分福茶釜 Bunbuku Chagama

Hidden Art は変化する絵です。
変化・変身と言えば、日本昔話からもネタに出来そうだと考え、
新作 Hidden Art として、日本昔話より「分福茶釜」を画題に制作することにしました。



2024年8月10日

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 取材

「分福茶釜」が奉納されてる群馬県館林市の茂林寺まで取材に出かけてきました。
茂林寺境内には沢山の茶釜狸や、狸の像が飾られてます。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 取材

茂林寺の駐車場は、観光の拠点として無料で沢山停まれる観光駐車場が用意されてました。

混雑を避けて平日に訪れましたが、これなら休日でも余裕で駐車出来そうでした。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 取材

駐車場脇の公衆トイレから、すでに狸の像が立ってます。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 取材 茂林寺

茂林寺山門

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 取材 茂林寺

本堂に向かう参道の両脇に狸像が並んでます。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 取材 茂林寺

奥の仏像より存在感のある狸像

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 取材 茂林寺

仏様の由来は字が薄れて読めませんでした。
狸に存在感を奪われ、泣いてるみたいでした😅

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 取材 茂林寺

本堂脇のお堂にも

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 取材 茂林寺

子狸達が沢山いました。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 取材 茂林寺

本堂正面から

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 取材 茂林寺

茂林寺に伝わる「分福茶釜」を拝見するためには拝観料300円を払って、本堂右側から上がらせて頂きます。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 取材 茂林寺

聖観世音菩薩像

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 取材 茂林寺

天井から駕籠が吊るされてました。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 取材 茂林寺

狸の剥製。
写実的な作風の僕にとっては、剥製の展示もありがたかったです。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 取材 茂林寺
日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 取材 茂林寺

剥製を擬人化したキャラクターとして作ったものも沢山ありました。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 取材 茂林寺
日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 取材 茂林寺

茶釜狸も沢山置いてあり、作画の参考になります。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 取材 茂林寺

本物の「分福茶釜」は撮影禁止となってましたので、この写真の上からフレームアウトさせて撮りました。

正直言って、特段特徴のある茶釜ではありませんでした。

本物の再現にとらわれず、寺院内に置かれた他の茶釜の形も参考にして、ある程度自由な解釈で描こうと思います。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 取材 茂林寺

画も色々と飾ってありました。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 取材 茂林寺
日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 取材 茂林寺

「光輝」(で良いのかな?)と落款の入った日本画も展示されてましたが、オリジナルの「茶釜」を始め、画や置物は全て寄贈された物の様に感じました。

Hidden Art「分福茶釜」が完成した後、
茂林寺さんにご購入頂く作戦は通用しなさそうだと勝手に感じました😅

職業画家で、ご購入頂けないと収入が得られませんから、常に新作に取り掛かる時も買い手がつきそうな題材を考えます。

職業である以上、不純な動機ではなく、経営者として真っ当な制作動機だと思います。


2024年8月15日

近くの古民家を二箇所取材してきました。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 取材 浦和くらしの博物館民家園

最初は浦和くらしの博物館民家園

資料館には古道具も展示されてますが、残念ながら茶釜はありませんでした。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 取材 浦和くらしの博物館民家園

こちらの古民家で囲炉裏の撮影は出来ました。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 取材 浦和くらしの博物館民家園
日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 取材 旧坂東家住宅見沼くらしっく館

お次は旧坂東家住宅見沼くらしっく館

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 取材 旧坂東家住宅見沼くらしっく館
日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 取材 旧坂東家住宅見沼くらしっく館

こちらも古い農具や

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 取材 旧坂東家住宅見沼くらしっく館

台所道具などが展示されてましたが、

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 取材 旧坂東家住宅見沼くらしっく館

やはり茶釜はありませんでした。

こちらでは毎日囲炉裏に火が焚べられてますので、それは撮影出来ました。

でも、火に焚べられた場面から狸に変身する場面では無く、囲炉裏端に置かれた茶釜から変身させようと思ってます😅

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 取材 旧坂東家住宅見沼くらしっく館

この場所は、Hidden Art「春の影」の場面として描きました。
夏は簾が掛けてありました。


2024年8月17日

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 取材 千葉県立中央博物館

狸の剥製展示の取材のために、千葉県立中央博物館に行ってきました。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 取材 千葉県立中央博物館

お目当ての狸の剥製はもちろんありました。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 取材 千葉県立中央博物館

こちらは骨格と剥製とを並べての展示です!
狸の前足の親指の位置が骨格模型で良く判りました。
人間も動物も描くに当たって骨格を知ってる事は大切です。
至れり尽くせりの博物館です!

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 取材 千葉県立中央博物館
日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 取材 千葉県立中央博物館

第六展示室「自然と人間の関わり」コーナーです。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 取材 千葉県立中央博物館

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 取材 千葉県立中央博物館
日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 取材 千葉県立中央博物館

狸の剥製3体目!

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 取材 千葉県立中央博物館

千葉県立中央博物館

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 取材 千葉県立中央博物館 屋外展示の生態園

屋外展示の生態園も楽しみにしてましたが、室内展示が充実してて、それを観てるうちに16時30分を過ぎてしまい、入れませんでした。

生きた狸が見られるかもしれないとの期待もありましたが…

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 取材 千葉県立中央博物館 散策路

やはり、周辺に狸がいるようです。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 取材 千葉県立中央博物館 散策路

生態園以外にも昔ながらの散策路が残ってました。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 取材 千葉県立中央博物館 散策路
日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 取材 千葉県立中央博物館 散策路
日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 取材 千葉県立中央博物館 散策路

芸術文化ホール脇の彫刻作品まで、生態を感じさせるものでした!


2024年8月18日

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 取材 深川江戸資料館

本日は茶釜が置かれてるロケ地の取材で、深川江戸資料館 他を回ってきました。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 取材 深川江戸資料館

ちょうど「お化けの棲家」という企画展が催されてました。

常設展示の照明を落として、江戸の民家にお化けや妖怪を配置展示してるとの事でした。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 取材 深川江戸資料館

1階入口から地下展示室の屋根を見下ろしたところです。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 取材 深川江戸資料館

分福茶釜みたいな妖怪がいました。
「なき茶釜」と言うそうです。

分福茶釜の絵本でも、最初お寺の小僧さん達がゴシゴシと茶釜を洗ったら「痛い、痛い」と茶釜が声を上げたという場面があります。
この妖怪の話と分福茶釜本来の由来がミックスされて、分福茶釜の物語が出来たのかもしれませんね。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 取材 深川江戸資料館

「ゴトク猫」江戸の民家はほとんど長火鉢でした。

囲炉裏の様な形態は田舎特有なのかもしれませんね。
分福茶釜のロケーションは、さいたまの古民家の囲炉裏端にしようと思いました。

照明が暗いせいで、今回スマホで撮った写真は半分くらい手ブレのピンボケ写真になってしまいました。

もちろん作画資料様には一眼ミラーレスカメラでの撮影もしてます。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 取材 深川江戸資料館

「なき茶釜」以外に茶釜所有の民家、商家はありませんでした。

展示室の外に伝統技能を現代に引き継いでる職人さんの作品展示があり、お茶道具の展示もありました。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 取材 芭蕉記念館

茶釜や茶室の展示が観たくて、
芭蕉記念館というところも訪れました。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 取材 芭蕉記念館

芭蕉は旅先で俳句を作る人だった為か、茶室を構える様な人では無かった様です

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 取材 芭蕉記念館

芭蕉記念館の庭にある小さな芭蕉堂

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 取材 芭蕉記念館

萬年橋を清澄公園側に渡ったところに柳の下の公衆電話がありました。

電話ボックスの中にのっぺらぼうなど幽霊が現れるHidden Art は、直ぐに思いつくアイディアなんですが、もっとHidden Art 及び日本画家佐藤宏三がメジャーになって、じゃんじゃん売れる様になったら幽霊や妖怪を題材にした作品も売れると思いますが、

有名人気作家になってからじゃないと、怖いHidden Art 作品は売れないだろ〜な〜と思います。


2024年8月22日

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 取材 江戸東京たてもの園

江戸東京たてもの園のパンフレット

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 取材 江戸東京たてもの園

東京中から、歴史的建物を移築して、明治、大正、昭和の街並みを再現した屋外型の江戸東京博物館分館だそうです。

長期改築休館中の江戸東京博物館も面白いですが、屋外型のこちらの方がよりリアルに臨場感を体感出来ます。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 取材 江戸東京たてもの園

