空想歴史人物画「信長〜ジョルダーノ」
Fantastic historical portrait “Nobunaga to Giordano”
信長は本能寺から逃れ、ローマに渡り、ジョルダーノ・ブルーノという修道士として第2の人生を過ごしたという、義経チンギス・ハーン説のような都市伝説を知りました。
詳しくは「信長 ジョルダーノ・ブルーノ」で検索してみてください。
ベタなアイディアですが、蓄光顔料を使った隠し絵画で、信長からジョルダーノ・ブルーノへ変身する作品を描いてみようと思います。
2023年7月10日
信長トレース
信長の肖像画を拡大し、トレースします。
ジョルダーノ・ブルーノの肖像画をPC上で左右反転させ、信長の肖像画と重ねてみましたら、似てますが、やはりピタリとは重なりませんでしたので、オリジナルの信長像を、少しジョルダーノ・ブルーノとミックスさせて描いてます。
ジョルダーノ・ブルーノ像を左右反転させたものを見ながら、鉛筆で陰影や髪の毛などを描きます。
ジョルダーノ彩色1
緑に光る蓄光顔料にて、顔を塗っていきます。
最初は照明下で、鉛筆でつけた陰影部分を塗り残し、明るい部分から塗り始め
途中からアトリエの照明を消して、濃淡の具合を見ながら塗り重ねていきます。
真菰の粗い繊維は、蓄光顔料が引っ掛かりやすく定着が良さそうです。
次に髪の毛の輪郭を見せるため、群青に光る蓄光顔料を背景に、
青く光る蓄光顔料を衣装に塗ります。
背景と衣装は、明日以降また塗り重ねます。
本日はここまで。
画面のアップです。
「もっと真面目な絵を描けよ」というご批判を内心お持ちの方もいらっしゃるかもしれませんが、僕は絵の制作で生計を立ててるプロですから、自分の新技法を世の中に広める作戦として、多くの人にインパクトを与え、噂が拡がるよう、ウケを狙って描いてます。
画業と生活とを賭けた、大真面目で本気の制作ですので、けっして気軽に茶化したり、ご批判されませんようお願い申し上げます。
2023年7月12日
本日の仕事に取り掛かる前の状態です。
真菰和紙の生成り色が下地にあるので、明るいところで見ても、蓄光顔料を乗せたところが分かりやすい状態です。
蓄光顔料による彩色が一段落したら、全体に水晶末を塗って、明るいところでは隠し絵が分からないようにするつもりです。
スタート前に、暗室代りのトイレで現状の発光具合を確認します。
顔はある程度塗れているので、まだ足りない背景の群青と、色の付きが粗い、衣装の青く光る蓄光顔料とを塗り重ねようと思います。
衣装と背景とに、それぞれ青と群青とに光る蓄光顔料を塗り重ねました。
トイレで確認します。
衣装の皺のエッジが硬かったり、まだ蓄光顔料の乗りにムラがあります。
ぬるま湯を平筆に含ませて、塗りの盛り上がり過ぎたところを洗い、あまり塗れていなかったところに均していきます。
この技法を開発した初期は、紙ヤスリで均してましたが、何度か制作してる内に、乾き切るまえに洗いながら滑らかに均すこの方法を思いつきました。
緩く張った真菰和紙なので、水分を吸って伸び、緩く画面が波打ってきましたが、それだけゆとりある水張りが出来た証拠で良い事です。
トイレで確認します。
衣装のムラがだいぶ均されてきました。
背景は、信長状態でも、ジョルダーノ・ブルーノ状態でも、燃え盛る炎として表現しようと考えてますので、現時点での色ムラが、すでに炎っぽくて良い感じです。
だいぶ乾きました。
水分が蒸発すれば、画面はまたフラットに戻ります。
乾いた状態も、トイレで確認します。
今晩はクロッキー会に出掛けるので、本日の制作はここまで。
2023年7月14日
信長も、ジョルダーノ・ブルーノに近づけて描いたつもりでしたが、日本人の信長の骨格とミックスされ、ジョルダーノの顔のバランスが悪くなってしまいました。
パッと見、二人の肖像画は似た印象でしたが、実際に二人の顔を、重ねてみると、鼻が高いとはいえやはり日本人の骨格、プロポーションと、西洋人のそれとの違いを感じました。
