【日本画の画材】Japanese painting materials

重要な日本画の基底材のひとつ。絹目を利用して裏側から彩色や箔を貼る等いろいろな表現が可能。
絹に描いた絵を絹絵あるいは絹本(けんぽん)といいます。

紙(和紙)

絹と並んで最要な日本画の基底材のひとつ。紙は他の基底材に比べると比較的長期の保存に耐えられ扱いやすいため、現代日本画の中心的な素材でとなっている。紙に描いた絵を紙本(しほん)といいます。

煤(すす)を膠や香料等で練り上げ、乾燥させ固めたもの。硯(すずり)にて水と一緒に摩り下ろして使用します。

天然岩絵具

天然の鉱物を細かく砕いた絵具。天然の鉱物であるため、不純物が混入したり色調が若干異なったりしますが、それが天然岩絵具特有の深い色合いを生み出します。材料を天然のものに依存する為、その多くは高価となります。
岩絵具そのものに接着性はないので、膠液(にかわえき)を加えることにより支持体に定着します。
原料とする鉱物が同じでも、粒子の大きさによって色の濃淡が変化します。

また原料とする鉱物の違いだけではなく、
①絵具を溶いた上澄みをすくって沈殿の時間差で粒子の大きさを分けたり、
②焼いて酸化させることにより黒っぽい色を作り出したり、
③水晶末を混ぜることで発色を鮮やかにしたりと、
様々な工夫により様々な色合いを表現する事が可能です。

新岩絵具

着色ガラスの粉末のようなもの。フリットと呼ばれるガラス体質に金属酸化物を混合し高温で焼成してつくられた色の塊(新岩)を、天然岩絵具と同じように粉砕・精製してつくられた岩絵具。
耐久性に優れており、品質が安定して種類も豊富ですが、不純物が少ないため天然岩絵具とは色合いの深みが異なります。
また天然岩絵具のように焼いても色の変化は起こりません。

天然岩絵具
天然岩絵具

新岩絵具
新岩絵具
岩絵具と絵皿
岩絵具と絵皿

胡粉

牡蠣・蛤・ほたて等の貝殻からつくられた白色絵具。主成分は炭酸カルシウムで、微粒子でなめらかな艶のないマットな質感が特徴です。 現在使用されている最高品質の胡粉は、天然のいたぼ牡蠣(かき)の貝殻で製造されたものです。
岩絵具同様、胡粉そのものに接着性はないので、膠液を加えることにより支持体に定着します。 
胡粉の用途は幅広く、日本画絵具の中でも重要な絵具です。

染料

動植物から抽出した色素を絵具として使用する天然染料。そのままで絵具として使用できないものは色素を胡粉や石灰に吸着させて絵具にします。

身近にある土を水干して黄土や朱土として使います。これも岩絵具同様、接着性はないので、膠液を加えることにより支持体に定着します。

獣や魚の皮や骨などのタンパク質を煮て取り出したゼラチン。古くから接着剤として使用されています。日本画に使用する絵具類は素材そのものには接着力が無いため、この膠を使って画面に定着させる必要があります。
主に三千本か鹿膠が多く使用されます。細かく折った膠と水を膠鍋(にかわなべ)に入れ湯煎で溶解させます。
膠が多すぎると絵具がひび割れしやすく、少ないと剥落しやすくなります。

胡粉・乳鉢
胡粉・乳鉢
膠鍋・膠
膠鍋・膠
練り

金属を薄く延ばしたもの。金箔・銀箔・プラチナ箔等があります。箔をそのまま画面に貼るほか、野毛(のげ・細い糸状に切断して画面に撒く)や砂子(すなご・箔を細かく粉のようにして砂のように蒔き散らす)といった伝統的な技法があります。

箔を粉状にしたものを泥と呼び、箔同様に金泥・銀泥などがあります。これらも接着には膠液を使用します。

筆・刷毛

線描や彩色をするための重要な道具。用途に合わせた材料にて使いやすい形に改良され、多種多様です。穂の材料には獣毛が多く使われています。

金箔
金箔
筆

佐藤宏三 日本画の絵筆各種
佐藤宏三 日本画の絵筆と絵皿