HiddenArt 「下着のミユ」
序
「至福の眺め」など、今までも何度かモデルとして描かせて頂いてる「浮世みゆ」さんをモデルにしたHiidden Art です。
数年前からドイツを拠点に主にヨーロッパでモデル活動をしてましたが、コロナ禍で帰国出来なくなり、オンラインでモデルを務めて頂きました。
みゆさんの自宅にてカメラの前でポーズを取ってもらい、それをスクリーンショットにて撮影し、プリントアウトして下図としました。
スクショの写真のままでは広角レンズの歪みがありましたので、下図を本紙にトレースする段階や、トレース後も形の修正をしました。
ただ、下着を着用してるとはいえ、スクショからプリントアウトした写真そのものをネットに上げる訳にはいかなかったので、写真を元に本紙にトレースする段階はFBに投稿しませんでした。
そのような事情で、この作品の制作工程は、蓄光顔料の彩色段階から公開してます。
蓄光顔料彩色
12月7日
FBには制作序盤の投稿を控えてましたが、数日前から密かにこちらの作品を描き進めてました。
隠し絵画の絵柄から、蓄光顔料を使って塗り重ねてきてました。
塗った顔料がしっかり乾いてからじゃないと、新たに重ねようとする筆に、既に塗った顔料が持っていかれるので、塗りムラがあっても一気に滑らかにしようとせず、乾かしてはヤスリ掛けし、また重ねるという地道な制作を夜な夜な繰り返します。
12月8日
昨夜までの仕事が乾いた状態です。
クローズアップするとこの様に筆跡が凸凹してます。
ヤスリ掛けする前に照明を消して確認します。
優しく撫でる様にヤスリ掛けしました。
強く擦ると、蓄光顔料が取れ過ぎてしまいますし、和紙の表面も傷めてしまいますから。
余分に出っ張ったところだけ削れて滑らかにするのが目的です。
ヤスリ掛けした直後の光り具合です。
取れた蓄光顔料がボカし効果で、良い雰囲気になりましたが、余分な蓄光顔料の粉塵を吸い込むとジンマシンが出た様に人体に有害なので、余分は掃除機で吸い取ります。
ブラシヘッドにした状態で、和紙を傷めないように粉塵を吸い取ります。
周りの絨毯も吸い取ります。
ヤスリ掛けからこの作業の間はマスク着用です。
ウィ○スには無意味だと思ってますが、粉塵防御には役立つと思ってます(笑)。
再びクローズアップ写真です。
だいぶ滑らかになりました。
夕食前にドーサ(滲み止め)を引きます。
掃除機で吸い取り切れなかった粉は、連筆で拭い取られるか、凹部に食い込みます。
既に定着してる蓄光顔料と和紙との接着もより強固になります。
ドーサが乾き切ってない状態でも、暗くするとちゃんと光って見えます。
ヤスリ掛けする前より、既に滑らかになり始めてます。
この後も、人体への蓄光顔料の薄塗りを重ねるのと、背景となるベッドには群青色に発光する蓄光顔料を塗ってるのですが、まだ発光が弱いのでベッドシーツの群青色も更に重ね塗りし、発光を強めようと思います。
12月9日
加重補正
おっぱいの形が、この姿勢にしては形が綺麗過ぎて不自然な事に気づきました。
修整致します。
併せて個人の画家の体験に基づく思想などを正直に書きます。
実は、このポーズの取材はオンラインにて行ないました。
コロ助のせいで帰国叶わぬモデルさんが、ZOOMを利用してポーズして下さったのを、PCのスクリーンショットで撮影し、下図の元にしました。
過去のリアルな取材では胸出しポーズも取材させて貰ってましたが、ZOOMなどオンラインでは情報が抜き取られるリスクを考慮し、下着着用でポーズして貰ってました。
ですので、これは僕の妄想で描いたおっぱいです。
ブラで包まれた胸の形のまま中身を想像して描いてしまったので、寝てるのに不自然に理想的な膨らみになってしまったという訳でした。
まず、元の輪郭線に蓄光顔料を塗って消していきます。