じっくり見比べるほどに、共通点よりも相違点が見えてきました
鉛筆で、微妙にジョルダーノ側に近づける修正を銜えます。
天然象牙色を溶きます。
鉛筆でつけた陰影が、明るいところでも暗いと、表の信長の肖像画から立体的な陰影がついて見えてしまいます。
立体的な陰影は隠し絵でジョルダーノに変身した後のみにしたいので、鉛筆の上から象牙色を被せます。
表の絵は平面的な大和絵風、そして暗くした時は、
裏の絵は立体的な西洋画風に変化させたいと思います。
暗くして確認します。
緑に光る蓄光顔料で、瞼を数ミリ上げたり、眉間や目の下の隈の陰影を弱めたりします。
修正前は目元の印象が病的でしたので(笑)
骨格的な修正があまり大きく出来なくても、目元の印象を良くすると少し美男子になります。
健康的に見せるため、いったんはほっぺや顎を数ミリ膨らませたりしましたが、(西洋と日本との中間の)中東の人の顔立ちになってきました(笑)。
西洋人は、むしろ額が高いので、ほっぺや顎のラインは元に戻しました。
青く光る蓄光顔料で、衣装と、髪の毛の光ったところを塗ります。
うねった髪の毛も西洋人の特徴です。
最後に頭髪のシルエットが分かりやすくなるように、背景に群青に光る蓄光顔料を塗って本日の仕事はおしまいにします。
照明を消すとこんな具合です。
左が整形前、右が整形後。
微妙な修正を積み重ねて本日一日の成果です。
2023年7月15日
水晶末 下地造り
裏描写を隠すために、いったん画面全体に水晶末を塗ろうと思います。
その前に裃の家紋の輪郭線を描き起こし
マスキングテープを貼り
トレースしておきます。
カッターマットの上に貼ってキープしておきます。
これは後日使います。
水晶末を空摺りします。
最初は蓄光顔料で塗られて無いところから水晶末を塗り始め、最終的には蓄光顔料を塗った上も含め、画面全体を水晶末で塗り潰します。
水分を吸って真菰和紙が波打ってます。
乾かす間に靖國神社みたままつりに出掛けます。
帰ってきて、完全に乾いた状態です。
水晶末が被ってますので、ぼやけて光ります。
いったん紙ヤスリで擦ります。
この工程を挟みたかったので、和紙の表面が傷まないよう、蓄光顔料を塗ってない部分も含め、全体に水晶末を塗った訳です。
紙ヤスリで擦った後、叩き落とした絵具の粉です。
水晶末はもちろん、厚く盛られ過ぎた蓄光顔料も一緒に削り落とされた訳です。
画面に残った粉塵は、直接掃除機のブラシヘッドを当てて吸い取ります。
暗くして確認します。蓄光顔料の描写がぼやけ、発光も暗くなりましたが、この後、あらためて重ね塗りをしていく下地になります。
ドーサ(滲み止め)を引きます。
連筆の継目が出ないよう、一塗り目は、わざと継ぎ目を離して引きます。
(日本画経験者にしか分からないマニアックなテクニックかもしれません)
一塗り目が乾いたら、画面を180度ひっくり返し、反対側からもドーサを引きます。
これが乾いたら、かなり不均一だった真菰の手漉き和紙の厚みが均一化され、今後の制作がしやすくなると思います。
2023年7月17日
ジョルダーノ彩色2
蓄光顔料にてジョルダーノ・・ブルーノを明るく、滑らかになるよう塗り重ねました。
また、昼間寝て、夜中描く昼夜逆転の生活リズムになってしまいます
まだ完全に乾いてませんが、アトリエの照明をつけるとこんな具合です。
蓄光顔料は各色共に明るいところでは白っぽい色をしてて、暗くした時に、緑、青、群青などの色で発光します。
2023年7月19日
この状態が前回まで
明るいところで見るとこんな具合です。
紙ヤスリで均します
こんなに余分が取れました。
盛っては擦り、盛っては擦りで、材料費が勿体なくも感じますが、擦り落とした顔料は、
緑、青、群青に光る蓄光顔料と、水晶末とが混ざってしまってますから、絵画材料としては再利用出来ません。
粗い蓄光顔料で滑らかな表現を求める為には、この工程を地道に繰り返すしか、今のところ方法が見つかりません。
