HiddenArt 「妄想ヌード(ベリーダンサー)」
Delusion nude (belly dancer)
1月5日
トレース~下描き
ベリーダンサーの方を僕の妄想で、隠し絵としてヌードを仕込んで描こうと思いました。
衣装を着たオリジナルの写真から、衣装の一部だけ先にトレースします。
全体像では視認性が悪いと思いますので、部分アップ写真。
彩色(透明水彩)
今回は先に透明水彩にて衣装を描きます。
「蓄光顔料を使った隠し絵画」の技法を考案してから一年間様々な試行錯誤を積み重ねてきて、粒子が粗くて白っぽい蓄光顔料は、むしろ上から被せても良い事が分かってきました。
今回は部分的にその手順で進めてみようと思います。
衣装の部分アップ写真。
上半身は写真をトレースし、下半身は妄想と、アングルの「泉」などヌードの名画も参考に、鉛筆で下描きします。
彩色(蓄光顔料)
蓄光顔料にて上から彩色していきます。
最初の彩色は照明下で、下描きの輪郭線からはみ出さない様に塗ります。
部分アップ写真。
蓄光顔料の隙間から透明水彩で描いた色彩がけっこう覗いて見えます。
本日の最終段階(明)です。
よく分からないと思います(笑)。
本日の最終段階(暗)。
蓄光顔料の二塗目以降は、照明を消して暗闇の中で濃淡を確認しながら立体感をつけて描いていきます。
1月6日
凹凸補修
本日の仕事前のクローズアップ写真です。
蓄光顔料がかなり粗く盛り上がってるのが分かると思います。
下半身のクローズアップ写真です。
この状態からいきなりヤスリ掛けすると、出っ張った鼻や乳首がポロッと取れてしまう恐れがあるので、蓄光顔料で盛り上がった谷間を埋める処理を先にします。
水晶末を溶き、
上下両方向から全体に塗り重ねます。
水晶末の層を通して蓄光顔料が光るのを確認します。
肌の陰影が滑らかに見えるのは、水晶末の層を通過する時、光が乱反射するからだと思います。
完全に乾いた後、紙ヤスリで全体を優しく擦り、粉塵を掃除機で吸い取ります。
ヤスリ掛けした後のクローズアップ写真です。
蓄光顔料と水晶末とがまだらになってますので、見た目は凹凸がある様に見えますが、触るとかなり滑らかになりました。
ヤスリ掛けし終わった段階でも、暗室代わりのトイレで光具合を確認します。
全体を入れた写真だと滑らかに見えますが、近くでみるとかなり粗い光具合です。
ドーサで定着させます。
ドーサが乾いたところで、衣装をつけた写真を被せ、トレースします。
木炭の粉でトレースした線を、練りゴムを転がして薄くします。
視線を上にした天真爛漫な表情を、少し妖しく変えようと思います。
クローズアップだと蓄光顔料の光がかなり粗いのがよく分かると思います。
こちらに視線を向け、誘惑してる様な表情に変えようと思います。
鉛筆で下描きし、
また練りゴムを転がして薄くします。
墨を入れます。
基本的な目鼻口の位置は変えてませんので、今後蓄光顔料での塗り重ね方で表情を変えていくつもりです。
ベール彩色
本日の最終段階(明)。
顔以外に墨で輪郭線を引くと、蓄光顔料が光る時、衣装の輪郭線がハッキリ見えてしまうので、顔以外は透明水彩の濃淡で表現していきます。
本日の最終段階(暗)です。
衣装も薄っすら見えますが、明日以降、再び上から蓄光顔料による彩色をして肌を滑らかにしていこうと思います。
1月11日
ベールの発色をいったんハッキリさせるため顔料を溶きます。
衣装と違い、ベールはほとんど人体の後ろに垂れますので、被覆力の強い顔料での彩色をしても隠し絵の発光の邪魔にならないからです。
ベールを濃くした事で、人体の明るさが際立ちます。
いったんドーサを引きます。
顔料が流れましたが想定内です。
むしろ完全に塗り分けてしまうより、色彩同士が反映された方が良い塩梅になります。
緑色に光る蓄光顔料でヌードを描き起こします。
最近発見した様に、表の絵の上から蓄光顔料を塗っても、表の絵の色彩を隠し切れません。
なので、表の絵を先に描く手順もありですね。
暗くしたところです。
また明日以降もヤスリで均して重ね塗りしながらだんだん滑らかにしていこうと思います。
ベールと床とに群青色に発光する蓄光顔料を塗っていきます。
濃い色にしたベールの上に重ね塗りしたので、蓄光顔料の白っぽさが目立ちますね。
制作をしつつ、技法、手順の試行錯誤です。
決まりきった仕事の繰り返しではありません。
群青色の蓄光顔料は、緑色の蓄光顔料に比べると発光が弱いので、露出を上げて撮影しました。
緑色に発光する肌は、肉眼ではまだこの写真ほど明るく発光してません。
背景彩色
本日のスタート前の拡大写真。