通常、ブラで固定しない状態で寝ると、重力に逆らってこんな綺麗な形で膨らみをキープ出来るものじゃありません。
仮に寝てもこんな綺麗な形で膨らんでる人がいたとしたら、美容整形の疑いがあります(笑)。
蓄光顔料を薄く重ねては照明を消して、輪郭線がどの程度消えてきたかを確認します。
若かりし頃にお付き合いした彼女が、ブラを外して寝た時に、思いの外おっぱいが両サイドに垂れ、内心ショックを覚えた事があります。ゴメンナサイ
理想と現実とは違います(笑)。
女性達も、けっして騙そうとしてそうしてる訳ではありません。
むしろオトコ共の理想の為に着飾ってくれてる訳です。
アリガトウゴザイマス
おっぱいや乳首の輪郭線が消えました。
ベッドのシーツは群青色に発光する蓄光顔料で塗っていて、肉眼では見えるのですが、写真では右下に写ってる絵皿しか写ってません。
離れて全体を見ると、胸の形がいったん曖昧な膨らみになったのが分かると思います。
輪郭を下にズラします。
かつての僕がショックを覚えたほど下げてしまうと、ある意味、理想を描く「絵」の存在意義が無くなってしまいます。
藝大での人気授業「美術解剖学」でも、その学術分野のパイオニア中尾先生が、絵画や彫刻の名作の中には現実の解剖学的なリアルとは違ったデフォルメがされてる物も沢山あり、リアルな筋肉、骨格を知った上で、美術なりの誇張を加えるのはアリだと常々仰ってました。
鉛筆で直した後、絵具で定着されてしまわない様に、練りゴムで必要最低限に薄めます。
胸の垂れ具合は、理想的過ぎず、かといって幻滅するほど現実感を出さないよう、ちょうど良い加減に修整したいと思います。
通常の顔料で、明るいところでの色調が蓄光顔料に似た淡緑14番を溶きます。
淡緑を新たに陰にしたいところに塗り、蓄光顔料の発色を塞ごうと思います。
淡緑を薄く塗っては、照明を消して暗さの度合いを確認します。
だんだん濃くしていきます。
だいぶ新たな位置への移動が進みました。
暗い状態のまま、小さな連筆に水を含ませ、淡緑を洗い取りながら陰影を滑らかにしていきます。
灯りをつけるとこんな感じ。
乳首を筆で責めてるようで、変態な気分になってきます(笑)。
僕に取っては、画家のこだわりというか、マニアックさはほとんど変態性と同義語だと自覚してます。
仮に、表メニューの風景画の大作でも、マニアックで病的な細密描写は、「先生、変態ですね!」と褒められるとめっちゃ嬉しく受け止めてます。
表現者として「普通」「ありきたり」と受け止められる事は屈辱的で、落ち込みます。
「変態だね〜!」「アブノーマルだね」と受け止めて頂けると、「よっしゃ~!」って、喜びます(笑)。
本日の最終段階全体像です。
続きはまた明日以降。
照明下ではこんな感じです。
蓄光顔料による人体の立体的な曲線美表現の工程です。
塗り重ねては、ヤスリで均し、また重ねては均しと、毎晩それを繰り返して人体の滑らかなボリュームを出していきます。
昨夜の仕事が乾いた状態。
かなり凸凹なのが分かると思います。
下半身。
まだ明るいうちに優しくヤスリ掛けし、掃除機のブラシヘッドで粉塵を吸い取ります。
今日は昨日と反対側からドーサを引いて、陽が沈むまでに画面を乾かしておきます。
日が暮れたら制作開始。
先ずは照明を消して現状の確認をします。
可哀想に胸が陥没して見えます😢
アップ写真
蓄光顔料でボリュームアップさせたいところを、塗っては乾かし、乾いたらまた塗り重ねます。
また、ベッドの奥の壁は水晶末を塗りました。
輪郭線の上にも面相筆で細く水晶末を塗りました。
表に隠し絵の形が透けて見えない様に、輪郭線を見えにくくする目的と、蓄光顔料で盛り上がった輪郭線以外との凹凸差を減らし、なるべく平滑にして、なおかつ画面全体の膠分の量も平均化するためです。