擦り落とした段階でも発光具合を確認します。
描写はぼやけましたが、顔はもっとハンサムで、強い意志を感じさせる表情に微修正したいので、いったんボケてくれて丁度よいです。
掃除機のブラシヘッドで画面の粉塵を吸い取り
ドーサを引きます。
乾いたら、画面を180°回転させ、反対側からもドーサを引きます。
凹凸の激しい真菰和紙の繊維の間に蓄光顔料を埋め込み、均していく基礎工事とも言える工程を兼ねてます。
ちなみにオリジナルの織田信長公像は、竹の繊維で漉いた「竹紙」に描かれたと耳にしてます。
友人画家でもっぱら「竹紙」に描いてる画家がいて、僕も彼の作品を1枚購入してますが、かなり凹凸のある紙で、それが良い風合いになってます。
あえて粗い紙に描く事で歴史の風格を感じさせる事が出来ます。
ドーサを引く事で、掃除機では取り切れなかった水晶末や、各色混ざった蓄光顔料の微粒子が拭い取られ、再びクリアに見えてきました。
天然象牙色で発光を抑えたいところを塗ります。
水晶末と違ってこの絵具は不透明なので、塗り重ねるほど発光段階では黒に近づきます。
ちなみに象牙色とは色名だけで、たぶん牛など食料用家畜の骨が原料だと思います。
微妙ですが、修正されてきてます。
今度は再び緑に光る蓄光顔料にて明るいところを微修正します。
顔のアップ(明)
顔のアップ(暗)
明るくしたり、暗くしたりを繰り返しながら、蓄光顔料の明度を調整し、ハンサムにしていくのは地道でデリケートな仕事になります。
かつ、キリスト教に仕える修道士でありながら、地動説の方が正しいと譲らず、最後は火炙りの刑に処されてしまう意志の強さを感じさせる表情にしたかったので、だいぶ完成イメージに近づいてきました。
2023年7月20日
青く光る蓄光顔料で衣装を
群青に光る蓄光顔料で背景を彩色します。
衣装と背景も明るくなってきました。
後半は衣装の彩色に使っていた青く光る蓄光顔料を、炎を描く様に、背景にも塗っていきました。
表の信長の背景も炎を描き、
ジョルダーノ・ブルーノに変身した後も、
やはり最期は炎に包まれる絵にしようと考えてます。
2023年7月21日
水晶末 隠蔽工作
昨夜の仕事が完全に乾き、日中の紫外線をたっぷり吸収したのを暗室代りのトイレに持ち込んだら、こんなに光ってました。
燃えるジョルダーノ・ブルーノ
水晶末を空摺りします
象牙色で描いた陰影部分が他より暗いのを、
水晶末で隠蔽していこうと思います。
象牙色は本来もっと明るい色なんですが、鉛筆の粉や、面相筆に洗い切れず残っていた墨が混じって少し暗くなったのだと思います。
昨夜の仕事は膠で完全に固まってると思いますので、今日の仕事に混ざって暗くなる事は無いと思います。
水晶末で、陰影部分だけを隠蔽します。
トイレで発光具合を確認します。
陰影部分にしか水晶末を重ねてませんので、光らせたい部分への影響は全くありません。
ただし、おでこや頬の陰影が唐突ですので、
水を含ませた平筆でぼかします。
完全に乾かした後、紙ヤスリで均します。
掃除機のブラシヘッドで画面の粉塵を吸い取ります。
ドーサを引きます。
ドーサを引くと掃除機で吸い取り切れなかった蓄光顔料が拭い取られます。
(トイレに持ち込んで撮った手ブレ写真ですが)
ドーサを入れた絵皿や連筆の先が光ってるのが確認出来ます。
1回目のドーサを引いた状態を暗室で確認します。
大丈夫。少々蓄光顔料が取れても、充分光ってます。
画面を180°回転させて反対側からもドーサを引きます。
一塗り目のドーサには拭われた蓄光顔料が混ざりましたので、二塗り目は、また新たにドーサ液を作りました。
二塗り目は、ドーサを入れた絵皿は取れた蓄光顔料で濁ることはありません。
次は、薄めた水晶末を画面全体に塗ります。
トイレで確認します。
ごくごく薄く溶いた水晶末なので、発光に影響はありません。
完全に乾いたところです。
薄っすらと見えますが、上から信長を描けば全然見えなくなるレベルまで隠蔽出来ました。
信長 骨描き
