見沼の里 Minumanosato
賛助会員として加わっている「NPO法人 見沼の里」のTシャツ原画を描き始めました。
首都高とさいたま新都心の高層ビルを背景とした見沼田んぼに、我々の願いであるホタルを舞わせるイメージの絵を描きます。
2024年7月8日
トレース

見沼田んぼの日没直後の写真を撮ってきました。
スケッチブックのサイズに合わせて拡大コピーし、念紙を挟んでボールペンでなぞり、トレースします。

トレースしたところです。

水を引いて念紙に揉み込んだ木炭の粉を紙に定着させます。
マスキング

ネットのフリー画像から拾ったホタル乱舞の画像を、自分が撮影してきた見沼田んぼの画像とレイヤー合成させ、それを参考にマスキング液でホタルの光を描きます。
右上の絵皿には、筆を保護するための石鹸水を入れてます。
いったん石鹸水に浸した筆にマスキング液をつけて描き、しょっちゅう石鹸水で洗いながら使います。

高層ビルの窓の灯りは、マスキングテープをビル全体に貼り、

輪郭をトレースした後、カッターマットに貼り移し、

輪郭をアートナイフでカットして画面に貼り直します。
彩色開始

水彩のオーロラピンク、ガンボージ、イエローオーカーから塗り始めます。

オーロラブルーとバイオレットとを混色したもので空を塗り、

イエローオーカーにバーントシェンナを混ぜたもので、稲の葉を描きます。

画面全体を洗い、筆跡を馴染ませます。

グリーン3色を混ぜます。
水彩は日本画と違い、混色が容易に出来るので楽です。

田んぼをグリーンで塗りました。

高層ビルのマスキングを剥がしました。
ビルの前に、暗さの基準となる高速道と暗がりになった奥を描こうと思います。

濃淡に変化をつけた墨で田んぼの奥を暗くします。

ビル屋上の灯りや高速道路下に覗く灯りはマスキング液を剥がして露出させます。

ガンボージとオーロラピンクにて灯りを塗ります。

バイオレットで、窓の周りのビルの壁を塗ります。

稲の並びは、右上から斜めに定規を当て、そのガイドラインを参考に縦にランダムに面相筆で影を描きます。
定規を右上から左下に放射状に傾けながら目安に置くことで、稲が規則的に並んで植えられてるパターンが表現できます。
ただの草むらを描く時とは違います。

墨での陰影をつけ終わったところです。

バイオレットでも稲の影をつけて、整然と並んだ感じにします。

平筆を縦にランダムに切る様にタッチを重ね、稲の葉が長く伸びた感じを出します。

最後にバイオレットを全体に重ね、日没後の暗がりにします。

グリーンも全体に重ねます。
ほたるの発光軌跡

完全に乾いたところで、ゴムで擦ってマスキング液を剥がします。

全て剥がし終わったところです。

光り方に階調の変化をつけるため、より明るく光らせたいところだけを狙って、再びマスキング液を塗ります。

エメラルドグリーンとガンボージとを混ぜて黄緑色を作ります。

黄緑色を塗ると同時に既に塗ってあった画面上の緑も溶け、マスキングを剥がしたところも真っ白では無くなってきました。
今晩はここまで。
明日以降は今晩最後に塗ったマスキング液を剥がしてから再開しようと思います。
2024年7月9日

昨晩のマスキング液を剥がしたところです。

黄緑を被せます。

更に暗い緑を重ね、
ホタルの灯りの濃淡の変化と、
田んぼの暗さを深めました。

絵は完成しました。
ビルの灯りやホタルの光の上から蓄光顔料も被せようかと、一時考えが過ぎりましたが却下しました
ただ蓄光顔料を画材として使うだけなら僕自身も10年前にススキノの夜景風景のネオンで既にやっており、他の作家や印刷でも蓄光顔料を使ってる人達がいることを知りました。
Hidden Art の発案の画期的なポイントは、明るい時と暗い時で絵が変わるところにあります。
あと、粒子の粗い蓄光顔料で滑らかな濃淡をつけた光具合にする仕事を加えたら、それだけであと一週間くらいを要すると思われます。
ボランティアで描く作品に、そこまでの手間を掛けるべきでは無いと、作家本能をなだめ、自重しました。
落款

落款を入れます。

金泥が乾いたところで、瑪瑙ベラで擦り光沢を出します。
絵は水彩画ですが、落款だけ、準金泥と膠とで日本画の材料を使いました。
波打の修正

パネルに水張りして描いた訳では無いので、かなり紙が波打ってます。

裏から水を引き、

アイロンシートの上にティッシュを敷いて、

アイロン掛けしました。

不規則な波打ちは無くなりましたが、画面側が少し内側に縮みました。

スケッチブックの余分を切り取り、

タオルの上に伏せます。

裏も、表側同様に縮ませ、相殺すればフラットになるはず。
裏から薄く溶いたドーサを引きます。

乾きました。
だいぶ表裏の均衡が取れてフラット気味になりました。

仕上げは、中身の紙を全て使い果たし、表紙と裏表紙だけになったスケッチブックに挟み、

重しの本を積んで平たくします。
約3時間ほど、この状態にしておきました。

「見沼の里」完成です。
あくまでも我々の夢、目標であり、まだ見沼田んぼに蛍は戻ってきてませんから、この作品は今のところファンタジーです。
ところで画面右下は落款の印が判別しやすいよう、制作段階から明るく残して描き進めてました。
完成後、僕の落款のお尻が蛍の様に光ってるみたいになりました
完成

375 x 250 mm 2024年制作