蓄光顔料を塗らない背景の壁全面に水晶末を塗ったのも、絵具の厚み及び膠分が画面全体でなるべく均一になる様にという配慮です。
蓄光顔料を塗り重ねたところがまた出っ張りましたので、また明日以降も、ヤスって塗っての微調整が続きます。
本日の最終段階を暗くして撮影。
全体像はだいぶ滑らかになってきました。
一昨日の胸と比較してみましょう。
修整後の胸と比べると、あらためて重力に逆らったおっぱいは不自然ですね(笑)。
空に向かってロケット発射しそうです。
こちらが今晩の最終段階。
アップで見るとまだ胸の谷間の筆跡が粗いですが、寝た姿勢での胸の膨らみは自然になってきたと思います。
12月15日
蓄光顔料を通販で補充しました。
初期の頃は3社から取り寄せ、使い比べてましたが、一番最初に取り寄せたこのメーカーのが、膠で練って筆で描くのには適してます。(個人の感想です)
明るいところで見た今日の最終段階です。
人体の凹凸がだいぶ滑らかになってきました。
また、ベッドのシーツに塗ってた群青の発光もカメラに写る様になってきました。
上半身のアップ
下半身のアップ
12月16日
表彩色
蓄光顔料で描いた隠し絵の形が、明るい状況下でも視認性を良くする為、透明水彩で薄く肌色をつけました。
透明水彩を一層塗っただけでは、蓄光顔料の光の吸収や発光をそれほど阻害しません。
画面全体に水晶末を塗り、隠し絵を目立たなくしていきます。
水晶末を乾かしながら何度も塗り重ね、顔以外はほとんど見えなくしました。
表の絵は、顔はそのまま、身体のポーズを少し変えます。
水晶末は透明な絵具ですので、塗りつぶしても下層の蓄光顔料が光りますが、それでも塗り残した顔以外は若干発光が暗くなりました。
表の絵は下着を身に着けた絵にします。薄っすら見える隠し絵との重なり具合を考慮しながら鉛筆で描いていきました。
本日はここまで。
モデルさんがこのポーズを取ってくれたときに、ゴヤの「裸のマハ」と「着衣のマハ」を連想したので、1枚の絵で下着姿からヘア・ヌードへと変化する作品を描こうと思いつきました。
12月18日
鉛筆で描いた下描きの線を、練りゴムを転がして薄くします。
天然銀灰末で骨描きと髪の彩色をします。
いったん暗くして骨描きの線の影響を確認します。
透明水彩による彩色をします。
ドーサを引いていったん定着させます。
髪に塗った銀灰末が流れてしまいましたが、想定内です。
本日の最終段階です。
照明を消して見たところ。
群青色に光るベッドの角度を水平にしようか思案中です。
明日からしばらく別の仕事が入ってますので、この状態でしばらく日数を置き、再開する時決断します。
12月26日
愛玩具
北海道から埼玉のアトリエに戻ってきて制作を再開しました。
昼間は「本当はこわくない新型○ロナウィルス」著者の井上正康先生の講演に行ってきました。
医師としての感染症のメカニズムの知識と、世界中の最新の論文や一次データを元に、説得力がある説明を分かりやすく、かつ不安を吹き飛ばすユーモアを交えながらの講演で、素晴らしかったです。
僕も○ロナ禍において、アンチディスタンス。
濃厚接触こそが人生の喜び、新たな生命の根源という思いからエロティックな絵を描いてます。
制作動機の元は怒りですが、ずっと怒りっ放しだと自分の精神衛生上良くないので、エロスやユーモアを交えて描いてます。
春画は別名「笑い絵」とも言いますし。
モデルさんが小道具としてベッドに置いてたクマのぬいぐるみ。
今回の絵に描こうか描くまいか決めていませんでしたが、北海道に帰る用事で一週間制作を中断してる間に、新たな悪戯を思いつきました。
新たな閃きは、制作中には降りてきません。
たいていは、制作してない時にグッドアイディアが浮かんできます。
だから、真のクリエイターは、傍からみたら仕事をしてない時間こそ大切だと僕は確信してます。