数日前にマスキングテープにトレースしておいた家紋をアートナイフで切り取ります。
家紋を裃に貼ります。
骨描きは濃淡二段階の濃さで描きます。
やや茶色く薄い色を、先ず岱赭棒と本洋紅棒とのブレンドを溶き、
それを硯に移して軽く墨を擦ります。
元の絵皿に戻し、
筆で撹拌し、試し描きして濃さと色味とを確認します。
薄茶墨にて骨描きを始めます。
オリジナルの織田信長像をそのままトレースすると、ジョルダーノ・ブルーノ像とズレるところが出てきますので、ジョルダーノ・ブルーノに寄せた信長像を鉛筆で下描きしてあります。
でも、かと言って、ジョルダーノ・ブルーノの輪郭をそのままなぞってもいません。
薄茶墨での骨描き完了。
オリジナルの織田信長像よりも、目が大きくなってますが、鼻の形や輪郭線は、ジョルダーノ・ブルーノとはちょっと変えて、信長像の特徴で描いてます。
薄茶墨による骨描きを終えた段階で、いったん暗室でチェックします。
大丈夫。
蓄光顔料の濃淡の印象が勝り、信長像の骨描きの線はほとんど気になりません。
薄茶墨を再び硯に移し、墨を擦り足して濃くした墨で続きを骨描きしました。
顔のアップ
目の虹彩と瞳孔や、髪の生え際など、薄茶墨と濃墨とを重ね、濃淡の抑揚をつけてるのが分かると思います。
本日の最終段階を暗室にて確認します。
襟や裃の濃い色を塗ったら、信長像の影響は強く現れると思いますが、骨描きの線だけでは、ジョルダーノ・ブルーノへの影響はほとんどありません。
2023年7月22日
信長 彩色1
昨日までの段階です。
まだ髪の毛や陰影部分が他より若干暗いので、
今日最初の仕事は、あらためて暗いところに水晶末を被せる隠蔽工作から始めました。
また、白い着物にも水晶末を塗りました。
臙脂で襦袢の襟と唇とを塗ります。
臙脂にガンボージを混ぜて朱色にし、
襦袢の襟に塗り重ねます。
水晶末を重ね塗りした部分と、襟はかなり光を遮断して暗くなりました。
朱色をかなり薄め、
裃の下地を塗ります。
裃の仕上げは緑色ですが、深みを出し落ち着いた緑色に仕上げたいので、下地に補色(色相環で対角に位置する色)の赤味を塗ります。
さらにこれを薄めたものにガンボージを加え、薄いオレンジ色を作り、
顔の肌色として塗ります。
ここまでを暗室で確認します。
裃の肩のラインから下が暗くなりました。
ガンボージと洋藍とを混ぜて緑色を作ります。
裃への緑色、一塗り目です。
裃のシルエットがハッキリ暗くなってきました。
マスキングテープを貼り、肩と頭部の輪郭をトレースし、
カッターマットの上で切り、再び輪郭に合わせて貼ります。
ガンボージと臙脂とで背景の炎を描き始めます。
春に京都「放光堂」さんで新たに購入した
臙脂紫味も加えます。
左下(赤丸囲み)、裃と袖との間を塗り忘れてたのを塗って、肩から上は、洗います。
塗るばかりではなく、洗い取るのも炎らしくするための描写です。
背景は、ほぼ真っ暗になってしまいました。
蓄光顔料は、紫外線を吸収し発光するので、赤味のある色を塗ると、ほぼ完璧にUVカットされてしまうようです。
いったんマスキングテープを剥がし、再利用するため、カッターマットに貼って取っておきます。
マスキングテープとの隙間から染み込んだところが、あちこちに見られます。
それらを洗い取ります。
裃に2回目の緑を塗り重ねます。
本日の最終段階(明)です。
裃の緑を3回目塗り重ねたところです。
背景に炎を描いてみて、肌色をもう少し濃くして良いと思いましたが、続きはまた来週にしようと思います。
本日の最終段階(暗)です。
背景は完全に闇になってしまいました。
来週、上から蓄光顔料にて炎を描こうと思います。
コスチュームも、なんだか戦隊ヒーローのユニフォームみたいになってますが、この先のバランスを観ながら対応していこうと思います。
2023年7月24日
現状です。
裃の筆ムラがかなり目立ちます。
以前は、なるべく筆ムラを無くしたいと思って制作を進めてきました。