2・26事件の現場にもなった高橋是清邸から見学スタート。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 取材 江戸東京たてもの園
日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 取材 江戸東京たてもの園

高橋是清邸の庭

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 取材 江戸東京たてもの園

東の下町ゾーンです。正面に銭湯が見えます。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 取材 江戸東京たてもの園

荒物屋の丸二商店。
各建物は中も見学出来ます。

鍋や金物、生活雑貨は色々と置いてましたが、茶釜はありませんでした。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 取材 江戸東京たてもの園

三省堂は現在は本屋のイメージがありますが、元々は文房具屋がメインの様でした。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 取材 江戸東京たてもの園

小寺醤油店

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 取材 江戸東京たてもの園

万徳旅館

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 取材 江戸東京たてもの園

懐かしい蚊帳が吊ってありました。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 取材 江戸東京たてもの園

正面の銭湯 子宝湯

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 取材 江戸東京たてもの園

農家の天明家

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 取材 江戸東京たてもの園

囲炉裏がありました。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 取材 江戸東京たてもの園

万世橋交番

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 取材 三井八郎右衛門邸

三井八郎右衛門邸

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 取材 三井八郎右衛門邸

三井邸は特に豪邸でした。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 取材 三井八郎右衛門邸

玄関先から絵が飾ってあり、

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 取材 三井八郎右衛門邸

至る所に絵がありました。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 取材 三井八郎右衛門邸

応接室

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 取材 三井八郎右衛門邸
日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 取材 三井八郎右衛門邸

茶室もありましたが、分福茶釜の舞台としては格調が高過ぎです。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 取材 三井八郎右衛門邸

現代の富裕層も、こうして家中至る所に絵を飾って下さると、我々画家への需要も増してありがたいのにな〜と希望します。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 取材 三井八郎右衛門邸

最後もまた別の農家。
こちらは吉野家さんだったかな?

飯を炊くお釜は沢山ありましたが、

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 取材 三井八郎右衛門邸

囲炉裏にもヤカンが吊るされてるだけで、今回も茶釜は見つけられませんでした。

背景の場面としては、この囲炉裏端を参考にして、茶釜は最初に取材した茂林寺で観たものを参考に、構図を練ろうと思います。


2024年8月24日

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 下図制作

先ずはクロッキー帳に茶釜と狸とを合体させたスケッチと、
構図を決めるスケッチをしました。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 下図制作

だいたいの構図がイメージ出来たところで、本画サイズ P15号のパネルに水張りした画用紙に下図を描き始めます。

茶釜や狸が、ほぼ実物大になると思います。
実物大という事もリアリティーを感じさせる為に大事な要素ですので、モチーフ選びと画面サイズの決定とは、僕の場合リンクしてます。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 下図制作

垂直、水平に補助線を引いて楕円を整えながら描いていきます。

絵画全般の表現としては、フリーハンドで多少歪んでも味わいが出るので、それはそれでありです。

でも、僕の場合は狸も写実的に描写するつもりですので、作品全体に写実的な統一感を出すため、人工物も正確に描く訳です。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 下図制作

縄製の座布団の上に茶釜を置いた場面にしました。

縄の楕円も沢山描かなきゃいけないので、形を合わせるのは結構大変です。

正確な描写力が求められる藝大日本画専攻の受験勉強経験者なら、正確な楕円を描くのが案外大変な事が経験済みだと思います。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 下図制作

鉛筆による下描きで、だいぶイメージがハッキリしてきました。

ものすごくシンプルな構図ですが、曖昧にごまかさず、写実に説得力が込もるのには裏付けがあります。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 下図制作

下図制作に取り組む前に、分福茶釜が納められてる「茂林寺」を皮切りに、計5日間掛けてあちこち取材に出掛けました。

昔話のフィクション、ファンタジーであっても、僕の表現スタイルとして、リアリティーを出すための徹底した下準備を重ねてきた訳です。

一作毎に違うアイディア、テーマに取り組むため、描き慣れ熟知したモチーフを量産するのとは訳が違います。

制作に入り始めてからの技術や労力が傍目には分かりやすいと思いますが、実は制作に取り掛かる前の準備段階も手を抜かない事を知って頂きたいと思いました。

安い価格では売れない訳がご理解頂けると思います。
本物の価値を見抜ける、お目の高い方や法人にこそ、お買上げ頂きたいです。


2024年8月26日

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 下図制作

縄を描きます。

緊縛画以外で縄を描くのは初めてかもw

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 下図制作

岱赭棒を溶きます。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 下図制作

縄目を描きます。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 下図制作

岱赭で一通り縄目を描いたら、

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 下図制作

練りゴムを転がして余分な鉛筆の粉を取ります。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 下図制作

洋紅棒や本藍棒も溶かし、茶色を暗くします。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 下図制作

縄目をハッキリさせます。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 下図制作

さらに群青棒も溶かし混ぜて、より暗い茶色にします。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 下図制作

床の木目を描きます。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 下図制作

岱赭棒とガンボージとを溶かし混ぜて、

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 下図制作

縄の座布団を塗ります。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 下図制作

群青棒をさらに加えてグレーを作ります。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 下図制作

茶釜を塗ります。

明るい状態では狸の首も茶釜色で塗ります。
墨で彩色すると光を通さず、狸の首が光らない恐れがあるので、墨よりは光を通す染料系絵具を混色したグレーで彩色する必要があると思います。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 下図制作

棒絵具やガンボージを溶いて
紫、青、黄色を溶きます。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 下図制作

蓄光顔料で高輝度なのは
緑、青、次いで群青色になります。

この3色の塗り分けで狸を表現しますので、下図段階から、蓄光顔料の使い分けをイメージした色で彩色していきます。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 下図制作

脚や目の周り等は、周りを光らせて、暗くする事で見せようと思いますので、墨で塗ります。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 下図制作

全体に薄く色を重ねて全体を整えます。
本日の最終段階です。

明るい時は狸の存在が見えません。
蓄光顔料の輝度を生かすためには表の絵をあまり濃く出来ませんが、これじゃ色味が乏しく寂しい印象です。

ちょっとアイディアが閃いたので、明日以降、それを試してみようと思います。


2024年8月27日

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 下図制作

昨日の最後に、彩りに乏しいと書きました。

ネットから拾った複数の画像を参考に、柿の実と葉を足します。

受験生時代、美大進学予備校講師、カルチャーセンターで指導してた時は本物を観て何度も描いた事のあるモチーフですので、ネット画像の参考でもそれらしく描けると思います。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 下図制作

アクリルガッシュのホワイトで明るく描き起こし、薄墨で影を入れます。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 下図制作

水彩絵具で、彩色していきます。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 下図制作

様子を見ながら、少しずつ塗り重ね、濃くしていきます。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 下図制作

下図完成です。

画面構成場、彩りを添えるのが目的で配置を思いついた訳で、正直、深い意味はありません。

単純に好物の匂いに本能的に反応して、茶釜がついつい本性を現してしまったという程度の思いつきです。

でも、たぶんこの作品をご覧になったお子さん達は、それ以上の物語を想像してくれるんじゃないかと思ってます。

展覧会場で子供達の感想の中から、上手い解釈があれば「そうそう、よく分かったね!そうなんだよ!」って、作画意図を採用させてもらおうと思いますw

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 本画制作の準備

本画用に和紙を切り取ります。
最近は絹本での制作が多く、和紙に描くのは久し振りです。

山梨県身延町の山十製紙製の、楮50%+マニラ麻50%の手漉き和紙です。

パネルは軸装するため作品を剥がした「八十八夜」が張ってあった物を流用します。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 本画制作の準備

明礬を加えてないドーサを表側に引きます。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 本画制作の準備

室内干し用のラックの上で乾かすと乾燥が速いです。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 本画制作の準備

表側からのドーサが乾いたら裏からもドーサを引きます。

裏の方が繊維の凹凸があって和紙の風合いが出るので、裏から描くかもしれません。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 本画制作の準備

裏からのドーサもラックの上で乾燥させて、今晩の仕事はここまで。

表に描くか、裏に描くかの判断は、明日水張りする時に決断しようと思います。


2024年8月28日

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 下図制作

これが昨晩完成させたと思った下図です。
が、投稿後、晩酌しながら眺めて「暗くなって狸が現れた後ならともかく、昼間明るい場面で、こののっぺりとした味も素っ気もない茶釜じゃ絵にならないな〜」と思いました。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 下図制作

