靖國神社「みたままつり」2025 揮毫雪洞
Paper lantern in Mitama Festival 2025
「小野田寛郎少尉」2025年制作
もう、昨年の みたままつり の頃から、来年はフィリピン・ルバング島で終戦を信じず、戦後30年間に渡って工作員としての任務遂行を続けた
#小野田寛郎(ひろお)さんを描こうと決めていました。
きっかけは、昨年の流行語大賞に選ばれた「ふてほど」=「不適切にも程がある」が第一話放映直後に友人から面白いと聞き、ネットフリックスで見てました。
昭和から令和にタイムスリップした高校教諭が、昭和と令和との道徳、価値観とのギャップを浮き彫りにするドラマでしたが、僕はこのドラマを観た時、自身が確か小学二年生になった当時、小野田少尉が帰還され、英雄として称えられる一方で、軍国主義を正当化する言動をする人物として非難する声も多数だった事を思い出しました。
昭和まではかろうじてマスメディアでも色々な主張、意見が報道され、討論番組もありましたが、最近はまるで中◯か?と感じるほどマスメディアの偏向報道が極まってますし、国民の多くが※国の洗脳にまんまとハマってしまっている事に気づけていない事を憂いていました。

終戦80年目の区切りの年に、みたままつりに小野田少尉の肖像画を掲揚して貰い、国民の皆様方に、あらためて彼の功績と、帰国してからの言動にご興味を持つきっかけにして頂きたいと考えました。
文筆家や画家などの表現者は、本来、自分自身の信じる思想信条を隠さず表現する者だと思ってます。
八方美人的に誰からも満遍なく好かれよう、人気を得ようとする表現者は、その時々で意見がブレ、僕は偽善的、偽物的に感じます。あるいは毒にも薬にもならない、ただ上手なだけで中身の無い文章や絵になってしまうでしょう。
2025年5月6日
制作準備 水張り~トレース

靖國神社から送られてきた ぼんぼりに張る和紙のサイズを確認します。

下図制作の為の新鳥の子紙を切り分けます。

横長な画面の下図ですので、上下はパネルサイズをカバー出来ませんが問題ありません。

いつもと違った水張り形態になりました。

本紙の大きさを枠取った後、さらに内側に2センチ幅の枠を取ります。

拡大写真です。
ぼんぼりとして張った時、四辺は木枠に糊付けされますので、昼間は四隅まで見えますが、夜、ぼんぼりとして灯された時には、木枠に貼られた四辺幅2センチほどは照らされなく見えなくなってしまうからです。
肖像画の周りに文章で小野田少尉を紹介する字も書き添えますので、夜も文章の全てが読める様に、枠の内側に収まるようにする為です。

小野田寛郎さんご自身の著作文中から、表紙でも使われた写真を拡大し、念紙を挟み赤ボールペンにてトレースします。
「プロの画家のくせに写真からトレースするのかよ」って、まるでそれをインチキ、手抜きと受け取る方々もいらっしゃると思います。
いやいや、直接面識あった方じゃないですし、写真から一番その時の思想信条、人となりが伺い知れるものを選んでトレースする事が、直接お会い出来ない方の真実に一番近づけられる肖像画の制作方法だと思います。

トレースが終わった段階です。
いくら輪郭を写真からトレースしたとしても、ある程度の画力を伴ってないと、ここからリアルに陰影を付けた描写で仕上げる事は難しそうだと感じてもらえると思います。
本日はここまで。
実は肖像画部分よりも、肖像画の左右に入れる文章を考えるのに本日の大半を費やしましたので。
2025年5月7日
下図制作
一年前から小野田少尉著の「たった一人の30年戦争」を読み、昨日あらためて取り上げるエピソードに付箋を貼り、でも、結局、具体的な小野田少尉の体験と考え方は、直接著書を読んで知って欲しいと思い直し、AIとやり取りして抽象的な紹介文に留めました。
僕が奉納したぼんぼりをご覧になって、今あらためて小野田少尉の体験談や思想を詳しく知りたいとご興味持ち、著作を購入したり、ネットで詳細を調べて下さるきっかけになれば良いと思いました。



下図は、滲まない新鳥の子紙に描きましたので、小野田少尉自作の軍帽、軍服の手縫いの質感がクリアに描けました。
しかし、本紙は墨の染み込みを深くしたいので、ドーサを引かずに描きます。
ですので下図よりも、滲んで細部描写が曖昧になると思います。

