り

真菰(茎)和紙を、一回り大きなパネルの上に拡げ、裏面に糊をしっかり塗ります。

日本画家 佐藤宏三 真菰和紙水張り

垂直気味に立て掛けてから、裏打ち紙を水で湿らせて貼り、撫刷毛でしっかり密着させます。

ドーサ引きやパネルへの水張りは、また明日以降。


日本画家 佐藤宏三 真菰和紙水張り

裏打ちした和紙の糊代部分を水で湿らせ、糊を溶かします。

日本画家 佐藤宏三 真菰和紙水張り

パネルから剥がしました。

ちなみに昼間はメジャーリーグ中継を観ながら、
夕方からは大相撲中継を観ながらの、ながら作業です。

描き始めて集中すると、TVからの音声は耳に入らなくなりますが、こういう下準備作業の時は、観たい対決場面は見逃しません😊

日本画家 佐藤宏三 真菰和紙水張り

ドーサを引きます。

日本画家 佐藤宏三 真菰和紙水張り

引いた直後は、タオルハンガーの上で乾かし

日本画家 佐藤宏三 真菰和紙水張り

ある程度乾いたら外に吊るして完全に乾かします。

日本画家 佐藤宏三 真菰和紙水張り

以前、真菰農家の苗を抜く作業を手伝った時に頂いた真菰です。

何度か張ってた水の水位を下げてしまった事があり、葉の一部は枯らしてしまいましたが、全滅は免れ、頂いた時は40cmくらいだったのが、1メートルくらいまでは成長させられてます。

日本画家 佐藤宏三 真菰和紙水張り

真菰和紙と生の真菰との一緒の写真です。

日本画家 佐藤宏三 真菰和紙水張り

昨日、新たにパネルの下貼りをした新鳥の子紙が完全に乾いたので、四角の余った紙を切り取ります。

日本画家 佐藤宏三 真菰和紙水張り

下貼りを終えたパネルの用意も完了です。

日本画家 佐藤宏三 真菰和紙水張り

外に干して乾いた真菰和紙の上にパネルを置き、余分な端を切り取ります。

日本画家 佐藤宏三 真菰和紙水張り

水刷毛(右下)を使って、縦横に格子上に必要最低限の水分を引きます。

水刷毛は、いったん水に浸した後、ボウルの上で(茹でたラーメンの湯切りのように)水を切ると、櫛の様に隙間の開いた刷毛跡になります。

たっぷりの水分を引いてしまうと、その分紙が膨張し、水張り後に乾燥し縮んだ時に、伸縮差が大きくなり、破れるリスクが高まります。

日本画家 佐藤宏三 真菰和紙水張り

水張りが終わった直後です。

乾燥後も皺が取れない四角以外は、あえて少し皺が残るくらい、緩めに張りました。

完全に乾けばピーンとフラットになるはずです。

日本画家 佐藤宏三 真菰和紙水張り

完全に乾いたところです。
今回はどこも破れる事なく完璧に水張り出来ました。