実際に茂林寺に収蔵されてる伝説の分福茶釜は、実物の撮影こそ禁止でしたが、この色褪せた紹介記事に掲載された写真をご覧頂ければ分かる通り、茶釜というより炊飯用のお釜の様にシンプル過ぎて、絵にするには味わいが無いな~と感じました。

オリジナルに敬意を表して下図を描いてみましたが、どっちみちフィクション、ファンタジーな物語の絵ですので、本物に囚われずに「絵」になりそうな茶釜に描き代える事にしようと思います。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 裏打ち

当初は、和紙の繊維を生かす裏側に描けば、もう少し表情豊かな風合いが出せるかもと期待してましたが、下図がいったん完成して、酒を飲みつつしばらく眺めて、この、のっぺり退屈な茶釜が主役じゃ、長く目を惹きつける魅力は出せないと思いました。

僕は展覧会で見せるだけじゃなく、お買上げ頂いて毎日眺めても飽きない絵を描く事を心掛けてますので、作者本人が最初の鑑賞者として、毎晩観ても見飽きない絵に成りそうか確認しているという訳です。

前置きが長くなりましたが、結局、和紙の風合いに頼らず、描写を複雑にして味わいを増す事に決断し、本紙の裏打ちも通常通り、本紙の裏側に石州紙を貼ることにしました。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 裏打ち

裏打ちの下敷きにするのに、40号のパネルを引っ張り出してきました。

普通のご家庭じゃ長辺が1m超えの40号でも大き過ぎて買ってもらえませんから、何年もの間、こんな大きなパネルに描いてませんが、早く売上が回復して、100号を超えるような大作の依頼が来て欲しいです。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 裏打ち

垂直気味に立て掛けて裏打ちの石州紙を貼ります。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 取材 東京国立博物館

さて、今回は6日目の取材地として
東博=東京国立博物館に、またまたやってきました。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 取材 東京国立博物館

常設展会場だけでも5つの会場が観て回れます。
結局、茶釜は本館の「日本館」でしか観られませんでしたが、他の館の常設展会場も一通り回って、茶釜以外にも興味深いものも見つけました。

日頃から目的物以外のものにも興味を持って記憶に残しておけば、将来のネタのストックになります。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 取材 東京国立博物館

作画の角度に合わせ、斜め方向からも写真を撮っておきます。

東博の良いところは、常設展示は一部を除いてほとんど撮影がOKなところです。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 取材 東京国立博物館

上2枚の茶釜のキャプションです。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 取材 東京国立博物館

お次はこんなのもありました😄
狸に成りかけの途中みたいで面白いですよね。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 取材 東京国立博物館

上の写真のキャプションです。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 取材 東京国立博物館

茶器を集めた展示コーナーにも1つ飾られてました。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 取材 東京国立博物館

上の写真のキャプションです。

味わいはありましたが、狸が化ける茶釜が錆びついててはいけないと思いましたので、

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 取材 東京国立博物館

最後の手段は、ミュージアムショップで専門書を探しました。

ありました!
オール茶釜だけの図録です。

明日から、この図録に載ってるデザイン、模様を参考に下図の茶釜を描き変えていこうと思います。

前にも書きましたが、制作前の構想段階で妥協しない事が(描き損じが許されない日本画においては特に)大事な事です。

気持ちを新たに明日から仕切り直しです!


2024年8月29日

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 裏打ち剥がし

大きなパネルに仮張りした本紙と裏打ち紙とが24時間以上経って完全に乾いてます。

一回り大きくはみ出した裏打ち紙の端だけに、連筆に含ませた水を三、四度引き、湿らせて糊を溶かします。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 裏打ち剥がし

プラスチック製のパレットナイフを差し込み、剥がします。

はみ出した裏打ち紙は、剥がれた部分もあれば、水で湿った事により、破れて剥がれた部分もあります。
使うのは内側ですので、全ての端が綺麗に剥がれなくても構いません。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 裏打ち剥がし

ただし、仮張りに使用した40号のパネルは次も繰り返し使用出来るように表面を綺麗にしておく事が大切です。

剥がし切れなかった裏打ち紙と、剥がせた部分にも糊が残ってますので、そこにまた四度くらい連筆で水を引き、たっぷり湿らせます。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 裏打ち剥がし

水分を含んでふやけた糊と残った裏打ち紙とをパレットナイフで剥がし取っていきます。

パレットナイフはパネル表面のベニア板の木目に沿って動かします。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 裏打ち剥がし

ティッシュペーパーの上に、ふやけた糊と、ふやけた裏打ち紙の端とを乗せて拭い取ります。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 裏打ち剥がし

その後、雑巾で綺麗に拭き、

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 裏打ち剥がし

仕上げにエタノールの消毒液をスプレーし、わずかにパネル表面に残った糊のデンプン質からカビが発生する事を防ぎます。

こちらのパネルも完全に乾いてから収納します。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 水張り

裏打ちした本紙を机の上に置き、さらにその上からパネルを伏せます。

水張りに必要な糊代幅を残して余分は断ち切ります。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 水張り

余分を断ち切り終わったところです。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 水張り

水張りに取り掛かります。

先ずは「水刷毛」で縦縦、横横と格子状に軽く水を引きます。

紙に余分に水分を含ませ過ぎて、膨張させ過ぎないのが日本画制作に最適な水張りになります。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 水張り

水刷毛にいったんボウルに貯めた水を含ませ、
その後、ラーメンの湯切りの様にボウルの上で余分な水を切ります。

水刷毛は櫛の様にギザギザになります。

この状態で、縦縦、横横と、本紙の裏面に格子状に最低限な湿り気だけを与える訳です。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 水張り

写真だと見づらいかもしれませんが、格子状に水が引かれてるのが分かるでしょうか。

日本画の岩絵具は膠を接着剤として描きます。

膠は固体状のものを、何十倍もの水に溶かして液体状にしてから絵具と絡め、塗ります。
水分が蒸発し、元の固体に戻りながら絵具もろとも紙に接着するわけです。

絵具やドーサを重ねるたびに、塗られた膠と共に本紙も縮んでいくことになります。

ですので、日本画つまり膠を接着剤とした絵を描く場合は、水張り段階で余分な水分を本紙に与え、膨張させきったところで水張りすべきではありません。

制作前からゆとりなくピーンと張った和紙に、制作によって膠を重ねていくと、さらに本紙はどんどん縮んでいきます。
丈夫な和紙であれば、木製パネルの方が縮みに引っ張られて反ってきます。
弱い和紙や、水張りの糊付けが不十分だった場合は、画面が裂けたり、水張りが剥がれる可能性があります。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 水張り

少ない水分とはいえ、表面が濡れてるうちに直ぐに表にひっくり返すのも良くありません。

表面が濡れてるうちに直ぐに表にひっくり返すと、パネル表面または下貼りの紙の表面と、本紙とがくっつき、四辺の糊代を均等になるようにする位置の微調整がし難くなるからです。

水刷毛で本紙裏に格子状に軽く水を引いてから、3分間くらいは待ち、本紙の内側に水分がしっかり吸い込むのを待ってから、表側にひっくり返すのが良い方法です。
3分間待つ間に、水張りテープを四辺分ちぎり用意するのが良い手順だと思います。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 水張り

本紙を表にひっくり返し、四辺の糊代幅が均等になるよう本紙の位置を微調整します。

表面に浮いてた水分がしっかり本紙内部に浸透し、均等に伸びてますから明らかな凹凸の出来るような皺も出来ません。

側面に折り込む折り目を軽くつけてから、水張りテープで側面に糊付けしていきます。

水張りテープという近代的な物を使うより、本紙側面に生麩糊を塗って糊付けする方が伝統的、本格的と思われる日本画家の方もいらっしゃるかもしれませんが、僕の場合は水張りテープの方が合理的です。

パネルに水張りして描いた作品を、後年掛軸に軸装し直す可能性があります。
お買上げ下さるお客様のリクエストに応じて、額装で発表した作品を軸装するケースもこれまで沢山経験済みですので、水張りテープで水張りした方が断然合理的なんです。

もっとも、今回の「分福茶釜」は蓄光顔料で厚塗りになりそうですので、丸められる軸装には向かない仕上がりになる可能性がありますが。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 水張り

最後の四辺目に水張りテープを貼ったところです。

先ずは本紙の糊代部分だけに水張りテープをしっかり貼り付け、その後、本紙画面の四隅が浮かない様に上から掌で優しく押さえながら側面に折り込んでパネル側面に密着させます。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 水張り