ですが、CGやAIの進化の様子を見てて、筆跡なくフラットに描く方が簡単で、今はむしろAIは、人間のクセを採り入れようとしてます。
なので、多少の筆ムラが残る状態で、いったん定着させる為、ドーサを引きます。
画面を180°回転させ、反対側からもドーサを引きます。
手漉き和紙の繊維や、手作業の彩色による色ムラが見えてますが、むしろこれこそが芸術品の味わいになってると思います。
もちろん雑過ぎては、ただのヘタクソに見えますが、完璧過ぎると味気無いものになってしまいます。
丁度よい加減を目指すのが、たぶんAIには真似出来ない生身の人間による芸術作品の魅力なんだと思ってます。
2023年7月25日
蓄光顔料 炎描き起こし
背景が真っ暗になって、一番不都合なのは、ジョルダーノの髪のシルエットが分からなくなった事です。
途中段階の隠し絵の写真を画面サイズにプリントアウトして、本画にピタリと合わせます。
ジョルダーノ・ブルーノ肖像画の写真も見ながら、白い色鉛筆で髪形の輪郭を描きます。
木炭の粉をまぶした念紙を挟み、
赤ボールペンで髪形の輪郭をトレースします。
が、炎の描写にかき消され、トレースした輪郭線はほとんど視認出来ませんでした。
そこで、再び顔や肩のラインをマスキングするテープを貼り、
さらにジョルダーノ・ブルーノの髪形をトレースする位置にもマスキングテープを貼り、
トレースし直して、カッターマットの上で輪郭を切り、もう一度貼り直しました。
よく考えたら、隠し絵の肩の位置は裃のラインより下でしたので、裃をマスキングするテープは剥がしました。
アトリエの照明を明るくしたまま、表の炎の形に合わせて青く光る蓄光顔料で描き始めました。
照明を消して確認します。
この仕事を4度ほど重ね、
裃や、襦袢の襟で発光が暗くなった上にも蓄光顔料を塗り重ねました。まだ完全に乾いてないので、蓄光顔料の白さは目立ちませんが、完全に乾いたら白くなると思います。
白過ぎなところはまた紙ヤスリで擦り落としたり、上の絵と馴染むよう、また薄く彩色したりしながら、今後も、表の絵と隠し絵とのバランスの微調整に数日掛かると思います。
本日の最終段階です。まだ完全に乾いてないので発光も弱いですが、完全に乾き、日中の紫外線を吸収すれば背景の炎ももっと見えてくると思います。
炎に焼かれてるというよりも、お不動様の様に、内面の怒りの炎を燃やしている様にも見えます。
2023年7月26日
今朝、描き始める前の状態です。
昨晩塗った蓄光顔料は完全に乾き、厚く塗られたところは白く見えます。
暗室代りのトイレで発光具合を確認します。
やはり完全に乾いて日中の紫外線をたっぷり吸収すると発光も強いです。
蓄光顔料では、炎の明るいところを青く光る顔料で描きましたが、間を群青色に光る蓄光顔料で埋めていこうと思います。
群青色に光る顔料で背景を塗った後、
青く光る顔料で衣装に重ね塗りしました。
衣装の方は、襟や裃と、白い着物とを通した発光具合の差を弱めるつもりで塗りました。
群青に光る顔料は、やはり緑や青に光る顔料よりも輝度が劣ります。
明日また塗り重ねる必要がありそうです。
粗い蓄光顔料は、なかなか滑らかに彩色出来ません。
ある程度塗り重ねたら、お湯を平筆に含ませて、厚塗りになったところから絵具の付きのまだらなところへと洗いながら均します。
滑らかになってきましたし、襟や裃と白い着物との明度差が縮まってきました。
背景の群青色の発光を、絵皿に残った顔料の発光に近づけるのが目標です。
2023年7月27日
新兵器導入
今までは夜間、アトリエの照明を落として暗闇の中で作業をしていました。
ブラックライトで照らすと、蓄光顔料を乗せたところがひときわ明るく発光します。
アトリエを真っ暗にしなくても、蓄光顔料による彩色作業が可能になりました。
背景を含め画面全体に蓄光顔料が被り、白っぽくなりました。
明日以降またヤスリがけ、ドーサ引きをした後、再び表の絵の彩色に入ります。
隠し絵の彩色と、表の絵の彩色とを交互に重ねつつ、両方の絵のバランスが取れて、どちらのクオリティも納得出来る出来栄えになったら完成という訳です。
