「Get up, stand up.」
2020年~2021年におけるコロナ禍の理不尽な社会情勢に危機感と憤りを感じ、
その気持ちを伝えたく 題名を「Get up, stand up.」として
佐藤宏三日本画展【gallery SIACCA】(2021年10月22日〜30日)にて発表した作品です。
9月23日
こちらは紙本彩色による「蓄光顔料による隠し絵画」ですので、最下層の隠し絵から先に描いていきます。
鉛筆による下描きです。
蓄光顔料 彩色
肌色の明部を蓄光顔料で彩色していきます。
一通り塗ったところで電気を消して発光具合を確認し、更に明るくしたい場所を見極めます。
本日の最終段階です。
本日の最終段階でドーサを引き、和紙に蓄光顔料をしっかり定着させました。
ドーサが乾いたところで照明を消して撮影してみました。
左から右に引いたドーサにつられ、蓄光顔料が流れてます。
完全に定着するまでは、こうして多少絵具が動きます。
これもまた良しです(笑)。
9月24日
背景とシャツとをブルーの蓄光顔料で塗りました。
ドレッドヘアーが分かりやすくなったと思います。
最初に昼間の明るいアトリエで背景のブルーを塗ったら、顔よりも背景の方が明るく光ってしまいました。
そこで暗室代わりのトイレに持ち込み、洗いながら丁度良い加減に整えました。
暗いトイレで洗ったので、和紙の繊維が毛羽立ってしまった事に気づきませんでした。
明日以降、こういう事のフォローもしつつ描き進めます。
茄子と胡瓜の隠し絵画も同時進行で描き進めてます。
9月25日
水晶末 彩色
下描きで鉛筆で影をつけたところや、蓄光顔料を塗って無いところに水晶末を塗ります。
蓄光顔料で盛り上がったところとの段差を減らしたり、洗って毛羽立ってしまった和紙の繊維の間に絵具を食い込ませ、安定させる目的です。
照明を消して確認します。
最後に、前回とは連筆を引く方向を変えてドーサを引きます。
今日はSNS非公開で描き進めてる、茄子と胡瓜の絵を重点的に制作しましたので、こちらの作品は次の段階への準備のみでした。
9月30日
蓄光顔料で、あらためてより明るく発光させたい場所に重ね塗りします。
照明を消して確認。
水晶末を全体に塗ります。
水晶末が乾いたところです。
紙ヤスリで均します。
粉塵を取った後、ドーサを引いて絵具と和紙との接着を安定させます。
ドーサを、上下2方向から引いて乾いたところです。
本日の最終段階。
暗くして見たところです。
紙ヤスリで擦ったり、水晶末を被せても、しっかり蓄光顔料が発光してます。
本日も茄子と胡瓜の隠し絵画をメインに描き進め、こちらはその合間に描き進めました。
10月1日
表彩色
表の図柄をトレースしました。
喫煙者が迫害されるようになって久しいですが、昨今禁酒法もどきの要請が出されるに至り、
逆に開き直って、葉っぱでも吸ってやろうか!
っていう思いからこの隠し絵画のアイデアが浮かんできました。
思っただけですよ。絵に描いてるだけですから法は犯してません。
画面が汚れない様に、念紙から写し取った時の余分な木炭の粉は練りゴムを転がして取り、薄くしました。
ガンボージを塗っていきます。
これが1引目です。
この後、パネルの角度を変えて、計4回、塗り重ねます。
左側が、僕が以前描いた「麻」F6号の等倍コピーです。
本画は売れて手元にありませんが、絵の写真を等倍にプリントアウトしました。
ちなみにご購入された方は警察官の奥様です(笑)。
別に犯罪ではありませんから、問題ありません(笑)。
これのスケッチに行った時、農家の方から一瞬葉っぱ泥棒かと警戒されましたが、スケッチしてる姿を確認して貰い、直ぐに疑いは晴れました。
10月2日
かの横山大観も酒を飲みながら描いたという伝説がありますが、横山大観記念館にて、
「それはあくまで伝説で、制作中は飲まず、1日の制作が終わってからお酒を楽しまれたのが真実です」と聞き、さもありなんと思ったものです。
僕も普段は1日の制作が終わってから晩酌を楽しんでますが、今晩はたまたまのフライングです(笑)。
蓄光顔料を使った隠し絵画の制作は夜中の制作になってしまいますので、夜中の1時を過ぎて、僕の体内時計がアルコールを欲したという訳です(笑)。
自分の身体からの欲求に素直に従うのが僕の健康法です。
個人の意見です。m(_ _)m
本日の最終段階です。
