Hidden Art「地獄極楽変相図」Hell and the Buddhist paradise
新年早々、新作 Hidden Art のオーダーメイドの受注を賜りました。
以前、故郷北海道岩見沢市の小・中・高の同級生が住職を務めてる臨済宗妙心寺派明心寺に納めた「地獄極楽変相図」とほぼ同じ絵柄で、一部にHidden Art で変化する仕掛けを加える新作を制作する内容で、話がまとまりました。
2026年2月12日
制作準備

以前制作で使ったパネルを引っ張り出してきました。

絹本の本画にトレースした下図も、もう一度パネルに貼ります。
Hidden Art にて変化させるのは主に天界のみで、地獄場面は以前、明心寺に納めた絵柄と同じにして欲しいというリクエストでしたので、この下図から絵柄の大半をトレースします。
よく「売れてしまって手放すのを惜しいと感じることは無いの?」と聞かれる事がありますが、私の場合、売れた時は嬉しさ100%で、ちっとも惜しいとは思った事がありません。
どの作品も下図を大事に取ってありますから。
また、この様に下図をキープしておけば、同じ絵柄の作品はまた再現出来ますし。

さて、先ずは、久し振りに大作を描くので、乗り板が使える様に片付ける必要があります。
明心寺に「地獄極楽変相図」を納めて以降、乗り板を使う大作の制作はしていませんでしたので、どんどん溜まる資料の積み重ね場所になってました。

一日掛かりで片付け完了!
清々しい気持ちで新作に取り掛かろうと思います。
2026年2月15日
絹本張り

HiddenArt地獄極楽変相図と
HiddenArt南无阿彌陀佛(仮題)用の
木枠に捨て糊 を塗ります。
地獄極楽変相図用の木枠は、既に前回の糊の下地があるので、捨て糊は2度塗り。
南无阿彌陀佛用の木枠は新品ですので、3度塗り重ねました。
いずれも絵絹を張る直前にたっぷり糊を塗ります。

初めてこの木枠に絵絹を張った時は、まだ一人で張る方法に思い至らず、友人に来てもらい、木枠を寝かせた状態で、絵絹の片側を友人に持って貰って張り込みました。
その後、木枠を立て掛けて、絵絹の片側を口でくわえて持てば、一人でも貼れる事に思い至りました。

立て掛けた状態で軽く仮貼りが出来ました。

その後、寝かせ、乗り板に乗って、絵絹を左右に引っ張りながら木枠にしっかり密着させていきます。

南无阿彌陀佛用の絵絹も、口でくわえ持って仮貼りしてから、寝かせて密着させます。

いつも言ってきましたが、絵絹はドーサ(滲み止め)を引くと、縦糸の方が激しく縮むため、縦方向は緩く、横方向は左右に引っ張りながらピンと張るようにします。
なので、ドーサを引く前は横皺が出来るのがちょうど良い張り具合というわけです。
皺が水平に揃う様に張れたら達人で、私もそのレベルを目指しますが、現段階では少し斜めです。
2026年2月16日

ドーサ1引き目直後です。
縦糸が縮み、パッと見にはピーンと張ったように見えます。
これが乾いた後、木枠を180°回転させて反対側から2引き目を重ねました。

2引き目が終わり、乾いたところです。
左側、地獄極楽変相図用の大きい絹本は、端の方に僅かな皺が見られます。

右側、南无阿彌陀佛用の小さい絹本は隅々まで皺無くフラットに張りました。

大きな方を近くで見ると角に皺が出来てます。
でも、大きな絹本を隅々まで皺無く張る事が難しい事は想定内でして、

下図の周りは5cm幅のスペースを空けてあります。
つまり、画面内には皺の影響が及びません。
これまでの経験からリスク回避の方法も学んでます。
2026年3月4日
下図制作

これまで使ってきた墨がかなり短く擦り減ったので、昨年の揮毫雪洞の返礼品に靖國神社から贈られた墨を下ろそうと思います。
神社から贈られた墨で仏画を描くので、神仏習合ですね。
今回のご依頼主も、仏教だけでなく神道にも敬意を払ってる方で、私とのオーダーメイドの打ち合わせの時も、靖國神社にお参りされてからいらっしゃいました。

今回は天界場面だけ、Hidden Art の仕掛けを施し、「化仏」の演出を加えます。
明心寺に納めた「地獄極楽変相図」での天界、釈迦如来、文殊、普賢菩薩、地蔵菩薩、鬼子母神のラインナップは、暗くした時に蓄光顔料で光って現れる隠し絵として描きます。

明るい時の絵柄では、中央が不動明王、左右に四天王というラインナップにする事にしました。
仏教の教義での化仏とは違いますが、私とお客様との入念な打ち合わせの上で決めた演出ですので、外野からの要らぬご意見は、ご遠慮願います。
明るい時は、天界の神仏が厳しく下界を眺めてます。
夜になると、如来、菩薩の姿に変わり、ご依頼下さった方のご家族を優しく見守るという変化を提案させて頂きました。
以前、Hidden Art 「化仏 不動明王〜大日如来」を描いた時も、お買上げ下さった大切なお客様が、夜中にトイレに起きた時に怖がらせては忍びないと思ったので、明るい時は怖い不動明王でも、夜になったら穏やかな大日如来の姿に化仏させた方が良いと判断したのと同様です。
2026年3月8日