背景の炎の発光に群青が被り、いい感じになってきました。
もっとも、この後また表の彩色を重ねたら、また少し暗くなるでしょうから、その後も蓄光顔料による塗り重ねは必要になってくると思います。
まるで終わり無きイタチごっこを繰り返す様ですが、これを繰り返しながら、じわじわと理想的な完成形を目指します。
2023年7月28日
昨夜は早く寝て生活リズムを昼型にしていこうと思いましたが、早く寝ようと思うと頭が冴えて寝付けません。
しかも前日のタイガース対エンジェルス戦が大雨で中止になり、午前2時からダブルヘッダーの1試合目に大谷投手が急遽投げる事になったと耳にして、どうせ眠れないなら、このまま起きて中継を観戦する事にしました。
ダブルヘッダーの1試合目、大谷投手がメジャー6年目で初めて完封勝利した試合を見極めてから、ジョルダーノ・ブルーノの髪形のマスキングテープを剥がします。
紙ヤスリで均し、掃除機で粉塵を吸い取ります。
マスキングテープの境目に段差が出来たので、水晶末で段差を埋めます。
最初は面相筆で際を埋めて、
次に平筆でなだらかにぼかします。
紙ヤスリを小さくちぎって段差を滑らかにします。
1回目のドーサを引いた後、早朝の内にまた行田の古代蓮の里に取材に出掛けました。
早起きは苦手で、前回は到着時間がちょっと遅くなりました。
早起きより、徹夜しちゃった方が早朝から出掛けられると思い、第1試合だけ観たらドーサを引いてから出掛けようと思ってました。
お昼には帰宅して暗室代りのトイレで確認します。
良い具合に定着、発光してます。
画面を180°回転させて反対側から2度目のドーサを引きます。
表彩色 炎描き起こし
乾いた後、ガンボージを全体に塗ります。
ガンボージを一通り塗り終わったところです。
臙脂も溶き、少しずつ様子を眺めながら炎っぽくしていきます。
ガンボージと臙脂とを混ぜたオレンジ色も作り、濃淡に変化をつけながら炎っぽくしました。
さすがに疲れが感じられ頭がぼんやりしてきたので、今日はここまでにしておきます。
今晩は早目に眠れるでしょう
ワースポMLBは毎日録画予約してるので、打者大谷選手の2試合目2本のホームランシーンはまた明日でも観られます。
やはり赤系の絵具は薄く塗っても発光の隠蔽力が強いです。
最終的にもっとも明るく光ってる炎は、表から蓄光顔料にて描く事になると思います。
2023年7月30日
信長 彩色2
洋藍とガンボージとを混ぜて裃の緑を作ります。
裃を塗ります。
洋紅とガンボージとを混ぜた薄いオレンジ色を肌色として塗ります。
この段階で暗くして確認します。
裃の家紋のマスキングテープを剥がします。
マスキングテープの下に染み込んだ絵具を洗い取ります。
一番明るい緑の蓄光顔料で、背景の炎を描きます。
乾くまでは、発光具合があまり変わってないように見えますが、翌朝撮影した最後の写真をご覧下さい。
墨の線を描き起こします。
2023年7月31日
今朝撮った明るいところでの写真です。
同じく、暗室代りのトイレで撮影した現状です。
だいぶ完成が見えてきましたが、今日中に仕上がるか、または明日から別の仕事が入ってるので、いったん中断してからの完成になるかもしれません。
家紋の葉脈を鉛筆で下描きします。
本藍と松煙墨とを混ぜます。
面相筆で葉脈を描き、乾いたら鉛筆の下描きを消します。
微調整〜仕上げ
暗くした時に、裃と背景との境目が馴染むよう、背景に再び群青に光る蓄光顔料を薄く被せます。
乾いたら紙ヤスリで均し、
ドーサを引きます。
乾いたら反対側からもドーサを引きます。
だいぶ馴染んできたかなと思います。
仕上げが近づくと微調整なので、投稿を観て下さってる方々にはあまり前回との進展ぶりが分からないと思います。
でも、これこそがリアルな制作過程です。
現状です。
もう少し微調整をして完成としたいと思いますが、今日からしばらくこちらの制作から離れます。
続きはまた!