水張り完成です。

今回の投稿は、説明がくどく感じられたかもしれませんが、水張り経験者で、もっと綺麗に水張り出来るようにしたい読者を想定し、詳しく説明しました。


2024年8月30日

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 下図制作 茶釜の変更

茶釜の修正には、上から薄い和紙を貼って直そうと思います。

山梨県身延町での紙漉き工房、見学&体験モニターツアーの時に自分で漉いた紙が、薄さ、サイズ的にも最適でしたので、これにドーサを引きます。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 下図制作 茶釜の変更

室内干し用ラックで乾かし、もう片面も同様にドーサを引き、乾かしました。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 下図制作 茶釜の変更

表裏両面からドーサを引いて乾いた和紙は、少し波打ってます。

また、自分で漉いた紙は一部裂目がありました。
なので本画用には使えず、下描きや試し描きで使えたら良いと思って取っておいてありました。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 下図制作 茶釜の変更

水刷毛で縦縦、横横に格子状に軽く水を引き、

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 下図制作 茶釜の変更

アイロンで伸ばそうと思います。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 下図制作 茶釜の変更

アイロンを掛けた後です。

多少の凹凸がありますが、大丈夫です。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 下図制作 茶釜の変更

泉屋博古館編集の茶釜の図録から、これを選びました。

まさに絵に描いたような、茶釜らしい茶釜ですw

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 下図制作 茶釜の変更

図録をスキャンし、現状の下図の写真と重ねて、ピッタリ重なる大きさに拡大します。

ただし、これをそのままトレースする訳にはいきません。茶釜の向きを変えて、見下ろす角度も変えて、自分の手で描く必要があります。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 下図制作 茶釜の変更

自分で手描きするにしても、同サイズに拡大し、プリントアウトしたものと見比べながら描くと描き易いと思いました。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 下図制作 茶釜の変更

自作の手漉き和紙をマスキングテープで下図に仮留めし、差し替える事にした茶釜を描き始めます。

取っ手(鐶付=かんつき)や、正面のレリーフの向きを変えるのと、見下ろした角度も違うので、楕円のふくらみも前後に膨らませる必要があります。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 下図制作 茶釜の変更

仏様の螺髪(らほつ)の様なドット模様の配列を確認しやすくするため、赤ボールペンで5列おきになぞります。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 下図制作 茶釜の変更

先ずは模様の配列を茶釜本体の形状に沿って当たりをつけていきます。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 下図制作 茶釜の変更

取っ手やレリーフは後から描く事にして、先ずはひたすら均等かつ、丸味に合わせ、配列の当たりを何度も描いたり消したりしながら整えていきます。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 下図制作 茶釜の変更

だいぶ配列の当たりが整いました。

同業者なら分かって貰えると思いますが、整然と揃った配列を立体的な形状に合わせて描くのはかなり大変な事です。

今日一日は、ほとんどこれだけに費やしました。


2024年9月1日

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 下図制作 茶釜の変更

最初は下図の参考にする写真を汚すのを嫌って、見え難い赤ボールペンで補助線を引いてましたが、下図の参考にする写真は新たにもう1枚プリントアウトすれば良いと思いつき、補助線の視認性を高めるため、赤い顔料インクのマーカーで描き、下図の下描きと見比べる事にしました。

概ね良く描けてると確認出来、安心しました。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 下図制作 茶釜の変更

首のくびれ具合だけ、少し絞りました。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 下図制作 茶釜の変更

狸の首が生えてくる正面に松が描かれたレリーフの位置を決め、取っ手が斜め向きになる位置に描きます。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 下図制作 茶釜の変更

蓋、取っ手、松のレリーフと、補助線が交差した部分にドットを墨で描きました。

鉛筆だけで下描きを進めると、いったん描いたところが擦れて不明瞭になってしまいますので、現在確定したドットを墨で描いて定着させる手順でいきます。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 下図制作 茶釜の変更

次にそれぞれの補助線線の間に二分割した補助線を鉛筆で入れます。

これをさらに二分割すれば、5列おきに入れた補助線の間の全てのドットが入れられる事になります。

今日は、たったこれだけしか進みませんでした。

これまでは大谷選手の打席だけ制作の手を止めて、メジャーリーグ中継を見ながらも制作出来てましたが、ドジャースとダイヤモンドバックスの点の取り合いから目を離せなく、試合終了まで仕事に取り掛かれませんでした😅


2024年9月2日

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 下図制作 茶釜

列を二分割した補助線の交差部分に墨汁でドットを描きます。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 下図制作 茶釜

さらに鉛筆で、それを二分割=トータル四分割します。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 下図制作 茶釜

拡大図です。回り込み部分は補助線が込み入り、ドットを整然と描き切れるか自分でも100%の自信は持てません。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 下図制作 茶釜

やはり、ドットを墨汁で入れてみて、配列に乱れが生じてる(向かって左肩の乱れが分かりやすいです)事に気づきました。

数日前は、補助線段階で本画へのトレースも考えてみましたが、やはり下図で上手く描けるか確認してから本画制作に移行しようと思い直して正解でした。

補助線だけでは気づけなかった配列の乱れを、墨汁でドットを描き入れる事で気づけて良かったです。
下図段階で修正してから本画に入ろうと思います。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 下図制作 茶釜

本日は、ここまで。

手、指が痺れてきましたし、明日も墨汁による描写の続きからスタートしますから、あえて切りの良いところまで済ませずに、残り、もう少しで出来そうという段階から描き始める方が、スタートからモチベーションを高められます。

今日は大変な描写の一日でした。
ひたすらドットを描き続ける仕事でしたので、

「草間彌生さんも、かくの如く思いながら描いてるのかな?
いやいや彼女はたぶん、オートマチックにドットを描き続けられる質なんだろうな。
僕の仕事の方が優れた考察と技術を必要とする上等な仕事ぶりだ!」と、自分の仕事ぶりを高く評価し、勇気づけ、モチベーションを保ちました。

別に他の作家を下に見てる訳じゃなく、自分で自分の仕事に「最高の仕事、自分にしかなし得ない、歴史に残すべき使命」だと思ってやってる、正直で健全な内心の開示です。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 下図制作 茶釜

下図全体の現段階の写真です。

本日、ひたすらドットを描く、写経の様な仕事をしてて気付いた事があります。

なぜ、数ある茶釜の中から、最も描写が面倒そうなドット模様を選んだのか、自分の直感、潜在意識の謎が解けました。

分福茶釜の物語の半分の場面はお寺です。
そしてお寺の鐘はたいていドット模様がついてます。

だから分福茶釜に相応しいのはドット模様の茶釜だと僕の直感に結びついたという訳でした。


2024年9月3日

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 下図制作 茶釜

全てのドットを描き切りました。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 下図制作 茶釜

全体写真です。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 下図制作 茶釜

マスキングテープで仮留めしてたのを剥がし、ハサミで切り取ります。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 下図制作 茶釜

裏側全面に糊を塗ります。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 下図制作 茶釜

下図の方にも軽く水を引きます。

上から貼る紙も糊の水分を含んで伸びますから、下図にも水分を含ませ、両者の伸縮具合をシンクロさせるためです。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 下図制作 茶釜

糊付けします。

風格ある茶釜になりそうです。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 下図制作 茶釜

切り抜いた後の外側の紙を利用して、ドットの乱れがあった場所に貼り付けようと思います。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 下図制作 茶釜

ドットの配列に乱れがあった場所に紙を貼りました。

明日完全に乾いてから、あらためて描き直そうと思います。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 下図制作 茶釜

本日の最終段階、画面全体写真です。


2024年9月4日

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 下図制作 茶釜

また鉛筆で補助線を描くところから始めます。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 下図制作 茶釜

一番配列の乱れが気になった向かって左肩から直します。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 下図制作 茶釜

及第点の出来になりました。

厳密にはこの修正をして、また修正点も見つかりましたが、それは本画にトレースする時や、トレース後に本画で微調整しようと思います。

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 下図制作 茶釜

下図全体写真です。

これで狸が現れない明るい状態、茶釜単独の時でも、主役として存在感を発揮し、見応えのある茶釜になると思います。

キチ◯イじみた徹底的な描写も他者の追随を許さないオンリーワンの個性になります。

Hidden Art という変化球だけでなく、正攻法のストレートでも見応えあるクオリティで、鑑賞者達の眼を楽しませようと思ってます。


2024年9月5日

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 下図制作 茶釜 トレース準備

出来上がった下図の写真の上に、Adobe Illustratorで楕円を重ねます。

フリーハンドで描いた下図の歪みをPCソフトの力も借りて、本画にトレースする時により正確性を高めようと思います。

必要な楕円の補助線を全て重ねたらPDF形式で保存し、

日本画家 佐藤宏三 Hidden Art「分福茶釜」Bunbuku_Chagama 下図制作 茶釜 トレース準備

今度はAdobe Photoshopで開き、A4 サイズに9分割してプリントアウトしました。

今日は昼間、ショックな事実を伝えられ絶望感で一杯な気持ちになり、とても帰宅後、制作に向かえる心境になれませんでしたので、PCソフトにて楕円をトレース用の下図に重ねる仕事のみ行ないました。