本画では、ぼんぼりの特性を活かした【Hidden Art】の仕掛けを考えていますので、どうぞ続く本画制作もお楽しみに!
2025年5月9日
本画制作

下図の上に透明シートを被せます。

本紙を下図の上に重ね、透けて見える文字を参考に書いていこうと思いますが、
本紙にはドーサ(滲み止め)が引かれてませんので、本紙に字や絵を書く(描く)時に、下図に染みて汚さない様にするため、透明シートを間に挟んだ訳です。

下図の文字を透かし見ながら書いたり、
汚さない様にするための工夫ですが、左から右へと字を書いて行きます。
書家だったら邪道なんでしょうが、
画家が本業ですので、むしろ賢い書き進め方を考案したものだと感心して受け止めて下さると幸いです。

先に字から書き上げました。
肖像画の方が描くのに苦労するはずですので、先に絵を描いてから、万一、字の書き損じをしてしまったら精神的ダメージが大きいからです。

肖像画の方は、下図を透かし見ても不鮮明でしたので、もう一度念紙を間に挟んで写真から本紙にトレースしました。

トレースした輪郭線を面相筆で骨描きし、

隈取り(陰影をつける)していきます。
ある程度広い面積に濃淡をつけていくには、もう少し太い筆に墨を含ませて塗った方が早いのですが、筆に沢山の墨を含ませて塗ると、たちまち広い範囲に滲んでしまいます。
隈取りも、面相筆で少しずつ重ねる方法にしたおかげで、広く滲む事を防げる事が分かりました。
一方で、この隈取り方法で描くと時間が掛かる事も実感しました。
下図の時は滲まない新鳥の子紙に描いたので、1日で字も絵も描き終わらせましたが、滲む本紙への描画は日を跨ぐ事になりました。
本日はここまで。
2025年5月10日
肖像画完成

肖像画完成しました。
作品的には雪洞として灯された時に隠し絵の仕掛けを仕込みたいので、まだ未完成です。
2025年5月11日
石州紙の裏打ち

裏打ち用のロール石州紙を本紙より一回り大きく切り分けます。

裏打ちの石州紙上に隠し絵を描きたいので、滲み防止にドーサを引きます。

本紙にも、墨が紙の内側まで浸透する様に生紙のうちに字と絵とを書き(描き)終えましたので、この先は裏彩色が染みてこない様に裏からドーサを引きます。

部屋干し用ハンガーの上で乾燥させます。

ドーサが完全に乾いてから、裏打ちします。

裏打ちが完全に乾きました。
明日以降、この状態のまま、裏彩色にて隠し絵の制作に移りたいと思います。
2025年5月13日
裏彩色による隠し絵

雪洞として日没後内側から灯された時に現れる隠し絵は今回臙脂を使います。

溶き終わった臙脂は、透明感を生かしたいので、上澄みだけを使います。

さる方から、「宏三さんはSNSで全てを公開し過ぎ。全て見せない方が、かえって観たくなって展覧会に足を運んで下さる方々が増えるはず」と助言されました。
確かに、僕はSNSを宣伝目的で使ってますが、SNSにてご覧下さるだけで、実際に展覧会場に足を運んでは下さらない方の方が多いと実感してます。
ネットでご覧になって完結ではなく、興味を持って、実物を観たくなって展示機会に足を運んで頂く動機づけとしたいのが本意です。
試しに今回から全貌はSNSで晒さない様にしてみようと思います。
もっとも、裏彩色の一部をご覧になられただけで、僕がどんな図像を描いたか直ぐ判ると思いますが。

ドーサでガッチリ滲み止めしてから裏彩色してますので、表側には臙脂が染み込まず、パッと見には裏彩色がほとんど見えません。
落款を入れ、裏打ちの時の糊代を裁ち落として完成です。
窓に当てて、裏側から光を当てると裏彩色の図像がハッキリ浮かび上がるのも確認しました。
裏彩色の図像がハッキリ浮かび上がった状態をご覧になりたい方は、是非、7/13〜16 みたままつり期間中の夕方〜21時に、靖國神社にご参内願います。

題名と氏名とを書いて作品と同封します。
毎年、「書家」なのに「画家」と掲示されてしまったり、雅号ではなく本名を掲示されてしまう出品者が多数いらっしゃいます。
奉納される作家の方々へ
間違いを防ぐ為にも、署名欄にはご自分の肩書と、作家名とを記入しこれを同封される事をお勧めします。

作品と題名署名した用紙とを、靖國から和紙が送られてきた巻物に入れ、

丸めて筒に入れます。

マスキングテープにて蓋を留めて郵便局の窓口に投函しました。
今年は早めに揮毫雪洞を納めましたので、これから先は7月上旬に予定している自分の個展の準備に専念したいと思います。