2023年8月11日
北海道帰省や金沢21世紀美術館在廊でしばらく中断してましたが、本日再開し始めました。
本日の仕事前の暗い状態です。
本日は、先ず背景の炎にさらに群青色に光る蓄光顔料を被せました。
ジョルダーノ・ブルーノに変身した時のヘアスタイルがシルエットとしてハッキリ見えるようにするためです。
ヘアスタイルをシルエットとして見せるために、ジョルダーノの髪の毛の上には(明るい時には)白っぽく見える蓄光顔料を被せてません。
したがって、そこだけ炎の色が鮮やかに見えてしまってます。
ジョルダーノの髪の毛の上に、(明るいところで見た時の)蓄光顔料に似た色を被せ、馴染ませようと思います。
天然方解末13番単独だと蓄光顔料より白過ぎるので、
天然岩鼠13番を少量混ぜてみようと思います。
同じ13番同士でも比重が異なれば上手く混ざりませんが、それほど比重に違いが無かったようで、上手いことほんの少しくすんだ白っぽい絵具になりました。
ジョルダーノの髪の毛の上に、様子を見ながら少しずつこれを塗り被せ、だいぶ馴染んできました。
暗くするとこんな状態です。
今夜の仕事はここまで。
明日また、ヤスリ掛け、ドーサ引き、そしてそれが乾いたらまたガンボージや臙脂を薄く被せて、明るい状態の時の炎の色を鮮やかにしていこうと思います。
2023年8月12日
昨日までの仕事をヤスリで均します。
掃除機のブラシヘッドで吸い取り、ドーサを引きます。
ガンボージで塗ります。
暗室で確認。
臙脂淡口と臙脂紫味を加えます。
炎の間の最も暗い部分には洋藍も重ねます。
目や髪の毛などをハッキリさせます。
暗室で、信長の頭頂部が明るい事を確認しました。
頭頂部の光を隠すため、不透明な天然岩肌色をかぶせようと思います。
頭頂部に岩肌色を塗ります。
作業は画面を逆さにしてやりましたが、写真は画面の天地に合わせてます。
だいぶ信長の頭頂部の形が隠れてきました。
この後さらに重ね塗りして、完全にジョルダーノの髪に隠れました。
臙脂淡口にガンボージを加え、朱色を作り、
襟を彩色します。
頭頂部に岩肌色を塗ったところを紙ヤスリで均します。
最後にドーサを引きます。
反対側からも引き、乾いたら落款を入れて完成させました。
完成
完成写真です。
明るい状態での「織田信長」
暗くした状態での「ジョルダーノ・ブルーノ」
表装
「空想歴史人物画 信長〜ジョルダーノ」を急遽とある展覧会に出品する事に決め、軸装するための裂地を選び、表装の注文をしてきました。
仕上がった作品をパネルから剥がして、丸められるか試してみましたが、蓄光顔料が厚塗りされて丸められない状態に仕上がってました。
支持体である真菰和紙は薄くて丸められそうでしたが、蓄光顔料の層ですっかり厚くなってました。
最初は「縄跡」の様に、裂地をマットにして額装するしかないと考えてましたが、マスミの社長さんが
ピタット軸装を提案して下さいました。
長興寺蔵の一番有名な「織田信長像」の中廻しに似た裂地を選びました!
2023年9月25日
表装が完成しました。
ピタット軸マグネット式で表装した
「空想歴史人物画 信長〜ジョルダーノ」です。
簡易表装ですが、なかなか立派に見えます。
表具、表装が敷居が高いと思ってる方は、こんなところから手軽に始めてみると良いと思います。
額装と同じくらいの価格で、より日本の伝統美を引き立てる軸装が出来ます。