だいぶ気持ちが落ち着いてきたので、明日からは制作に向かえると思います。


2024年9月6日

画面に彩りを加える為に下図に加えた柿の実と葉でしたが、葉っぱの方は暗くなって狸が現れると同時に小判に変化させるアイディアが閃きました。

この部分を蓄光顔料で小判の隠し絵を仕込もうと思いついた訳です。

またまた、東博の常設展示を取材に訪れました。

平成館では、特別展もやってますが、常設展示の考古展示室も埴輪や土偶の展示が豊富で楽しめます。

前回、茶釜の展示を取材するのが目的で訪れましたが、その時に小判が展示されてる事も確認済でした。

こちらの複製品は、触って重さや手触りを体験出来ます。

正面からだけでなく、色々な角度からデジカメで撮影してきました。

皆さん触ってます。

埴輪の表情やポーズのバリエーションが豊富で、観て楽しいです。

さすが河鍋暁斎だと感心させられました。

「地獄極楽図」 河鍋暁斎作

獄卒や地獄に落ちた亡者達の表現が凄いです。

「竹取物語」前田青邨作

現在、「分福茶釜」という、昔話を題材に制作してますが、Hidden Art のエロ以外の題材として、昔話は題材豊富だと思います。

現代の漫画、アニメ、特撮ものも Hidden Art の題材にしたいのはやまやまなんですが、何れも版権がうるさくてなかなか実行に移せないでいます。

金、土は、東京国立博物館が20時まで開館してます。
凄く良い取り組みですよね。

写真は表慶館がライトアップされたところです。


2024年9月7日

東博で撮影した小判をコピペを繰り返して複数印刷します。
それを厚紙に貼ってハサミで切り抜いていきます。

偽小判を葉の重なりに合わせて床に置き、撮影します。

レイヤーで葉の上に重ねます。

トレース用の下図は小判に替えました。

蓄光顔料で描く隠し絵から先に描きますので。

ところが、プリントアウトしてみて気づきましたが、小判が実物大より大きかったです。

明日また適切な大きさにする事にして、本日は茶釜だけをトレースする事にしました。

下図と本紙との間に挟んでた念紙を剥がします。

補助線が込み入った部分は、本紙に直接鉛筆で描き足しました。

下図制作の手順と同じく、補助線が交差したところから墨でドットを描いていきます。

補助線の間に二分割した補助線を描いて、また交差部分にドットを描きます。

本日はここまで。


2024年9月8日

今日の前半はひたすら茶釜のドット描きでした。

茶釜のドット描きを完了させたら、小判の部分を実物大に修正した紙に差し替えて、再びトレース用下図と本画との間に念紙を挟み、赤ボールペンでなぞって残り全てを移します。

薄くてあまりよく見えませんね。

せっかく移した線が、手で擦れて取れない様に、水を引いて本紙に定着させます。

水分を吸い込むと伸びてこんなに皺が出来ます。

Hidden Art の水張りとして理想的です。

もちろん通常の日本画の場合も、膠で溶いた絵具を重ねる度に膠と一緒に紙もどんどん縮んでいきますから、乾いてる時はフラットに張れていても、少し水分を含むとこれぐらい膨らんで弛む水張りからスタートするのが理想的です。

Hidden Art で使用する蓄光顔料は膠をよく吸い込むので、緩い水張りからスタートするのは特に大切です。

奥の小判を描いたところで今日は力尽きました。

小判のアップ

僕の場合は「細部描写に魂が宿る」と思ってます。
茶釜のドットもそうですが、手を抜かず、正確な描写が僕の生き様でもあり、特長の1つだと思ってます。


2024年9月9日

最初は明礬を加えない不完全なドーサ(滲み止め)からスタートします。

その方が滲んで味のある風合いがでます。

今回は本日の最終段階の写真のみ。

全体と部分アップです。


2024年9月10日

緑色に光る蓄光顔料から塗っていきます。

暗室代わりのトイレで確認します。

次に群青色に光る蓄光顔料を刷毛で塗っていきます。

トイレで確認。

同じく群青色に光る蓄光顔料を平筆に持ち替え、狭い範囲の彩色をします。

暗くして確認します。

次に青く光る蓄光顔料を、さらに細い平筆で塗ります。
今回は一番明るく見えるところにハイライトとして青く光る蓄光顔料を効果的に使おうと思いますが、面積的にはあまり使いません。

青く光る蓄光顔料を彩色し、暗くして確認します。

いったん、明礬を加えないドーサを引きます。

和紙の繊維の隙間に蓄光顔料を埋めて膠液で和紙と顔料もろとも固める感じです。

彩色前に明礬入りのドーサで完璧な滲み止めをしてしまうと、顔料が和紙の表面だけに接着し、内側に喰い込まないため、後年剥落してしまう怖れがあります。

制作序盤の顔料は、しっかり和紙の繊維に喰い込ませてから、中盤以降で明礬入りのドーサで和紙もろとも固めるのが堅牢な下地となると、僕の経験上では実感してます。

桃やお尻ではありませんw

ドーサを引いた後の絵皿と連筆とを暗室代わりのトイレに持ち込み撮影したものです。

ドーサ引きの時に連筆に持っていかれた蓄光顔料が絵皿の中と連筆の先端とで光ってるという訳です。

しっかり和紙の繊維に絡め無かった余分な顔料は、むしろ取れてしまった方が良いのです。

先ほどのが乾いたら、画面を180度回転させて、反対側からもドーサを引きます。

画面は一旦濡れると膠が溶けて顔料が取れやすくなりますので、連筆の継目が重ならない様にして、継目の顔料が取れない様にします。

粗い岩絵具を刷毛や連筆で塗った経験のある方なら、刷毛の継目が取れてしまう難しさもとことん体験済の事と察します。

二度のドーサが乾いたところです。

再び、群青色に光る蓄光顔料を刷毛で全体に塗ります。

日が暮れたので、ここから先の確認はアトリエの照明を消して出来ます。

緑に光る蓄光を彩色し、最後に、余った群青色に光る蓄光顔料と緑に光る蓄光顔料とを混ぜて、全体的に明るさを調節します。

緑、青、群青色に光る3種の蓄光顔料は、完全に塗り分けるのではなく、相互に塗り重ねながら彩色を進めていこうと思います。

本日の最後に、ようやく明礬を溶かしたドーサを引きます。

先ずは一引き。

今度はそのままアトリエの照明を落として撮影。

今度はドーサの入った絵皿と、連筆の先にほとんど蓄光顔料が拭い取られて無い事が(光ってないから)お分かりになると思います。

一引き目の乾き待ちの間に、この投稿をしてます。

今晩はこれが乾いたら画面を180°回転させて、反対側から二引き目をして終了するつもりです。


2024年9月11日

墨汁にて茶釜のドットを描き起こしていきます。

画面は描きやすい向きにして描いてます。

拡大画像です。

明礬入りのドーサで完璧に滲み止めする前は、多少滲みましたし、楕円や配列の歪みもありますので、それを整えながら描き起こしていきます。

回り込みになるほどドットの密度が密になっていきます。隅々まで楕円や配列を整えて描き切るのは大変です。

今日はこれ以上の回り込み部分には手を出さず、ここから内側の比較的大きなドットの描写に留めておこうと思います。

配列の乱れを鉛筆で修正してから墨を入れるところもあります。

本日の最終段階です。

まだ日が暮れてませんが、もう手指が痺れてきましたので、これで止めておきます。

部分拡大図。

暗室代わりのトイレで確認します。


2024年9月12日

昨日の夜中、なかなか眠れなくて、それならと思い、ドットの補助線を鉛筆で描いたりしてました。

今日起きたのは15時くらい😄

録画しておいたドジャース対カブスの試合を観ながら、墨を擦って制作の準備をしてましたら、早くも西に傾き始めた日差しが画面の真横から差し込む時間帯になりました。

真横から光が差し込むと、画面の凹凸がよく分かります。

和紙の繊維に蓄光顔料が乗ることで、より凹凸が出てます。

Hidden Art 開発当初は、蓄光顔料が粗い事は、滑らかに描き難い欠点だと思ってましたが、現在では、この事が日本画家佐藤宏三のアドバンテージ、つまり僕にとっての長所になってます。