切れ目なく真面目に毎日描いてる方が技術的には向上すると思いますが、新たなアイディアが湧く暇が無く、ワンパターンを量産するだけの作家になってしまうと思います。(個人の感想です)
表の絵柄となるクマちゃんをトレースし、
クマの股間から天狗の鼻が伸びる様に隠し絵の下描きをします。
練りゴムを転がして、下描きの鉛筆を薄めます。
斜めから見た確度の割に鼻が長すぎに感じたので、少し短くします。
一塗り目は照明を着けた状態で、鉛筆の下描きの内側に蓄光顔料を塗って行きます。
二重ね目からは照明を消して、暗闇の中で濃淡を確認しながら蓄光顔料を重ね塗りしていきます。
これは今日の途中段階の写真です。
本日の(明るい)最終段階です。
本日の(暗い)最終段階です。
ベッドは群青に光る蓄光顔料を塗り足し水平にして、壁は青く光る蓄光顔料を塗り始めました。
蓄光顔料は最初からムラなく塗るのが難しいので、この先また数日掛けて、紙ヤスリで均したり、また塗り重ねたりを繰り返して整えていこうと思います。
天狗のお面は、あからさまなイメージですので、せめてモデルさんの方を向かせず、そっぽを向かせて描こうと思いました😅
12月27日
いつもの様に、この仕事の前に、ヤスリ掛け、ドーサ引き、蓄光顔料による彩色は済ませてます。
工程はいつもと一緒なので、その段階は撮影してません。
一通り終わったところで水晶末にて下着などを彩色します。
天狗の鉛筆による下描きの線も水晶末を被せて見えにくくします。
透けて見えてた乳首も水晶末で一旦隠します。
本日の最終段階(明)。
本日の最終段階(暗)。
ブラジャーやパンティなど、水晶末で塞がれて発光が弱くなったところは、上から再び蓄光顔料で明るく描き起こすつもりです。
こうして一進一退の微調整を続けます。
12月28日
蓄光顔料で描いた天狗の上に、再びクマのぬいぐるみをトレースします。
透明水彩で表のクマちゃんを描きます。
照明を消すとこんな感じです。
薄く溶いた棒絵具の洋藍(プルシャンブルー)を背景全体に塗ります。
暗くして確認します。
洋藍の影響はほとんど見られません。
臙脂をシーツにだけ被せました。
洋藍と臙脂とを混ぜて紫にして、人体に陰影をつけていきます。
仕上げは墨で、必要最低限の影と、髪、眉、目などを引き締めます。
本日の最終段階です。
表の絵は一見完成に見えますが、この先、蓄光顔料の裏彩色を整え、裏と表のバランスを微調整しながら仕上げていくつもりです。
照明を消した状態です。
暗くなってしまった胸の膨らみなど、蓄光顔料を上から被せてボリュームアップさせたり、全体的に裏の身体の凹凸も滑らかに整えていくつもりです。
蓄光顔料も白っぽいので、ブラの上から被せてもそれほど違和感なく馴染むと思います。
12月30日
蓄光顔料にて上から彩色しました。
明るいところで見るとこんな感じです。
こちらが上から蓄光顔料を被せる前の状態です。
明日以降も、表と裏、両方の見え方のバランスを調整しながら仕上げに入っていきます。
12月31日
本日の制作前の段階。
蓄光顔料が粗く盛り上がってるのが分かると思います。
紙ヤスリで優しく擦って均します。
掃除機で粉塵を吸い取った後、ドーサを引いて定着させます。
洋藍を薄く背景に塗ります。
暗くして確認。
洋藍の影響はほとんど見られません。
透明水彩の紫で両太ももと腹部の影を薄く入れ、髪の毛や眼は新岩紫と、準天然紫黒とでよりハッキリさせました。
透明水彩による淡い紫色の影は、ほとんど影響無いのが確認出来たので、これで完成とし、落款の印を押しました。
「下着のミユ」P10号 ギリギリ2021年制作
ゴヤ作「裸のマハ」「着衣のマハ」に倣って、この題名にしました。
プロのモデル、浮世みゆちゃんからの許可も得てます。