ベールの上に被せた蓄光顔料がかなり粗いのが分かると思います。
紙ヤスリで優しく擦り、掃除機で粉塵を吸い取ります。
ドーサを引いて定着させます。
背景に墨を塗っていきます。
背景に墨を塗ったところです。
仕上げではもっと真っ黒くする予定ですが、まだこの先ヤスリ掛けなどの工程も挟むため、あくまでも完成イメージの確認段階というところです。
床に先ず洋藍を塗り、
次に本洋紅を重ねて塗ります。
人体には緑色に発光する蓄光顔料、
ベールと床には群青色に発光する蓄光顔料を塗りました。
人体のヌードはこんな感じ。
露出を上げて撮影すると群青色も写ります。
1月12日
本日制作前のクローズアップ写真です。
蓄光顔料の粗さが分かると思います。
ちなみに僕は3社から取り寄せた蓄光顔料を使い比べ、その中では一番細かい粒子のメーカーの物を愛用する様になりましたが、概ね粒子が粗い方が発光力は強いようです。
発光力と、絵具としての使いやすさとのバランスで、現在愛用のメーカーの物に落ち着きました。
暗室(トイレ)で確認すると、発光具合そのものはだいぶ滑らかになってきました。
紙ヤスリにて表面を均し、粉塵を掃除機で吸い取ります。
ドーサを引きます。
和紙に直接塗った墨なら動き、流れる事はありませんが、背景の下地にも水晶末が塗ってあり、紙ヤスリで擦った時に墨に染まった水晶末が動くと思ったので、写真左上の→の位置からドーサを引く事にしました。
案の定、ドーサの皿(写真右下)に取れた墨が混ざりました。
人物左側の背景は、画面を180度回転させて、反対側からドーサを引きます。
人物に、背景の墨の汚れを被せないようにする細かな配慮です。
肌色を少しと、衣装のビーズを水彩絵具で再び描きます。
暗くすると、ビーズが斑点状に透けて見えます。
なるべく目立ち難く仕上げていくつもりですが、2つの絵を重ねる、この表現の宿命ですね。
ベールのピンクとブルーとを再び薄く被せます。
今回は裏の彩色、表の彩色それぞれを交互に進める手順で制作してます。
本日の最終段階(暗)です。
1月13日
アトリエ後方のLED照明だけ点灯して途中経過を撮影してみました。
明から暗に変化する途中段階が、まさに男(失礼、僕)の妄想😍を的確に表していると思います。
ヌードはいつもの緑色に発光する蓄光顔料にて彩色し、ベールには群青より明るく発光する青い蓄光顔料を重ね、ベールの立体感も出し始めました。
完全に暗くするとこんな感じです。
やはり、段階的に照明を絞り、途中経過を楽しむのが、この作品の醍醐味になりますね。
1月14日
背景色変更
今日の制作前クローズアップ写真です。
蓄光顔料が粗く乗ってます。
紙ヤスリで擦り、
掃除機のブラシヘッドで粉塵を吸い取ります。
ドーサを引きます。
右下の小さなボトルはハッカ油です。
下地の膠分が強いと、はじいてドーサがムラなく塗れない場合があります。上から被せる絵具やドーサにハッカ油を1、2滴垂らして混ぜると、はじかれずに塗れます。
ドーサを引く時、やはり背景の墨も多少取れます。
背景は当初漆黒に仕上げるつもりでしたが、ステージのカクテル光線の華やかさをイメージし、紫色に変更する事にしました。
先ずは新岩紫群青11番を塗ります。
一塗り目が乾いたところ。
粒子の粗い岩絵具をムラ無く塗るコツは、一気に濃く塗らず、薄塗りを乾かしながら何度も重ねる事です。
一塗り目の時に、下地の墨が絵皿に混じったので、二塗り目の前に上澄みの墨を捨て、
新たに膠を加え、練り直してから二塗り目に入ります。
二塗り目を終えたところです。
二塗り目の背景が乾くまでの間に、小さく千切った紙ヤスリで部分的に発光具合にムラを感じる部分をピンポイントで擦り均します。
粉塵を掃除機で吸い取った後、全体の発光具合を確認します。
まだ完璧ではありませんが、概ね良い塩梅になってきました。
人物とベールだけ、小さな連筆でドーサを引き、蓄光顔料の定着を安定させます。
群青の上に、今度は濃口紅梅13番を塗り重ねます。
これはまず一塗り目。
二塗り目。
三塗り目。
絵皿に溶いた絵具を使い切りました。
これがある程度乾いた状態が、次の写真になります。
本日の最終段階です。
写真では炎かベルベットみたいでゴージャスに写ってますが、実物は単なる筆ムラです。
明日以降、また洗います。
僕の制作進行は「3歩進んで2歩下がる」感じです。
1月15日
背景洗い
筆ムラが気に入らないのでいったん背景を洗います。
上手くいく保証は無いので、思い切った決断が必要になります。
でも、この職業自体が、何とかなるだろうという根拠なき楽観主義で成り立ってるので、何とかなるだろう、何とかする!