印刷物でも蓄光顔料を使った商品、技術がある事を今年になってから知りましたが、印刷物では平滑に印刷出来ても、濃淡を滑らかに変化させた写実的な表現は出来ません。

僕のように何回も塗り重ねたり、ヤスリで擦ったり、手作業で濃淡の塩梅を確認し手間ひま掛けなければ、この粗い蓄光顔料で写実的な表現は出来ません。

つまり、安く大量生産出来る印刷物の描写力は、僕の手彩色のHidden Art のレベルには遠く及びません。

もちろん AI に仕事を奪われる不安もありません。

アイディアだけでなく、技術的にも、制作に対する責任感、こだわりなど、僕の全能力を傾けて開発、製造してる藝術作品は、決して印刷物では再現出来ませんし、AI を導入しても再現出来ないはずです。

生身の一個人の能力をナメんなよ!というプライドを持って制作してます。

さて、概ね茶釜中央の範囲のドットは墨入れ出来ました。

問題はドット密度が密集する回り込みエリアです。

歪まない様、乱れない様に墨入れしていくのには緊張感が伴います。

タバコは大きさの比較のために置きましたが、失敗の許されない仕事に立ち向かう時、喫煙は止められませんね〜😅

下図制作から何度もチャレンジを繰り返したおかげで、今回の制作でついにドットの配列を乱さずに描いて行けるコツを身につけるられたという実感が生まれました。

それで、この描写場面を動画で撮ってプライベートアカウントの方で投稿したという訳でした。

でも、たぶんもう茶釜を描く事は無いと思いますので、この描写のコツを会得しても、使う機会が無いかもしれません😅

好奇心旺盛でアイディアマンの僕は、ワンパターンの単純労働作業の繰り返しには直ぐに飽きてしまいます。

次の作品も、さてどうやったら上手く描写出来るかを考えさせてくれる、取り組み甲斐のあるモチーフにチャレンジしたいものです。

描写のコツを身に着けた手応えはあったものの、時間が掛かりますし、15〜20分おきに休憩を挟みながら、その度に気持ちを集中させての重労働でした。

今晩はここまでで力尽きました。

全体像(明)です。

アトリエの照明を消して確認します。

暗くした時、手前の狸は目立ちますが、もう一つの主役の茶釜が目立ちません。
画面上部は縄の座布団と小判が目立ってます。

小判はともかく、奥の座布団と同化させるため、画面向かって右奥の床に行くに従って、緑色に光る蓄光顔料を被せて行こうと思います。

蓄光顔料を光らせた時にも、配色の画面構成を考える必要があります。

今日一日の成果。
茶釜のドットの部分アップ写真です。


2024年9月14日

今日はこれだけでした。
でも、最難関な描写を済ませられたので、とりあえずホッと一息つけました。


2024年9月15日

午前中、稲刈り体験を済ませ、
午後から制作です。
茶釜の蓋、取っ手、レリーフなども描き、少し陰影もつけました。

陰影をつけた時、少し滲む感じがしたので、次の段階に進む前にまた明礬入りのドーサを、乾かしを挟み、2方向から引きました。

ドーサが乾いたところです。

前に言った様に、背景全体が群青だと、座布団の方が目立ち、肝心の茶釜が目立ちません。

暗くなった時も、茶釜と狸とが目立つ様に、背景全体に緑に光る蓄光顔料を被せようと思います。

緑に光る蓄光顔料を茶釜の周り全体に塗り被せます。

アトリエを暗くして確認します。

塗りムラの濃淡を暗いまま確認して、

発光の弱いところに更に塗り重ねます。

茶釜以外を、緑に光る蓄光顔料で明るくする事で、青暗く茶釜の存在感が目立つ様になると思います。

今日は稲刈りで疲れたので、制作もここまでにしておきます。


2024年9月16日

紙ヤスリで優しく表面の凹凸を均し、
粉塵を掃除機のブラシヘッドで吸い取ります。

明礬入りのドーサを2方向から引きます。

表の絵柄の時は隠す線の上に、胡粉を重ね、

1.表からは隠蔽
2.裏からは強調

させようと思います。

胡粉を塗る前の小判部分(暗)

胡粉を塗る前の狸(明)

同じく(暗)

胡粉を塗ったところ(全体)

小判と狸が白く消えました。

胡粉を塗った小判部分(明)

同じく(暗)

胡粉を塗った狸(明)

同じく(暗)

全体(暗)

明るい時に見える葉っぱを小判の上に重ねて描きます。

狸に隠れてた茶釜のカーブは、下図を裏返してトレースします。

左右反転させた下図のカーブをトレースしたところです。

とりあえず、最初は炭ではなく、
ガンボージ、洋紅、洋藍の3色を混ぜたグレーを溶きます。

左上の葉っぱと、茶釜のカーブを骨描します。

暗くした時

ドットの配列を下描きし、

骨描きします。

本日の最終段階(明)です。

暗くした時に狸が現れる部分の茶釜の描写は透明感を保つ必要があります。

ここから先は、表裏の見え方のバランスを観ながら慎重で繊細な仕事になってきます。

本日の最終段階(暗)


2024年9月17日

ガンボージを溶きます。

彩色します。

胡粉を被せたところは、蓄光顔料に比べ絵具の着きが弱いので、

そこの部分には更に重ねて塗り、周りとの色調を均します。

暗くして確認。

脚など、胡粉を塗った部分は、暗くした時に光らせなくて良い黒っぽい部分なので沢山塗り重ねても大丈夫な部分というわけです。

柿や落葉も、ガンボージをさらに重ねて黄色を鮮やかにしていきます。

ガンボージに岱赭棒を混ぜ溶かし、黄土色を作ります。

縄目を描きます。

縄目は脚の上にも描いて、昼間は狸の存在に気づかないよう徐々に隠していきます。

くるみを細かく砕きます。

煮て色素を抽出します。

コーヒーフィルターで濾して、

絵皿に移します。

周りの床を塗ります。

狸の顔の上にも、くるみの煮汁で縄目を描きます。

ガンボージ+岱赭よりも透明感があるので、明るく光らせたい顔の上に描いても、それほど発光を邪魔しません。

薄墨で狸頭部と重なる茶釜を塗り、さらに茶釜の接地点に影を入れます。

耳の上にも薄墨を被せ、さらに、くるみの煮汁で縄の座布団の左手前を暗くし、ぱっと見には茶釜だけが置かれ、狸の存在は見えなくなりました。

よくよく注意深く観察すれば何かがいると気づくかもしれませんが、この隠蔽工作をしながら映画「プレデター」を思い出しました。

暗くして確認します。

狸は見えますが、茶釜の両肩に緑に光る蓄光顔料を被せ過ぎたので、背景と茶釜との境が判りにくいです。

茶釜全体に群青色に光る蓄光顔料を塗り、今晩の仕事は終了とします。


2024年9月18日

昨夜、茶釜全体に群青色に光る蓄光顔料を塗ったのが乾いた状態です。

見て分かる通り、またドットの描き起こしが必要です。

ドット描きの労力を覚悟の上で、茶釜全体に群青色に光る蓄光顔料を塗って良かったです。

暗くした時にも、主役の茶釜が存在感を示す様になりました。

また紙ヤスリで均し、掃除機のブラシヘッドで粉塵を吸い取ります。

茶釜部分だけに明礬入りのドーサを引きます。

この修行の様な仕事をまた延々とやる必要があります。

これの描写場面、最近は夢でも繰り返し出てくるほど、上手く描けるかどうか毎回緊張を伴う作業です。

審美眼が鋭過ぎると、ちょっとした歪みも気になって夢でもうなされるという訳です。

藝術の価値観が多様化した時代でも、僕自身は美しさの極みこそ優れた美術だという信念を持ってますので、愚直に自分自身の作品でそれを貫こうと思ってます。

今日は、ここまでで力尽きました。

しかも、コツをつかんだと思ってましたが、向かって右側のドットの配列に乱れが出来てしまいました。

もしかしたら右側の回り込み部分はもう一度白く塗りつぶして描き直さなきゃいけなくなるかもしれません。

とりあえず現段階では、その問題は先送りします😅


2024年9月19日

昨日の夜中、お酒を飲んでましたが眠れなくて、どうせ眠れないならと思い、ドット描きを進めました。

今日の午後起きてからもひたすらドット描きで、ここまで進めました。

この辺りが配列に乱れがあり、描き直すことにしました。
たぶん、このまま仕上げても誰も配列の乱れに気づかないと思いましたが、作者本人が納得いってないので。

先ずはヤスリで擦ります。

暗室代わりのトイレで暗くした時の見え方も確認します。

水晶末を空摺りしてから膠と練り合わせます。

市販の状態でも一番粒子が細かい「白(びゃく)」番ですが、これを更に空摺りする事でより微粒子になり、胡粉同様に団子が出来る様になります。

団子を作るのが目的ではなく、あくまでも微粒子に整えるのが目的ですが、経過として、練ってるうちにまとまって団子が出来たら、胡粉並みに微粒子に出来た証拠だと自分で確認出来ます。