釈迦如来に化仏する不動明王を描きました。

先行して描いてた四天王も下図に貼り付けます。
鉾を持った増長天は錫杖を持った地蔵菩薩に化仏させ、巻物を持った広目天は、やはり巻物を持った文殊菩薩に化仏させます。
多聞天は鬼子母神への化仏と、性別まで変化します。
仏教の教義に囚われない自由な変身となります。
2026年3月11日
オーダーメイド制作ご依頼主に送ったメールを転載いたします。
◯◯様
下図の四天王に淡く彩色してみました。
先日説明させて頂いた様に、あまり濃く彩色すると、裏彩色にて蓄光顔料で描く菩薩達が見えてきませんので、これくらい淡い彩色に止めようと思います。
また、明心寺に納めた一作目の「地獄極楽変相図」でも、本画では、主役の引き立て役とするため、飛天の衣装を白いままに止める変更を行ないました。
つまり、今回の Hidden Art「地獄極楽変相図」も、天界は、主役の不動明王のみがカラフルで、四天王、弟子、飛天は全て白っぽく色彩を控えめにしようと思ってます。
(青空とのコントラストで、白っぽくても存在感は出せるはずです)
また、一作目での光背は金箔を裏から貼って表現しましたが、今回は、光背も蓄光顔料にて発光させます。
さらに、円の内側全てを光らせる「円光」にしてしまうと、菩薩に変身後も、四天王の顔が現れてしまいますので、「輪光」といって、輪っか状に光らせる表現にするつもりです。
Hidden Art では、表裏2枚の絵柄を両立させる為の工夫が必要ですので、どうぞご了承、また、私の経験に基づいた、表裏両方のバランス調整を信頼してお任せください。
佐藤宏三

色の三原色を淡く塗り重ねました。

再び下図に貼ります。

増長天と持国天

広目天と多聞天
2026年3月13日
下図のトレース 骨描き

下図を張ったパネルを絹本を張った木枠の裏からはめ込みました。
ドーサの効き具合は描いてみないと分かりませんので、仮にドーサの効きが弱くて滲んでしまってもダメージの少ない地獄場面から描き始めることにしました。

ドーサを引いた絹本が光って、下図が見えにくかったので、

段ボール箱を置いて上部からの光を遮り、この状態で下図の輪郭線を本画の絹本にトレースしていきます。

うん、ドーサの効きはバッチリでした!
滲まないし、逆に効き過ぎて墨を弾く事もなく、ちょうど良い塩梅です。

畏鷲処(いじゅうしょ)
獄卒に追い立てられたり、矢を射掛けられる小地獄の場面です
私の画面構成では、八大地獄のうち、最後の三大地獄へと続くマグマに追い立てられ、突き落とされる場面への導入場面として構成しました。

叫喚地獄で、灼熱の鉄球を飲まされようとしてる場面までを描きました。
今日の制作は少しだけでしたが、序盤はゆっくり入ろうと思います。
だんだん筆が乗ってくればペースが上がって来ると思いますし、細かな描写に慣れてきた段階で天界の描写に入ろうと思います。
2026年3月14日

乗り板に乗っての制作に入りました。
NETFLIX で、WBCのドミニカvs韓国やアメリカvsカナダ戦を流しながらの制作です。
制作中の画面を見てますので、ほぼラジオ中継みたいなものですが、盛り上がったときにリプレイ画像をたまに見てます。

本日描き進めた場所です。

左側「叫喚地獄」で煮られる場面。
右側「大叫喚地獄」で目をくり抜かれたり舌を引っこ抜かれたりする場面。

「衆合地獄」で大岩で挟み潰される場面。
2026年3月15日

昨日描き進めた部分です。

「黒縄地獄」大工道具で責められる場面。

「黒縄地獄」鉄の塊を背負わされて鉄縄を渡らせられます。
重さに耐え切れず落下すれば、更に過酷な下層の地獄に落ちます。
私の画面構成ですと、仮に無事に渡り切ったとしても、次の「衆合地獄」へとたどり着きます。

「衆合地獄」鉄臼と鉄杵とで突かれます。
ミンチ状態になったら捨てられますが、赤子としてよみがえり、永遠に地獄の責め苦を繰り返させられます。
2026年3月19日
本日描いた部分
刀葉林(刀葉樹)
「衆合地獄」の責め苦の一つ。
美女が樹上から誘います。男が上ろうとすると樹の葉が全て鉄葉に変わります。体を切り刻まれながらもやっとの思いで樹上にたどり着くと、いつの間にか美女は樹下に移動してます。
罪人の男は決して触れる事が出来ない美女を求めて永遠に上り下りを繰り返します。
「等活地獄」
ここでは罪人が、まな板の上で魚のように捌かれます。すっかり肉を削ぎ落とされ骨だけにされたと思ったら、別の獄卒が「活々」と唱えると赤子の姿で蘇ります。こうしてこの責め苦は延々と繰り返されます。
罪人同士が鉄の爪で、お互いの皮や肉を削ぎ落とし傷つけ合う責め苦もあります。
小地獄「雨炎火石処」
地獄の序章として、獄卒達に責められる以外の過酷な場面を挿入しました。
2026年3月21日
本日描き進めた部分です。
「閻魔王庁」以外の地獄場面の骨描きは一通り描き終わりました。
「尿糞処」
これは説明不要ですね。
この地獄にも落ちたくは無いですが、他人事としてなら面白い場面ですので、自作の地獄場面に是非とも描き入れたいと思いました。
「業の秤」
生前の罪の重さを量ります。
「浄玻璃の鏡」
言い逃れをして自分の罪を認め無い罪人に、動かぬ証拠を映して見せつける鏡です。
仏教の教えを分かりやすく伝えるのが仏画の役割ですので、僧侶を殺すのが最大の罪とされてますが、現実の世の中では、大量殺戮を命令する政治家や、人体に有害な薬や戦争で儲ける輩などの方が、よっぽど罪が重いと思います。
そういう輩こそ、生きてる内から生き地獄を味わって欲しいと思います。