まだ未完ですが、照明の当て方に変化をつけて動画にしてみました。
1月16日
背景塗り重ね
先に上げた動画で背景を洗ってる段階を掲載しました。
これは、それが乾いたところです。
昨日は粗い新岩紫群青を使いましたが、今日は微粒子の洋顔料インミンブルーを使ってみます。
まず、下地にインミンブルーを薄く塗ります。
乾いた後、これは昨日と同じ濃口紅梅13番を重ね塗りします。
まず一塗り目です。
こちらは動画でご覧ください。
あくまでも色々なやり方のうちの1方法に過ぎませんが。
主題(今回は人物)を完全に避けて塗るんじゃなくて、いったん主題に背景色も被せ、乾き切らないうちに水を含んだ連筆で拭いとります。
主題と背景とを完全に塗り分けるのではなく、背景の色と主題とが少し馴染んだ方が一体感が出ると思います。
二塗り目ですが、やはりムラ無く塗るのが難しいので、開き直ってこの段階ではわざとランダムに絵具を重ねました。
顔料の性質はそれぞれ違いますので、使用頻度の高い使い慣れた顔料で、ムラ無く綺麗に塗れる技術を身に着けても、絵具の種類が変わると、いつもの様にいかない事があります。
まだらに塗った絵具が乾いたらドーサを引きます。
やはりこの絵具は接着が不安定で、ドーサを引くとかなり連筆に持って行かれて取れてしまいます。
連筆同士が重なると、重なったところは、より絵具が取れてしまうので、数ミリ隙間を空けて引きます。
ドーサ、一引き目。
連筆の位置をズラして二度引き目。
これで一引き目に空けた隙間にもドーサが引けた事になります。
相変わらず連筆の先に取れた絵具が着いてるのが分かると思います。
二度のドーサが乾いたところです。
この段階で和紙に食いついてる絵具は接着が強いと思いますので、明日以降、この絵具の凹凸を足掛かりにして、また塗り重ね、ドーサを引くという作業を繰り返してみようと思います。
1月17日
先に上げた動画で紹介した一塗り目を終えたところです。
三塗り目を終えたところ。
七塗り目を終えたところです。
一塗り目は横方向
二塗り目は縦方向
三塗り目は斜め方向というように、毎回連筆を動かす方向を変えて重ねていきました。
ドーサを引きます。
人体に被った背景色はドーサが乾く前に水を含ませた連筆で洗い取ります。
方向を変えて反対側からもドーサを引きます。
ドーサの絵皿に取れた絵具が混ざりますが、一引き目の時より絵皿に混ざった絵具が少なくなってるのが分かると思います。
二度引きドーサが乾いたところです。
まだまだらですが、ドーサを引く時に余分な絵具が取れて、和紙に馴染んだ絵具が残る事で柔らかなまだら状態になります。
最初に溶いた絵具が七塗りで使い切りました。
いったんドーサで画面の絵具を定着させた後、再び同じ顔料を溶いて更に塗り重ねようと思います。
朱など幾種類かの顔料は、いきなり膠液を加えても、はじいて逃げてなかなか絡んでくれません。
少量のアルコール(お酒)で練った後、膠を加えると良いと大学で教わりましたが、アトリエに酒があると、たちまち学生達の胃の方へ(笑)。
少量のお酒を垂らすというのも難しいのですが、天王洲アイルのPIGMENT(ピグモン)という画材店にて分散剤という商品を見つけました。
これは必要な分を一滴垂らすのに使い勝手が良いです。
膠と一滴垂らした分散剤とで微粒子の顔料を練ると馴染みやすいです。
八塗り目からは、主に絵具が薄いところを狙って塗っていきますが、水分を含んでいるうちはいったん暗くなりますので、乾いて様子を確認するまでは適量が塗れたかどうか分かりません。
まだら状態ではありますが、おおむね満遍なく塗れました。