葉っぱの彩色をし始めたら、隠し絵の顔はたちまちカモフラージュされますね。
透明感のある染料の洋藍(プルシャンブルー)による彩色段階ですので、蓄光顔料の発光をほとんど妨げてません。
10月3日
昨夜の投稿の後も、梅肉入りの焼酎を飲みながら制作を続けてました(笑)。
クルミとクチナシとのブレンド煮汁で補色を下地に差していきます。
補色とはメインの色彩の緑色とは色相的に正反対の色の事です。
この色を潜ませておくことで、後から被せる緑の発色がより引き立つという訳です。
クルミの煮汁は被覆力があり、これを塗ったところは蓄光顔料の発光が阻害されてしまいました。
せっかくのハンサムな顔がかなりダメージを受けてしまいました。
でも、表の絵の為に茶色系の補色はやはり必要です。
ハンサムな顔への修整策も考えてありますので、しばしの我慢です。
粗い岩絵具も被せてみます。
隠し絵の方がますます見えにくくなってきました。
顔料 洗い取り
もったいないけど洗い取ります。
やはり染料系の絵具をメインに表の絵は描き進めます。
ガンボージを引いたり、
洋藍(プルシャンブルー)を薄く溶かした染料を塗り重ねて緑にしていきます。
更に濃くした洋藍で、葉っぱの重なりに陰影をつけていきます。
表の絵もだいぶ仕上がってきました…が!
うわっ!隠し絵画がほとんど見えなくなってしまいました。
これじゃ怖過ぎですし😅
また、洗います。
結構絵具が取れた様に見えましたが、取れた絵具の大半は、岩絵具だけで、染料系の絵具はしっかり染みついてしまったようです。
洗っても蓄光顔料による隠し絵の発光は暗い状態から、あまり改善されませんでした。
明日以降、復活策を試していこうと思います!
新機軸の作品は簡単には生み出されないのです。
10月4日
隠し絵 復活
アトリエの照明をつけたり消したりを繰り返しながら、表の絵の上に、再び蓄光顔料で描いていきます。
かなり復活してきました。
今夜も塗っては乾かしを繰り返し、この仕事を続けるつもりです。
10月5日
昨夜の最終段階。
一旦は蓄光顔料が盛り上がるほど塗って
暗くするとこんな感じ。
完全に乾いたら紙ヤスリで均します。
ドーサを引いて定着させます。
紙ヤスリで余分に盛り上がったところを擦り落としても、充分発光してます。
まぶたなど、もう少しハッキリさせたい部分は、また後から加筆します。
こうして塗って(描いて)乾かしては紙ヤスリで擦ったり洗って余分を落とす行程を繰り返して完成を目指す事で、後年ひび割れや剥落しない安定した絵として仕上がるという訳です。
とりあえず現段階です。
隠し絵になっておらず、マリファナマンになってます(笑)。
このあとの工程で再び顔は隠して行きますが、いったん個展DMの発送業務に掛かりますので、3、4日はこの状態にしておこうと思います。
10月13日
一進一退
麻の葉をもう一度トレースします。
透明水彩で、蓄光顔料で白く浮いた部分を中心に塗り隠していきます。
トップの若い葉にはガンボージを塗って黄色味を強めます。
暗くして確認します。
発光具合がやや暗いかな?
一旦洗います。
全体に薄くなりました。
顔が明るい状態でも見えてしまってます。
顔の陰になってる部分に水晶末を塗って明るくします。
照明を消して確認。
水晶末を塗ったところに、またグリーン系の絵の具を薄く塗ります。
最後にエメラルドグリーンを全体に引きます。
あちゃ~!
めっちゃ発光が弱くなってしまいました。
またエメラルドグリーンを洗い取ります。
最近他にも予期せぬトラブルがあった事もあり、泣きそうな気持ちです。
明日気持ちを切り替えて頑張ります!
10月14日
今日は、顔の影部分に天然若葉緑青12番を塗りました。
ガンボージで手前の若葉の黄色味を増し、
洋藍にて葉の影をつけました。
一旦顔を認識してしまった後だと、葉っぱの繁みの中に顔の存在が見えてしまいますが、ここらあたりが限界かもしれません。
こちらの作品は2、3日放置する事にしました。
蓄光顔料の発光具合も、他の作品に比べるとやや暗いです。
2、3日放置してから、この先、手を加えるかどうか決断します。
10月20日
完成として、落款を入れました。
こちらの隠し絵は少々発光が弱く、他の作品に比べ暗いんですが、「Get up, stand up.」は、まさに今回の個展の僕個人のテーマですので展示致します。