水晶末で、配列の乱れた部分を塗りつぶします。

水晶末で厚く塗りつぶしたので蓄光顔料の光も塞がれてしまいました。

ドットの配列を直したら、あらためて蓄光顔料を塗り直すつもりです。

行きつ戻りつの制作はいつもの事です。

水晶末が乾いたら、またヤスリで均します。

ドットの描写は細かいので、描写する下地も平滑である必要があるからです。

明礬を加えないドーサを引きます。

現段階でドットの配列が整ってる画面左側の写真を撮り、実物大にして左右反転させ、右側に乗せ、マスキングテープで上端を貼り付けます。

念紙を挟み、赤ボールペンで強くなぞりトレースします。

新たに描き直せる部分だけトレースしました。

薄墨で描き直します。

元の配列と新たに描き直した配列の橋渡し部分は、あらためて補助線を引いて目視で矛盾の無いように繋げます。

今晩はここまで。

今晩こそちゃんと寝て、明日あらためて残りの描写に取り組もうと思います。


2024年9月20日

鉛筆で補助線を入れて、

墨入れして、また続きの補助線を描き足しながら慎重に進めていきます。

茶釜の墨入れ完了です。

全体像です。


2024年9月21日

インド旅行の時に宝石商のセールスマンから
「僕はジュエリーには興味がない。宝石を削り出す時に出るストーンパウダーなら興味があるけど」と言ったら、翌日、額に玉の汗を浮かべて
「家族総出でストーンパウダーを砕いた」と言って持ってきた絵具の1つです。

このままではかなり粗いので、

自身で乳鉢でさらに細かくすり潰します。

今日の日中は曇空でしたので、アトリエの遮光カーテンで、かなり暗く出来ました。

不透明な岩絵具(インド産タイガーアイ)で、尻尾と頭部の下の蓄光顔料の光を抑えます。

明るくしてもタイガーアイを塗ったところが他より暗いですが、後で周囲も暗くする予定です。

さて、茶釜のドットを描き直したところは一旦水晶末で塗りつぶしたので暗いです。

あらためて群青色に光る蓄光顔料をそこに塗ろうと思います。

群青色に光る蓄光顔料を塗ります。

アトリエの照明を消して光り具合を確認しながら塗り重ねていきます。

茶釜に塗った蓄光顔料が乾くまでの間に、柿の実と落葉にガンボージを塗り重ねて、より鮮やかにしようと思います。

群青色に光る蓄光顔料が乾きましたが、回り込み部分は、向かって左側同様に、より明るい青く光る蓄光顔料を塗り重ねた方が良さそうです。

柿の実と紅葉とを塗るため、ガンボージ以外の染料系絵具も溶きます。

紅葉と柿とに染料系絵具で彩色しましたが、染料系絵具だけでは発色が物足りないと思いました。

群青色に光る蓄光顔料を塗った部分はまた白っぽくなり、ドットが隠れてしまったので、また上から描き足します。

細かな描写になるので、先ずは明礬入りのドーサで滲み止めをしておきます。

ドーサが乾いたら、またまたドットを描きます。
もう何度目だろうか。

まっ、でも今回は配列が整ったドットが透けて見えるのをなぞるだけですので、根気だけあればそれほど難しい仕事ではありません。

ドットを描き起こしました。

今度は青く光る蓄光顔料を塗ります。

再び、柿の実と紅葉の彩色に取り組もうと思います。

京都の顔料屋で購入した、まるで蛍光顔料と見紛うほど鮮やかなブリリアントローズライトです。

紫外線が差し込む店内に30年飾られてた色見本で確認しても新品と変わらぬ鮮やかさを保っているのを確認して購入したものです。

蛍光顔料と見紛うほど発色が良い理由は、おそらく粒子の表面ががグラスビーズの様に滑らかなんだろうと思います。

欠点はツルツルの表面は膠と絡みにくく接着し難い事です。

その性質が分かったので、先ずは大まかに塗り、

次に明礬入りのドーサで拭い取ります。

大半の絵具は取れますが、ザラザラの蓄光顔料の隙間に引っ掛かった絵具は画面に食い付き、さらに明礬入りのドーサが乾けばガッチリ定着するでしょう。

紅葉の方も同様に塗ります。

乾いたらまたガンボージを重ねます。

ブリリアントローズを間に挟んだおかげで鮮やかな色になりました。

紅葉も同様に。

床をもう少し濃くしていこうと思います。

くるみの買い置きが無かったので、クチナシとのブレンドの煮汁を作ろうと思います。

焦茶がくるみで、赤茶がクチナシです。

煮汁や臙脂(紫味)などで床を濃くしていきます。

狸尾や頭部の影だけでなく、茶釜全体の影が逆光気味に手前の床全体を暗くしてるイメージにしました。

本日の最終段階(明)

紅葉の周りの床も薄く洋藍や薄墨を被せ、紅葉が鮮やかに引き立つ様にしたり、囲炉裏の灰も色々な色を薄く重ねました。

主役の茶釜の彩色に入る前に、先ずはそれ以外を一通り彩色したという訳です。

本日の最終段階(暗)

紅葉に不透明な顔料もつかったので、小判が見え難くなってしまいました。

まぁ、狸も含め、最終的な微調整で、また上から蓄光顔料を重ねたりもしますので、何とかすると思います。


2024年9月22日

茶釜のベースは一旦、群青色に光る蓄光顔料でまとめたものの、制作途中で、回り込み部分は青く光る明度の高い蓄光顔料で立体感を出した方が良いと感じました。

松竹のレリーフが群青色のままで、茶釜全体の回り込みに一体感が無かったので、青く光る蓄光顔料を重ねていきます。

これが昨夜までの状態です。

向かって右側の明るさを増していきます。

なかなかムラなく滑らかに塗るのは難しいですが、だいぶ松竹のレリーフも明るくなり、回り込みに一体感が出てきました。

本日の最終段階です。

明日からの仕事に備え、紙ヤスリで本日塗り重ねた蓄光顔料の表面を均します。

茶釜部分にだけ明礬入りのドーサを引いて、一晩乾かします。

蓄光顔料を滑らかに濃淡つけて表現するためには、一気にやろうとせず、塗って、乾かし、ヤスリで均し、ドーサで固めるという工程を数日掛けてやる必要があります。

コスパやタイパよりもクオリティ重視です。


2024年9月23日

青く光る蓄光顔料での彩色の続きをして、だいぶ滑らかに発光する様になりました。

この後、ヤスリ掛け、ドーサ引きをしました。

またまたドットの描き起こしです。

この後、茶釜全体を彩色するつもりなので、墨で描いたドットが滲まないように、膠を足して墨を擦りました。

ドットの描き起こし完了です。

全体像です。

臙脂+ガンボージ+洋藍少々を混ぜて茶釜の錆色を作ります。

茶釜全体に錆色を塗ります。

純金ではない、偽金泥を溶きます。

蓋のツマミに偽金泥を塗ります。

最終的にはこの部分に純金箔を押すつもりですが、ザラザラした蓄光顔料の上に、偽金泥を塗って下地を平滑にする目的と、最終的に金箔を押した場合の仕上がり具合のシュミレーションの役割で、これを塗りました。