むしろ鮮やか過ぎて主題の人物よりも出しゃばり過ぎですが、最後のドーサで余分を落とせば丁度良い塩梅になると思います。
ドーサ、一引き目
二引き目
乾いた状態の全体像です。
まだらですが柔らかくボケてくれました。
この作業を繰り返していけば完全にフラットに塗る事も可能ですが、それでは下に塗った群青の意味がありません。
紅梅の下から覗く群青とのバランスが程よいところで背景の仕事はいったん終了とします。
クローズアップで撮ると絵具の粒子や和紙の繊維の粗さが分かります。
完全にフラットに塗るよりも、顔料や和紙の風合いも残しつつ、全体のバランスも見ながら描き進めていきます。
1月20日
カムフラージュ(水晶末)
ヘアーなど、裏の絵で発光させず暗く見せるところは相対的に絵具の層が薄くなってます。
画面の絵具の厚みをなるべく均一にするため、こういう場所に水晶末を塗っていこうと思います。
水晶末を塗ったところです。
暗くすると乳首が黒くなり過ぎました。
妊娠中か授乳中の様な感じですね。
これは後から薄く蓄光顔料を塗って微調整します。
小さく千切った紙ヤスリで、水晶末を均します。
水晶末を塗った場所だけにドーサを引きます。
墨や水彩絵具で彩色します。
次に蓄光顔料にて裏の絵をさらに描き起こします。
乳首の周りの乳輪にも薄く蓄光顔料を被せ微調整してます。
蓄光顔料にて裏の絵を描いても、表の絵も悪く無い感じです。
アトリエの照明をつけては水晶末にて衣装を白く描き起こし、
照明を消しては蓄光顔料にて裏のヌードを描き進めます。
表から裏から交互に責めます(笑)。
いや、独身男の妄想に過ぎませんので、笑ってお許し下さい。
表の現段階クローズアップ
裏の現段階クローズアップです。
1月21日
ドレス装飾
まず、いつもの様に紙ヤスリで蓄光顔料の凹凸を均します。
今回は背景の顔料は落としたくないので、小さく千切った紙ヤスリで人物部分だけにヤスリを掛けました。
暗くして確認します。
ドーサもヤスリ掛けした人物部分だけに引きました。
ドレスの装飾には特殊な絵具を使ってみます。
左から
カラー スペース イエロー
アークティック ファイアー
ラピスサンライト
いずれも雲母の様な半透明のシリカフレークを基材とし、酸化チタンや酸化鉄などの金属酸化物を被覆させた顔料で、角度を変えると螺鈿の様に色が変化しながら光ります。
イエローはあまり変化はありませんが、
アークティック…は青っぽい色が確度を変えるとピンクに見え、
ラピスサンライトはピンクっぽい色が、確度を変えると青っぽく見えます。
絵皿に溶いた後、自分でどちらの顔料か区別がつくようにマスキングテープに頭文字を書いて絵皿に貼っておきました。
前日に余った和紙の切れ端に、やはり余った蓄光顔料を塗ったおいたものに、アークティックファイアーをちょんちょんと塗って、
電気を消して確認します。多少暗くなりますが、完全に被覆する訳ではない事が確認出来ました。
アークティックファイアーから点々を打つ様に塗っていきます。
クローズアップ写真
照明を消して確認します。
それほど影響は出てないのが確認出来ました。
ラピスサンライトやカラースペースイエローも載せて、衣装が華やかになりました。
角度を変えると、より色を伴って光ります。
この後、肌色、髪、ベールなどにも蓄光顔料の光を塞がない程度に仕上げの色を彩色して完成させました。
「妄想ヌード(ベリーダンサー)」完成(明)
白いドレスだと裏の蓄光顔料によるヌードが良く視えます。
妄想ヌードシリーズ、次は白衣の天使あたりでしょうか(笑)。
赤い背景でしたので、今回、落款の印は金泥をつけて押しました。
「妄想ヌード(ベリーダンサー)」完成(暗)