偽のまま完成させるつもりはありません。

錆色を塗った後、またまたドットを描き起こします。

もはや修行です😅

本日の最終段階(明)です。

茶釜の錆色にムラがあります。
多少ムラがあって良いですが、明日以降、また塗って、乾いたらまたドットの描き起こしですね😅

狸を光らせる場所以外は、ドットのコントラストをよりハッキリさせて茶釜の存在感を高めようと思います。

本日の最終段階(暗)です。

表の「明」の絵を一旦完成させた様に仕上げた後、
裏の「暗」の絵の、狸、柿、小判などを蓄光顔料を上から被せて光らせようと考えてます。


2024年9月24日

墨汁で茶釜の陰影を調整します。

染料系絵具を混色した錆色を被せます。

準天然紫黒で、ドットなど、より暗い部分を強めます。
この黒色は墨汁よりも黒いです。

下図を観ながら

小判、首、柿などの暗く埋もれてしまったところを明るく描き起こします。

作業の合間に、金箔を押す部分に捨てドーサを引きます。
計4回ほど引き、和紙がこれ以上膠分を染み込まないコーティングを施しました。
(後々膠分を染み込む余地を残すと、金箔を接着した膠分が和紙に吸い取られ、後年金箔が剥がれる心配があります)

茶釜に埋もれてた首が復活してきました。

ドットの光った部分も蓄光顔料でハイライトを入れていきます。

暗くしても光ります。

上から蓄光顔料を重ねたところが白っぽくなりましたので、

薄く茶色を被せて隠します。

茶色を被せたところの発光が暗くなってしまいましたので、また蓄光顔料を被せます。

仕上げが近づくと、こうして明るい時と暗い時、両方の見え方のバランスを取りながら微調整していく訳です。

本日の最終段階です。ほぼ完成です。

以下、三脚で固定したデジカメで撮りました。
狸の頭部が薄っすら白く見えますが、表裏の見え方のバランスを考慮して、この辺りの見え方を落としどころとします。

三脚で固定したデジカメで撮影しましたので、手ブレなくクリアに写りました。

柿も蓄光顔料を上から重ねたので暗くした時も見えるようになりました。

濃い紅葉の下はあまり見えませんが、明るい葉っぱの下は小判が見えます。

興味を持ってよく鑑賞して下さった方には小判が見えると思います。
たぶん子供達なら小判に気づくと思います。

茶釜は明るい時も暗い時も、しっかり存在感を示します。

最後に画面全体に明礬無しのドーサを引きます。

上から被せた蓄光顔料をしっかり定着させるのが目的ですが、明礬は乾いた後、結晶が光るので、仕上げではそれを防ぐため、明礬無しにしました。

乾いたら反対側からも引きます。

次の工程で仕上げに入ります。


2024年9月25日

大下図と本画とを並べて最終チェックをします。

狸頭部から首に掛けての膨らみが足りないので、蓄光顔料でボリュームを膨らませようと思います。

蓄光顔料を面相筆につけて、毛描きしながら頭部から首を膨らませていきます。

また交互に、蓋の取っ手の捨てドーサを今日も複数回塗って乾かしを繰り返します。

頭部から首に掛けてがふっくらボリュームアップしました。

鐶付(かんつき)という、釜を持ち上げる時釜鐶を掛ける部分は、鬼面になってます。

暗くした時も見えるように、ハイライト部分を蓄光顔料で上塗りします。

暗くした時。

大きめの絵皿に薄墨を移し、

タオルハンカチを漬けます。

これをスタンプ台として使います。
「祈り〜阿修羅の娘」の背景を彩色する手順のアーカイブを日本画家佐藤宏三公式サイトで確認し、手順を再確認しました。

海綿をポンポンして、茶釜のザラザラした質感を加えます。

囲炉裏の灰の感じも海綿ポンポンで散らします。

昨日から通算すると8度目くらい捨てドーサを重ねました。

表面がテカテカ光るくらい、膠を明礬で固めた層で和紙に蓋を被せるイメージです。

白く見える狸と茶釜との境目も、今日は面相筆で毛描きする様にぼかします。

金箔を押します。

以前の制作で余った物を使います。
金は錆びないので、何年前の残りでも使えます。

残り半分にも押します。

完全に乾くまで放置します。

ですので、この後の制作は明日以降になります。

海綿ポンポンした後、ドットや松竹レリーフのハイライト部分にはまた蓄光顔料を塗り重ねました。

暗くなった時も結構リアルでしょ。

本日の最終段階(明)。

三脚、デジカメで撮影しました。狸と重なった茶釜部分は明らかに白くなってますが、暗くなった時の狸の明度を重視したいので、表の絵としては、こう仕上げます。

明るい時から、この白っぽくぼやけたのは何故?
と注意を引き、予告編的な謎掛けとしようと思います。

本日の最終段階(暗)。

金箔を押した蓋の取っ手は暗くした時はシルエットとして見えなくなりますから、暗くした時はこれが完成段階と言えると思います。


2024年9月26日

昨日の夜中、晩酌しながら作品を眺めていたら、色調の調整をしたくなりました。

集中して制作中よりも、リラックスしながらぼ〜っと眺めてる時の方が、より客観的に改善箇所を見つける事が出来ます。

一度それに気づくと、眠気が覚め、直ぐに作業に取り掛かりました。

背景の色調を抑えるため、床、囲炉裏、奥の座布団全てに棒群青を薄く被せました。

画面全体が暖色系の色ばかりですので、主役としてより鮮やかに見せたいものと、背景として色調を抑えたい物には補色を被せ差別化します。

次は黄土色で木目に濃淡をつけます。

茶色で木目を描きます。

より濃い目に溶いた焦茶も被せます。

何れも透明感のある染料系絵具の混色で作った色なので、絵皿の中の見え方ほど濃くありません。

微妙な色彩調整です。

橙色を溶き、狸の尻尾側の塗り残しを隠し、茶釜の上部、柿、紅葉にも被せました。

主役達には同系色の色を被せ、より発色を鮮やかにするというわけです。

とはいえ、下の蓄光顔料の発光を弱めないよう、本当に薄く透明度を保ちながらの微調整です。

暗くした時も、背景の床と奥の座布団の発光が抑えられたおかげで、主役の狸が目立つ様になったと思います。

本日昼に起きて、金箔を押した部分で余分にはみ出たところを紙ヤスリで擦り落とします。

ドジャース対パドレスの中継を観ながら、
止めドーサを金箔の上に引き、乾いては引くを4〜5回繰り返しました。

最初のうちはドーサを弾きますが、何度も重ね塗りする度に、だんだん弾かなくなり、上からの膠が定着しやすくなる下地が出来るというわけです。

本日はここまで。


2024年9月27日

Hidden Art「分福茶釜」(明)完成

金泥で入れた落款(サイン)が床に同化して目立ちませんが…

Hidden Art「分福茶釜」(暗)完成

暗くすると落款がシルエットで浮かび上がります。
落款も隠し文字になりました。

さて、本日の制作経過を順に紹介します。

蓋の取っ手の骨描きから。
手が届きやすい様に、画面を逆さまにして、写真と見比べながら行ないます。

墨汁と、染料系絵具とで立体感と金箔の剥がれとを描いていきます。

最後は天地を正した部分写真です。

ちょっとスズメバチを連想させる取っ手です。
子供の頃、一度刺された経験のある僕にとっては、山歩きの時に熊と出会うより恐ろしい天敵です😅

墨汁と染料系絵具とを混ぜた色で、柿の接地部分と、ヘタとを、少し暗くして完成です。

落款を入れ、金泥で書いた署名は乾燥後に瑪瑙ベラで擦って光らせます。

現在は剥がして掛軸にした「八十八夜」を制作した時のパネルに水張りして描きました。

Hidden Art「分福茶釜」は、今回はとりあえずパネル張りのまま額装して出品しますので、「八十八夜」の共シールを剥がします。

剥がし跡は水で湿らせ、

プラスチック製のパレットナイフでこそぎ落とします。

布巾で拭いて綺麗にします。

共シールは2枚書き、

一枚はパネルの裏に貼ります。

もう一枚の共シールは、額装状態で買い手がついたら、額縁の裏蓋に貼るために用意だけしておく訳です。

同じP15号サイズの額装された在庫作品「風の村」と差し替えます。

「風の村」は、2003年制作
ネパール・ランタン村で、放牧されたヤクが草を喰んでいる風景をスケッチしたものを元に制作した作品です。
スケッチ中、ずっと風が吹いてましたので「風の村」という題名が思い浮かびました。

Hidden Art「分福茶釜」額装した状態です。

軸装する事が増え、コロ助騒動を経験し、
アクリル板一枚隔てるだけで、こんなに煩わしいものだったんだと実感しました。

特にマットな日本画はアクリル板の反射は邪魔です。
展示の時もアクリル板無しで展示します。

買い手がついたらアクリル板をつけてお渡ししますが。